【インタビュー】吉井添、自分の知らない、新しい自分。

2019年5月、弱冠18歳にして、国内屈指のメンズモード誌で鮮烈なモデルデビューを果たした吉井添。「ヴァレンティノ」と「アンダーカバー」による注目のコラボコレクションに身を包んだ彼の姿を、東京の街中でゲリラ的に切り取ったこのファッションストーリーは、国内外のファッションシーンに強烈な印象を残した。それからというもの、そのジェンダー・ニュートラルなルックスに加え、少年と大人の狭間で揺れ動く吉井の比類なきキャラクターは、メンズ、ウィメンズ、ファッション、コスメといったあらゆる垣根を超え、幅広いジャンルのメディアで取り上げられてきた。今回、そんな彼を巻頭のブランドストーリーにキャスティングした裏側には、常に時代を切り拓く、エポック・メイキングな情報メディアという『EPOCH』の原点へと今一度立ち返り、新たなスタートを迎えようとする決意表明の意図もある。今後シーンを席巻していくであろう若き才能との共演は、新しい価値基準、あるいは新しい時代の輪郭を鮮やかに描き出した。

2001年11月11日東京生まれ。19歳。 イマージュ所属。「Them magazine」にてモデルデビュー。ロックバンド「THE YELLOW MONKEY」の吉井和哉氏の息子として注目を集め、公表後一時アクセス不能になる。19歳とは思えない色気あるルックスに抜群のプロポーションを併せ持ち、Fashion誌を中心に活動している。
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Ⅰ.新しい扉を開いていき、怖いことほど魅力を感じる

-モデルになって2年目ですが、高校生だった以前の自分と比べて、何か大きく変わったことはありますか?
吉井添(以下吉井): 以前と比べると、大分自己肯定ができるようになりました。モデルを始める前までは本当に根暗で、ネガティブな方向にばかり物事を考えていたのに、社会人としての自覚が出てきたのと同時に、自分に自信が持てるようになりました。あとは日常的に最前線のファッションとクリエーションに触れさせてもらえることで、目が肥えたというか、日々センスを磨けているという実感もあります。
-普段はどういったスタイルが多いですか?
吉井: 無地のパーカーに履き古した黒のスキニーデニムが多いですね。家の家具は黒が多いのですが、洋服は緑も好きでよく取り入れています。バルーンシャツやシルエットが面白い洋服が好きで、異端で異質な感じのテイストが自分のスタイルかなと思っています。学生時代は自宅が山奥だったこともあって、お洒落なものと触れ合う機会がありませんでした。それこそ父のゴージャスな衣装を勝手に着て、そこからファッションが好きになりました。
-自分の性格やタイプについてはどう思っていますか?
吉井: 新しい扉を開いていきたいタイプです。壁を打ち壊したい!それに、怖いことほど魅力を感じます。あえて自分を窮地に立たせることで、生を実感するというか、そういう体験を乗り越えていきたいっていう気持ちがあります。高所恐怖症だから逆にバンジージャンプとかやってみたいですよね。
-ファッション以外で最近ハマっているものはありますか?
吉井: 現実逃避じゃないけど、その世界や物語に没頭できるようなファンタジー物が大好きで、FF(ファイナルファンタジー)に出会ったら抜け出せなくなっちゃって(笑)。現実との境目がわからなくなって帰ってこれなくなっちゃうぐらいです。キャラクターの顔とか服装とかを自分で変えられるから、自分の理想像を詰め込んでいます。集中しちゃうと3時間ぐらいキャラクターを作っています。
Ⅱ.クリエーター側の思想を理解し、
それを表現すること

-今回の撮影では、世界のトップメゾンから選りすぐりの最新コレクションを着用してもらいましたが、一番普段の自分の感覚に近かったスタイリングはどれですか?
吉井: 大きなニットにショートパンツを合わせた、「ドリス ヴァン ノッテン」のルックです。ソックスをグイッと上げる感じも含め、どこかに少年性や、少女性を感じさせるようなスタイリングが大好きなんです。

