【インタビュー/EPOCH vol.28】世界で活躍する日本人モデルが見た2023年春夏ファッションウィーク

【インタビュー/EPOCH vol.28】世界で活躍する日本人モデルが見た2023年春夏ファッションウィークのメインビジュアル
 

2年ぶりに本格的なランウェイショーが復活した2023年春夏シーズンのコレクション。今シーズンは日本人モデルたちの活躍も目立ち、数々の有名メゾンのショーで注目の存在だった。
世界の舞台に立つモデルたちは、今回のファッションウィークで何を感じ、これからのファッションについてどんな夢を描いたのか?ショー出演から間もない7月某日、3人の日本人モデルにインタビューした。

 

Akito Mizutani

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パリの朝10時。街角のカフェからインタビューに答えてくれたのはAkito Mizutaniさん(以下Akitoさん)。今まで<ルイ・ヴィトン>、<グッチ>など名だたるメゾンのキャンペーンモデルを務め、海外ファッション誌など世界の舞台で活躍の場を広げている。2023年春夏コレクションでは、<ロエベ>、<ディースクエアード>、<ケンゾー>など多くのショーに参加した。現在27歳。モデルとしての活動を続けながら、クリエーターとしてのキャリアも歩み始めているというAkitoさんに質問を投げ掛けてみた。

 
<DSQUARED2>2023年春夏コレクションの画像
<DSQUARED2>2023年春夏コレクション
 

Q.コロナ後、本格的にショーが再開された今シーズンでしたね。ショーの感想を聞かせてください。

今回のコレクションは、やっとフィジカルなファッションショーが戻って来たなと実感できました。コロナ前のショーを経て、コロナ禍の状況を知っている僕にとっては、生のショーならではのヒリヒリした感覚が久しぶりで新鮮でした。15分のショーのために、デザイナーはじめ、ショーに関わるすべてのクリエーターたちが半年間の時間と情熱を費やしてきて、そのすべての努力が15分に集約され、失敗が許されないというドキドキ感は、フィジカルならではの楽しさ。その空間にいることで、ファッションが完全に戻った!と実感しました。ファッションに関しては生が一番。本気度がすべてのスタッフから伝わって来て、心が湧きました。

 

Q.ショーでの印象に残ったエピソードはありますか?

<ロエベ>のショーの時のことです。ショーでは、タイムキーパーがモデルの出番タイミングを知らせる呼び出しをしているのですが、バックステージのその声が漏れて、会場に響いてしまうというトラブルが一瞬あったんです。その臨場感にゾクゾクしました。1回のショーに半年をかけているという本気度やピリピリ感、追い込まれている状況に楽しさを感じました。<ロエベ>のショーは、階段を上がって坂を降りるランウェイで歩きにくかったので、転ばないように神経を使いました。

 

Q.ショーでの印象的だったルックは?

LGBTQなど性の多様性が求められている今、面白いなと思ったのは僕が着た<ケンゾー>のスカートのルックでした。僕はストレートなのですが、女の子が好きな男子でもスカートをはいていいんだよ、という提案になったらいいなと思いながら着ました。男としてはきたいなと。スタイリストが仲良くしている方だったので、「これは俺のルックだと思う」と伝えていたところ、僕が着ることに決まったので嬉しかったです。ほかのブランドと比べて勇ましく、オラついた歩き方をして“男が男としてスカートをはく”という表現をしました。

 

Q.モデルとして、ファッションを通してどのようなことを伝えたいですか?

仕事の時はあくまでAkitoでないといけないという存在であるべき。個性が大切です。けれど着る服によって、カメレオンのように服に染まることが求められます。自分の個性ってなんだろう、と考えた結果、それは外見ではなくて内面なのだと捉えるようになりました。外見としてはマネキンになってブランドに染まる、内面の部分で個性を見せる。
Akitoが着ているという印象は残しつつ、それは自己表現の場ではない。ファッションはアートではなくビジネス産業でもあるので、そこに繋がるのであれば幸せなことだなと思います。服が売れるかどうかでモデルの良し悪しは決まるわけではないけれど、僕もビジネスの循環の中に存在できたらなと思います。

 

Q.Akitoさんの普段のファッションへのこだわりは?

ストリート感のあるスタイルやダメージデニムを取り入れた着こなしをするのですが、どこかに綺麗に見える要素を入れたいと常に思っています。例えば、ヴィンテージデニムにセンタープレスのように刺繍を入れるリメイクをしたりして、綺麗な要素を入れることで魅力的に、上品に見せることを意識しています。

 

Q.秋冬にはどんなものが欲しいですか?伊勢丹新宿店メンズ館で買うなら何を選びますか?

