正式と略式、
地域によっても違う
「結納」のしきたりとマナー
婚約成立を認め合う結納
日本の伝統的な婚約の儀式である結納は、もともと“結いの物”と呼ばれ、二つの家が新しく姻戚関係を結ぶために、ともに飲食する酒肴(しゅこう)のことでした。この酒や肴に花嫁衣裳などが加わり、伝統的な結納の品は形式化され、あるいは簡略化されるようになりました。時代によって形式は変わっても、婚約成立を両家が認めあい、二人の愛情を確かめ固める精神は変わりません。
結納の果たす役割は?
最近は結納の事前準備やしきたりが高いハードルに感じ、結納を簡略化して両家の顔合わせのみで済ませる場合も少なくないようです。一方で伝統的な結納にも現代に通ずる役割があり、結婚へ向かうステップとして大事な節目になります。結納の果たす役割を振り返ってみましょう。
- ・新生活に向けての心の準備
現代の結婚は「家」と「家」ではなく、「個人」と「個人」の結びつきと考えられがちですが、実生活では両家の関係性も重要となってきます。特に冠婚葬祭などでは密なコミュニケーションが必要です。結納の準備段階からお互いの両親とのつながりを深めるいい機会にもなります。 - ・人生のけじめ
人生の節目で儀式を行うと、新しいライフステージへの決意を新たにできます。 - ・お相手への感謝や今後の生活への願い
結納で用意する結納品には、お互いの健康や幸せへの願いが込められています。 - ・互いの両親への敬意
結納は自身の両親のみならず、相手方の両親への感謝を伝える場でもあります。
結納は必ず行わなくてはならない儀式ではありません。両家で、正式にするのか略式にするのかなど、納得がいくように話し合って決めるとよいでしょう。
結納品ってどんなもの?
結納では、「結納品」という縁起物を贈ります。現代では「結納金」、「酒」、「昆布」、「するめ」などの品に「目録」「熨斗」「末広(白おうぎ)」などを添えて、用意します。それぞれの品物には、慶事にふさわしい意味が祝い言葉に託して用いられています。
結納の品は関東、関西で違いがあり、さらには各県でも特色があります。目録の書き方も異なり、品目も結納品の呼び名にも違いがあるので、お互いの実家が異なる地域の場合は、両家でよく打ち合わせをして決めましょう。
【本式九品目の名称(関東)】
①長熨斗(ながのし)
「鮑のし」のことで、熨斗とは鮑の身を長く伸ばしたものです。延命に通じ、不死の薬といわれて長寿の象徴とされてきました。昔から大変貴重で、これを贈ることが最大の祝意を表すものとされています。
②目録
結納品の品目と数を列記したものです。
③金包(かねつつみ)(結納金)
「御帯料」または「小袖料」として結納金を包みます。女性から男性へは「御袴料」とします。
④勝男武士(かつおぶし)(松魚節(まつうおぶし))
鰹節のことです。武運を祈ることから、勝男武士と記すようになりました。
⑤寿留女(するめ)
スルメのことで、長期間保存がきくことから、末永い縁となり「幸福に女性が嫁ぎ先に留まりますように」との願いが込められています。
⑥子生婦(こんぶ)
こんぶは「よろこぶ」さらには「子宝に恵まれますように」という意味が込められています。
⑦友志良賀(ともしらが)
白の麻糸を束ねたもので、白髪に似ていることから「ともに白髪になるまで健康で長生きする」ことを祈願したものでもあります。
⑧末広(すえひろ)
白無地の扇で、潔白、純真、無垢、さらに幸福や家族の繁栄が末に広がるという意味を表します。
⑨家内喜多留(やなぎだる)(柳樽)
清酒の入った樽のことで、現在は「酒肴料」として、現金を包んでこの代わりにすることも多くなっています。家に喜びが留まるようにとの願いが込められています。
家族書・親族書の書き方
家族書および、親族書は、結納の際に交換する、双方の家族や親戚を列記した書面です。これからお付き合いする両家のために用意するので、両家のバランスが取れるように調整するのが重要なポイントです。
正式には奉書紙に毛筆で書いたもので、市販されている「片木盆(へぎぼん)」などにのせて渡しますが、最近では、家族書と親族書を一枚にしたり、双方を省略したりすることも多くなっています。家族書と親族書の両方を取り交すのか、住所・年齢・職業まで書くのか、書式も正式な毛筆で書くのか、簡略化してパソコンで作成するのかなど、細かなところまでお互いに合わせるようにしましょう。
結納に仲人を立てる場合
昔ながらの結納では、仲人が重要な役割を担っていました。仲人を依頼する場合は、結納から結婚披露宴までの一連の流れを依頼するのか、結婚式当日だけをお願いするのかを両家で話し合っておきましょう。
依頼するときは、お手紙を差し上げた上で直接お目にかかる、あるいは電話で依頼をお伝えし、承諾してくださった場合は、手土産を持参して正式に依頼します。このときに持参する手土産は、「紅白もろわな結び」ののし紙で表書きは「御挨拶」とし、名入れは両家の姓を入れましょう。
