三越伊勢丹 名画版画コレクション Vol.15

女性初の日本美術院同人となり、1980年に文化勲章を受章した小倉遊亀氏(1895-2000)の代表作のひとつ「径(こみち)」彩美版®(美術複製画)をご紹介いたします。

小倉遊亀「径(こみち)」彩美版®(美術複製画)
技法:彩美版®シルクスクリーン併用
制作数:500部
イメージサイズ:約 42.0cm×53.0cm
額サイズ:約 64.0×75.0×厚さ3.5cm
価格:220,000円
小倉遊亀「径(こみち)」彩美版®美術複製画の
ご案内
※共同印刷株式会社発行のパンフレットより抜粋
優しく微笑ましい画題に込めた小倉画伯の精神
昭和から平成にかけて活躍した、日本画壇を代表する小倉遊亀画伯は、日常生活を主題にした作品を多数制作しました。多くの作品は健やかで幸福感に満ちた姿が描かれていますが、その根底には小倉画伯が大切にした深遠な思索や慈悲の精神が流れています。
本作品の核心は、インドの詩人・タゴールの詩「虚偽より真実を、闇より光を、死より永遠の生命を与えたまえ。」からきており、小倉画伯は生きることの喜びを感じ合う健やかな世界を描きたかったと語っています。世の中の悩みや苦しみを癒す教えを解いた先人たちの英知に学び、歩調を合わせて歩きたい、という小倉画伯の思いから生まれました。

「径」を制作集の小倉遊亀画伯 1966(昭和41)年
作品の創意と技巧
草案の元は、小倉画伯が中国旅行の際に訪れた龍門石窟から得ました。大仏に付き従う菩薩や弟子の彫刻に深い感銘を受け、それを形にしたいと考えます。
母親は釈迦如来を、少女は十大弟子を、犬は仏弟子を想起して描かれました。作品は三人の 行列のみを描き、親和の情が強調されています。現代絵画は隅々まで描き込むことが主流ですが、本作品は余白になにも描きこまれていません。
シンプルな構図や色彩のなかにも、退屈させない緊密に計算された画面づくり、描きこまれた籠と花・瑞々しい桃の描写など画伯の創意と技巧が凝縮されています。ゆったりと進む家族の姿は小倉画伯が歩んだ画道にも重なります。
本作は71歳の時に描かれ、第51回院展に出品されました。画業が円熟期に達した小倉画伯の手腕が発揮された名高い代表作です。見る人の気持ちを温もりで包むとともに、小倉画伯の気高い精神を感じとることができます。

作品解説 谷岡 清氏(美術評論家/NPO法人美術教育支援協会 理事長)
「径」がこの構図に確定するまで、画伯は14枚の下図を描いている。母親の大きさ・向き を模索し、最初は傘もなかった。子の傘・頭・袋の位置も何度か変えており、犬の位置や前足の形も修正している。最終的にはほとんど子供の背中に鼻が付きそうな距離に置いた。 画伯の言葉によれば、「愛情は、子供にくっついて行く犬であらわした。無心は、子供の表情とポーズであらわした」とのこと。犬も含め、家族への愛に満ちた作品である。
昭和41年、小倉画伯は、生涯最初にして最後の海外の旅に出た。中国の三大石窟の一つ龍門石窟を訪れ、大仏や多数の仏像に深い感銘を受けた。仏に帰依し従う菩薩や弟子たちの彫刻群を見た時の感動を形にしたいと考え、「径」にその想いを込めてこの年の院展出品作とした。若い頃から禅に傾倒し、夫となった小倉鉄樹をはじめ、多くの禅師に教えを請い、「草にも木にも雲にも動物にも、通い合う愛のこころ」を表したのがこの絵である。
(付属解説書より一部抜粋)
彩美版®とは
「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。長年の経験により培われた画像処理技術を元に、厳選された素材に高精度デジタルプリントを施し、画材の質感と豊かな色調を再現した共同印刷の美術複製画です。
本作品ではさらに一枚一枚職人の手刷りによるシルクスクリーンを施すことで、作家の豊かな色彩や筆遣いといった原画の持つ鼓動までも表現しています。
半世紀以上にわたり複製美術品の制作を続ける共同印刷の「彩美版®」は、業界屈指のブランドとして、多くの美術愛好家に支持されており、美術関係者からも高い評価を得ています。
著作権者の承認印と限定番号が入れられた奥付シール(イメージ)
額裏に著作権者の承認印・限定番号が入れられた奥付シールが貼られ、画面右下部にも承認印・限定番号が入ります。
奥付シールには共同印刷株式会社が開発したセキュリティーシールが貼付されています。お手持ちのスマートフォンなどで、フラッシュをたいて撮影すると、本作品が共同印刷が発行する真正な複製画であることを判定することができます。
画面右下部(イメージ)
小倉遊亀「径(こみち)」彩美版®美術複製画
仕様体裁

技法:彩美版®シルクスクリーン併用
制作数:500部
額縁:特注木製額金泥仕上げ、アクリル付き、面金付布マット
イメージサイズ:約 42.0cm×53.0cm
額サイズ:約 64.0×75.0×厚さ3.5cm
重さ:約 3.6㎏
監修:有限会社 鉄樹
証明:著作権者承認印を奧付と画面右下部に押印
解説:谷岡 清氏(美術評論家/NPO法人美術教育支援協会 理事長)
原画所蔵:東京藝術大学
※作品奥付シール・解説書の表記は、初版発行当時のものを使用しています
小倉遊亀 Yuki Ogura(1895~2000年)
1895年 滋賀県大津市に生まれる。
1917年 奈良女子高等師範学校(現・奈良女子大学)を総代で卒業。京都市立第三高等小学校教諭となる。
1920年 安田靫彦に師事する。
1926年 《童女入浴の図》を革丙会革新第一回展に出品し入選。
1932年 女性として初めて日本美術院同人に推挙される。
1938年 小倉鉄樹と結婚。神奈川県北鎌倉に転居する。
1962年 日本芸術院賞受賞。
1966年 中国に旅行し、仏陀や観音の壁画を取材する。この年《径》を制作。
1973年 勲三等に叙され瑞宝章を授与される。
1976年 日本芸術院会員に任命される。
1978年 日本美術院理事に就任。文化功労者として顕彰される。
1980年 文化勲章受章。女性画家では上村松園に次いで二人目の受章となる。
1990年 日本美術院理事長に就任。
1996年 日本美術院名誉理事長となる。
1999年 パリ・三越エトワールにて「小倉遊亀展」開催。
2000年 ご逝去。享年105歳。従三位に叙せられる。
2001年 「追悼特別展 小倉遊亀」を開催(滋賀県立近代美術館)
2014年 「遊亀と靫彦-師からのたまもの・受け継がれた美-」開催。(滋賀県立近代美術館)
2016年 「小倉遊亀-明るく、温かく、楽しいもの-」開催。(名都美術館)
2018年 「小倉遊亀展」開催。(平塚市美術館)
2019年 「小倉遊亀展と院展の画家たち展」開催。(静岡市美術館、島根県立美術館、富山県水墨美術館)