今、ほとんど海外を転々とするような生活をしていて、スーツケース2個を持ってエアビー生活をしています。今年に入って日本にはまだ1カ月しか帰っていないんです。日本に帰ってメンズ館に行けたら、ぜひドメブラ(国内ブランド)の服を買いたいです。海外にまだ進出していない日本のいいブランドがたくさんあります。日本のブランドを着ていれば、「日本人だぞ俺は」という風にテンションを上げてくれるのではないかと思います。

 

Q.コレクション期間中、どんなものを食べましたか?人と食事に出かけましたか?

タルタルが好きで、食べて美味しかった。あとはビールが美味しかったです。今回のファッションウィークには、日本のクリエーターたちも久しぶりにミラノ、パリに来ていたので、ウィーク中はずっと久しぶり!と会って、皆で飲むビールは最高でした。街ではマスクもしなくなって、人とのフィジカルなコミュニケーションが増えて、距離が縮まったことが嬉しかったです。

 

Q.『EPOCH』には「挑戦」や「新たな時代を切り開く」という意味が込められているのですが、Akitoさんの今後挑戦したいことや野望は何ですか?

モデルの仕事を通して、ファッションビジネスの中にいたいと思うようになり、現在はクリエーティブ・ディレクションやビデオグラフィーなどを始めています。日本のクリエーターは素晴らしい人が多いけれど、日本市場の規模を小さく感じてしまうので、海外で挑戦しながら日本のクリエーターとの架け橋になれればいいなと思います。「海外で仕事をしようぜ!」って、海外との仕事を増やせる状況を作りたいです。日本を引き上げたいし頑張りたい!そういうことを言える存在になりたいと思っています。

 
Akito Mizutaniさんのプロフィール画像
Akito Mizutani
@akito_mztn
1995年5月6日生まれ。
2018年よりdonna所属でモデル活動開始。
「ARENA HOMME+」でデビュー、国内外の雑誌、ショーに出演し、GUCCI 2020 Pre-fallにて日本人初のキャンペーンモデルに起用される。
 
 

Takuma Amakasu

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    左:TAKETO (Bazookamgmt)
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Takuma Amakasuさん(以下Takumaさん)は、2019年にモデルキャリアをスタート。「LOUIS VUITTON×NIGO」でデビューし、国内外の雑誌、ショーに出演している。2023年春夏コレクションでは<フェンディ>、<ロエベ>、<ジェイダブリューアンダーソン>、<ケンゾー>に出演。パリから帰国したばかりのTakuma Amakasuさんにリモートでインタビューをした。

 
<FENDI>2023年春夏コレクションの画像
<FENDI>2023年春夏コレクション
 

Q.前回と比べてコレクション会場の雰囲気はどうでしたか?

前回はマスクして頻繁にPCR検査もしていたのでコロナ禍の雰囲気でしたが、今回は一転オープンな雰囲気で、コロナ前のようなリアルな感じが戻ってきたと感じました。観客も戻ってきた。人がいるとよりショー特有の緊張感やゾクゾク感が感じられました。

 

Q.コレクション期間中はどんなコーディネートをしていましたか?

普段好きなのは、派手な色や異素材切り替えなどディテールに凝った変わった服。
ショー期間中は気持ちに余裕がなくて思い切りお洒落を楽しめる状況ではなかったのですが、ショー会場外にはスナップカメラマンがいたりするので、ショー当日はそれなりに気をつかっていました。普段は、ブランドの古着などを買っています。

 

Q.秋冬に向けて欲しいアイテムは?

アウターが欲しいです。昨年冬はダウンばかり着ていたので、コートなどバリエーションのある着こなしがしたいなと思います。

 

Q.Takumaさんが出たショーの中でお気に入りのルックは?

僕が着たルックではないのですが、<ロエベ>のショーで、ロングコートに草が付いているルックがとても気になりました。草を本番前にコートにつけているのをバックステージで見て、あれは凄いなと、こういう発想があるのだと思いました。斬新なのに、馴染んでいました。

 

Q.モデルとしてファッションをどう表現しようと心がけていますか?

自分にしか出せない色、フレッシュなものを表現できたらいいなと思っています。
モードファッションは誰もが見ているわけではなくて、ブランドは知っていてもコレクションを見る人は少ないと思います。さらに幅広い層にハイブランドのコレクションが馴染み深いものになればファッションはもっと面白くなると思います。その楽しさを伝えることができたら嬉しいです。

 

Q.会期中に食べた美味しいものは?

