舞浜地ビール工房<ハーヴェスト・ムーン>園田智子さん 一歩を踏み出す勇気を出して。その行為に無駄はない

2025.2.26 UP

3月8日の「国際女性デー」は、社会における女性の役割の拡大と地位の向上を考える日として1975年に国連により定められました。そこで、自分らしく輝く4名の女性にインタビュー。

舞浜地ビール工房で醸造長を務める園田智子さんに、これまで歩んできた道のりを聞きました。伊勢丹新宿店では、園田さんが手掛ける春限定のビールも販売されます!

 

【国際女性デー特別インタビュー】 

1.<ハーヴェスト・ムーン> ブルワー 園田智子さん 

2.<メゾン・ランドゥメンヌ> オーナー・ブーランジェ 石川芳美さん 

3.<紫をん / Shiwon> 和菓子作家 坂本紫穂さん 

4.<ナヴァラサ> プロデューサー 山田 栄さん 

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「面白そう」の好奇心がブルワーの道を歩む一歩に 

株式会社イクスピアリで、ブルワー(ビール職人)として活躍する園田智子さんは、元東京ディズニーリゾート®のゲスト用駐車場のキャストという異色の経歴の持ち主。キャリアを変えるきっかけはビール職人募集の社内公募のポスターでした。それを見た園田さんは、「ビールって造れるの? 面白そう」と興味を持ち、応募。「ビール職人になりたい!」「ステップアップしたい!」といった強い思いはなかったといいます。等身大の冷静な熱意が功を奏したのか、高い倍率を突破して、園田さんのブルワー人生がスタートしました。

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麦汁作りやろ過など、ビール造りの最初の工程を行うタンクの前で、作業をする園田智子さん。

新規事業の開始までは4年あり、その間は知識を蓄える日々。他社のビールや全国のクラフトビールを飲んだり、工場へ研修に行ったりして研究を続けました。「学ぶほど楽しくなり、もっと勉強したい。もっと上の資格を目指したいと思うようになりました」と園田さん。「自分たちのビールを客観的に評価できるようになりたい」と考えて、日本に数えるほどしか保有者がいない「マスター・ビアジャッジ」の資格を取得したのもこの時期でした。

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ビールの主原料のひとつである麦芽。右はメインで使うピルスナー麦芽。左上のブラック麦芽や左下のカラメル麦芽で、色や風味、苦みを付ける。この3つをどう使うかで、仕上がりが異なるという。

準備期間中に地ビールのブームにかげりが見え、飲酒に対する社会変化が重なったことも。会議で「本当においしいビールは造れるのか」と問われたときには、「造れます!」と言い切り、自分を鼓舞したそう。「造ったことがないからハッタリです(笑)。悔しいので、『実力をつけておいしいものを造ってやる!』と思っていました」。

 

ビール醸造は、体力的にもハードで、計算や設備の仕組みを覚えるのに苦労することも。しかし、「筋力は日々つきますが、それでも重いものを運ぶときは男性キャストに頼みました。無理をしても仕方ないこともありますから」と自然体。わからないことは他社の先輩ブルワーにお尋ねしたり、ご意見を求めたりして乗り越えてきました。善意には必ずお礼を伝え、結果を報告することも欠かしませんでした。「私も相談されることがありますが、意外とできない人も多い。当たり前のことだけど、とても大切なことです」。

学び続ける姿勢と、教えてくれた人には感謝を伝えること。これが園田さんが活躍する理由のひとつのよう。

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園田さんを中央に、柴田さん(右)と竹尾さん(左)。Tシャツのデザインは園田さんのアイデア。「もっときれいなのなかったの?」と談笑する様子が微笑ましかった。

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途中で加える酵母が、麦汁(麦芽から作られる甘い麦のスープのようなもの)に含まれる糖を食べてアルコールを発生させる。「朝夕に糖度を計り、アルコール発酵の進行具合を確認しています」と園田さん。

一歩を踏み出す勇気を出して。その行為に無駄はない  

ビール造りに携わって24年を数える園田さんに継続の秘訣を尋ねると、「『おいしい!』の言葉が嬉しいからです」と即答。「その味を造っていることに幸せを感じます」と話します。モチベーションが下がったときは、「ビールを飲みに行きます!」とまた即答。「いちビールファンに戻って、会社以外の人とビールを楽しむ時間が私にとっては大事。そこで嫌な気持ちを収めて、下がった気持ちを整えています」。

 

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舞浜地ビール工房の<ハーヴェスト・ムーン>の定番5種類のビール。右からピルスナー(ラガー)、ベルジャンスタイルウィート(ハーブエール)、ペールエール、ブラウンエール、シュバルツ(ブラックラガー)。

気負いなくキャリアを積み重ねてきた園田さんですが、ビール界のオリンピックの異名を持つ大会「ワールドビアカップ 2022」のドルトムンダー部門で、「ハーヴェスト・ムーン ピルスナー」が金賞を受賞したことは、何ものにも代え難い喜びだったと声を震わせました。「私たちのビールは派手さがなく、〝普通においしい味〞を目指しているので、特徴が伝わりにくいだろうと思っていました。地道にやってきて、それが認められて本当に嬉しかったです」。普段は冷静な園田さんですが、受賞時は号泣したといいます。「年をとって他のことを全部忘れても、このことは覚えていて『昔、金賞を取ったんだ』とつぶやいていると思います」。園田さんのビール造りへの情熱が垣間見えました。

 

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工房の一角にはこれまで他のブルワリーとコラボした缶とともに、<ハーヴェスト・ムーン>のラベルを巻いた缶が並ぶ。「いつか缶ビールを作れたときのイメージトレーニングとして、自分で空き缶にラベルを巻きました(笑)」。

小さな興味で応募したことから、辿り着いた園田さんの今。新しい一歩を踏み出せない人に、こんなエールをもらいました。「無理と思われることでも、ちょっとでもやりたいなとか、変わってみたいなと思うなら、少しがんばって、勇気を出して一歩を踏み出してみて。そうしないと、不採用通知すら受け取れないですから。結果が悪かったとしても、行動したことだけでも後々の勇気につながると思います」。

 

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<ハーヴェスト・ムーン>春恵(はるえ)─ハルノメグミ─(330ml)638円

本館地下1階 和酒

 

アメリカ産ホップ「Idaho7」のみをふんだんに使用したトロピカルフルーツやブラックティーのような華やかな香りが特徴のライトなエール。琥珀色が輝かしく、ほんのりした苦みが、春めく季節にぴったり。かわいらしいイラストのボトルにも注目を。

販売期間:3月5日(水)~ 3月11日(火)

(会期中は金賞受賞のピルスナーも販売)

 

※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。

※20歳未満の方、お車・オートバイ等を運転される方の飲酒はご遠慮いただいております。

※20歳以上のお年齢であることを確認できない場合、酒類を販売いたしません。

 

撮影:阿部雄介

取材・文:荒巻洋子

 

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