結納のスタイル
最近の結納のスタイルは、仲人を立てる、両家のみで行う、簡単な形式にするなど様々です。どのようなスタイルにするのか、いろいろな考え方があります。大切なのは本人と両家の家族の気持ちです。両家できちんと話し合った上で段取りを進めましょう。
<結納を行う場合の確認事項>
仲人を立てずに結納の段取りを決める時は、とくに男性側の意向を女性側に打診し、双方納得のうえで取り交わすことが円満の秘訣です。
- 男性側が結納を「する」「しない」の意志を女性に相談し、結納をするのであれば、どのような形で行うかを決めましょう。
- 地域や家ごとに習慣や考え方の違いがあるので、両家を尊重し合いながら、すり合わせを行います。
- 「結納は簡単に」など、抽象的な表現ではなく、具体的にどの程度で行うのかを決めましょう。双方の考え方を明確に伝えあい、話し合うことが大切です。
- 会場は、男性宅、女性宅、ホテル、料亭、レストラン、結婚式場など、どこで開催するのか、日時をいつにするのかを決めましょう。結納は結婚式の6カ月から遅くても3カ月前の大安、友引の午前中が望ましいとされていますが、こだわりすぎる必要はありません。最近は土日祝日に行うことが多いようです。
- 結納の品目は両家が同様になるようにするのか、女性は受書のみにするのか、片祝いは避けたいのかなどを話し合っておきましょう。
- 結納金は双方の意見調整が難しいものです。男性側の意向を伝え、女性側はお返しを行うのか、省略するのかを決めましょう。記念品の交換、家族書や親族書の取り交わしについても決めておきます。
- 結納品を並べる場所や着席順、儀式の手順、口上などを事前に確認して、当日に困らないようにしておきましょう。
- 当日の費用の分担を確認しておきましょう。自宅の場合と別会場の場合は、金額が大きく異なるので注意しましょう。
- 当日の服装について、話し合っておきましょう。両家のバランスに配慮し、和装か洋装か、準礼服か略礼服かなどを決めておきます。この場合、主役である二人の意向が重要です。
<両家の食事会のみにする場合の確認事項>
最近では結納を行わずに、代わりにホテルや料亭、レストランなどで、両家が食事をしながら顔合わせの会をする場合もあります。
- ホテル、料亭、レストランなどどこで行うか、日時をいつにするか決めましょう。
※個室など、プライバシーの守れる場所が望ましい - 当日の服装をどのようなスタイルにするのか、事前に打ち合わせをすることが重要です。
結納金とお返し
かつての結納では、男性から女性に帯や小袖を、女性から男性に袴を贈っていたことから、現在では結納金を、男性から女性に「帯料」もしくは「小袖料」、女性から男性へのお返しを「袴料」と呼ぶことがあります。
結納金の金額は目安として一般的に男性の給料の2~3カ月といわれていますが、決まりはなく、無理のない範囲で両家が納得できる額を用意することが大切です。
女性側の結納金のお返しである「袴料」は、用意しない風習もあり、地域によっても事情が違うようです。
関東では「半返し」といって、贈られた額の半額を返すことが多いのですが、関西では「一割返し」のところや、お返しをせずに嫁入りの際に結納金の2/3の額にあたる家具や家電などを持参するところなど、さまざまです。
また記念品として、男性から女性へは指環を、女性から男性へは腕時計、スーツ、カフリンクス、ネクタイピン、バッグ、カメラ、万年筆などを贈り合い、これを結納品に代えるケースもあるようです。
男性からの結納金
- 内包み(中袋)
-
〈 のし紙 〉
- ●金銀または紅白ま結びや、あわび結びの祝儀袋
-
〈 表書きの種類 〉
- ●御帯料
- ●御帯地料
- ●御小袖料
女性からの結納金
- 内包み(中袋)
-
〈 のし紙 〉
- ●金銀または紅白ま結びや、あわび結びの祝儀袋
-
〈 表書きの種類 〉
- ●御袴料
- ●御袴地料
-
〈 名入れ 〉
- ●男性側の名入れと合わせる
結納記念品
- 外のし
-
〈 のし紙 〉
- ●紅白10本ま結びののし紙
- ●奉書紙をかけ、金銀または紅白の水引をま結びかあわび結びに結ぶ
-
〈 表書きの種類 〉
- ●壽
結納をおくる
- ※記載されている内容は、地域・時代・慣習・商品によって異なる場合があります。
- ※相場の金額は、三越伊勢丹の店頭にて、数多くのご相談を受けてアドバイスしてきた金額です。ただしあくまでも目安です。
お付き合いの度合いや、地域によっても変わってきます。判断に迷ったときは、少し多めの金額にするとよいでしょう。
逆に、年齢などにより金額が少なくなる場合もあります。 - ※のし紙の表書きは代表的なものを記載しています。