-では逆に、普段の自分と一番遠い世界観のスタイリングはどれですか?
吉井: 胸元をはだけさせた、「サンローラン」のワイルドなロックスタイルです。昔から大好きで、実際に愛用しているブランドではありますが、普段からメイクをしてフェミニンなファッションを楽しんでいる僕には、こういうオスっぽいスタイルは「初めまして」なんです。でも逆にいうと、モデルの仕事を通して、今回みたいに自分の知らない新しい自分に出会えるという経験も、大きな刺激になっています。自分自身、まだまだ子供だと思っていたのに、こうやってふとした瞬間を切り取られた時に、そこに大人の男の色気みたいなものが写っていることが、すごく新鮮です。ファッションを通して新しい自分のスタイルをどんどん増やしていって、自由に使い分けられたら面白そうだなと思いました。

-今回着用したようなラグジュアリーブランドは、吉井さんの世代にとってどのような存在ですか?
吉井: 個人的には、普段からコスプレっぽい格好ばかりしているから、こういうブランドの洗練された服を着ることで、より社交的になれるというか、初めての人にも受け入れてもらいやすくなります(笑)。今はハイブランドでも、僕たちの世代が楽しめるアイテムがたくさんあるし、ブランドごとに全く違った表現をしているから、以前よりも大分親しみやすく、身近な存在になっていると思います。同世代でも、独創的な世界観を持っていて、思いっきりファッションで自己主張ができている人には自然と惹かれます。

-今回の撮影時に感じましたが、クリエーター側のマインドも持たれているようですね。
吉井: ルック1体ごとに、ヘアメイクやアクセサリーが一つ一つ丁寧に考えられていて、とても些細なことでもすごく大事なことなんだなってすごく理解できますし、そういうクリエイションの輪の中に入れるっていうことはとても刺激になります。洋服をデザインした人の思いを少しでも理解したり、スタイリングのイメージを理解することは嬉しいですし、今回の撮影でそれを自分が表現できたかなと思います。

-カメラを向けられてスイッチが入るタイミングはありますか?
吉井: ありますね。焦っちゃダメだという空気感になると、スンっと気持ちが落ち着いてスイッチが入ります(笑)。クリエーター側の気持ちもわかるから、焦っている場合じゃないとも思いますしね。

Ⅲ.持っていた夢さえもなくしてしまってはダメ

-今はなかなか自由に外出ができない状況ですが、仕事のない日はどのように過ごされていますか?
吉井: 家にこもって一日中ゲームをしています(笑)メイクをしないと全く気持ちにスイッチが入らないので、そういう時の服装は、ほぼパジャマか、地味な服装ばかり。でもスイッチを入れる時は、その反動で思う存分お洒落を楽しみます。以前までは買い物もネットで済ませることが多かったんですが、最近はお店に行って、店内を見て、直接商品に触って、試着して、それから買うっていうリアルな体験が楽しくて、お店で買うことが増えました。伊勢丹新宿店のメンズ館もくまなく見て回りますが、本館1階にあるアナスイのショップで、コスメをチェックするのは欠かせないルーティンです。
-今の世の中に対して主張したいことはありますか?
吉井: 一人一人が生きていることと、平等に命が分けられていることを自覚して、人と自分の節度を大事にしていきたいと思います。自分以外の人を、自分と同じ人だと思えなくなることが多くなっていますよね。学生時代は学校の先生がアンドロイドに見えてしまうようなことがありましたけど、敬意って義務ではないですが、どこかで人が悲しむから、その人と人との関係性の大切さを自覚してほしいと思います。ただでさえマスクですし、コミュニケーションもネット上がメインになってきていたり、リアルな触れ合いがどんどん少なくなっていますからね。そういったことを忘れずに、人と接していきたいと思います。
-同世代に向けてメッセージをお願いします。
吉井: 考えていることはみんなと同じだと思っています。動いて実行することはできなくなっていますが、頭の中で考える時間が増えていますから、その時間を無駄にしないで、計画を立ててみたり、目標を立ててみたり、地道に夢に向かって今できることに集中してほしいと思います。今できないことが多いですが、何もしないと無になってしまいます。持っていた夢さえもなくしてしまってはダメ。考えることをやめないでほしいです。一歩でもそれに近づく何かをしてほしい。当初思っていたルートとは違っても、同じゴールにいく道は他にもたくさんあるはずですから。
吉井のような自己表現に情熱を燃やす若者たちが、また心置きなくお洒落を楽しめる日常に、一日でも早く戻れることを祈りつつ、今『EPOCH』にできることは、これからも変わらずに、ファッションの素晴らしさをストレートに表現し、伝えていくことだろう。
Photograph:MINORU KABURAGI
Videograph:MASARU FURUYA
Text:Minimal Inc.
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