ケバブばっかり食べていました。コンビニくらいの数のケバブ屋があったので。あとは、スイカが甘くてハマってしまいました。ミラノでもパリでも、コレクション期間中にスイカを10回くらい食べていました。

 

Q.秋冬にしてみたいスタイルは?

伊勢丹新宿店メンズ館のデザイナーズブランドのフロアはよく行きます。僕は攻め攻めのスタイルで行きたいなと思います。カッコよくておしゃれな服よりも変な意味で浮いてみたいというか、そっちの方が楽しいんです。変な服を着ると、変身した時の、いつもとは違う居心地とかテンションになります。変わった格好で個性を出した結果、自分は自分という存在にたどり着く。周りを気にせず自分を隠さずに、どこの誰でもなく自分だという表現ができるのだと思います。

 

Q.今後挑戦したいことは何ですか?

自分にしか出せない雰囲気を出せるモデルになりたいと思います。誰が一番かっこいいとか綺麗とか、そういう基準ではなくて、自分というジャンルを確立してそれを表現していけるようになりたいです。

 
Takuma Amakasuさんのプロフィール画像
Takuma Amakasu
@takuma_amakasu
1999年5月13日生まれ。
2019年よりdonna所属でモデル活動開始。
「LOUIS VUITTON×NIGO」でデビューし、国内外の雑誌、ショーに出演。
 
 

Gendai

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2021年、大学在学中にモデルデビューしたGendaiさんは日本のファッション誌やキャンペーン、日本人デザイナーのファッションショーに多数出演して注目を集めていた。
今回のパリ・ミラノが海外コレクション初挑戦となり、デビューからいきなり5ブランドのショーに出演するという活躍を果たした。さて、初めての海外コレクションは彼の目にどう映ったのか。

 
<JW ANDERSON>2023年春夏コレクションの画像
<JW ANDERSON>2023年春夏コレクション
 

Q.初めての海外コレクションで5つのショーに出演、活躍されていましたね。ショーに出た感想は?

ラッキーだったと思います。パリに行く前は1ブランドくらい出られたらいいなという気持ちだったのですが、世界でも少しは目に留まったのかなと。コロナ後、本格的にファッションショーが再開した今回。モデルを始めたのが1年前だったのでコロナ前のショーを知らないですが、本格的なファッションの復活を感じました。多くのブランドがショー形式で発表し、観客やストリートスナップで撮られている人たちは色味を使った鮮やかなファッションの人が多く、それらがコロナ禍の鬱々としたイメージを払拭しているように感じました。

 

Q.コロナ前と後で、Gendaiさんの心の中に変化はありましたか?

1年前のコロナ禍真っ只中でモデルを始めて、服について知るようになりました。モデルを始める前は派手な色を着ていなかったし、シルエットの違いなど、そういったファッションに対しての知識はモデルを始めてから身についたと思います。パリコレっていう言葉は日本でも浸透していますが、行く前まではどのような世界か想像できませんでした。そして実際、パリで5ブランドのショーで歩いてきたけれど、パリコレに出た実感がなくて今でもふわふわとした心持ちです。

 

Q.ショーで印象的だったことは?

最初のデビューショーが<フェンディ>で、自分でも知っているハイブランドでした。会場の雰囲気やお客さんが日本のショーとはまったく違っていて。転んだらどうしようかととても緊張しました。日本人モデルも多く出演していたので、海外で会うと嬉しいし安心感がありました。

 

Q.ショー期間中はどのようなコーディネートをしていましたか?

デニムが好きで、海外に持って行ったのもデニムにブーツ。下半身はそれで固定でした。ミラノは暑かったので、上は基本的にはタンクトップ。下がシンプル目だったので、派手なトップスを合わせていました。

 

Q.伊勢丹新宿店メンズ館に行くことはありますか?

はい、メンズ館にはよく行っています。でも学生には値段がという部分がありますが、行った回数は多いです。一番行くのは、7階のメンズオーセンティックのフロアです。<ブルックス ブラザーズ>などを見ます。

 

Q.秋冬に向けてのファッションの計画は?

秋冬はシルエットに着目して服を選びたいと思います。ショーに出るに際して、髪をロングからショートに変えたので、新しいヘアスタイルに合わせて、試したことのないシルエットに挑戦してみたいです。毎年お気に入りのコートを1着買うことにしているのですが、今年はロングコートが欲しいです。ステンカラーかスタンドカラーのコートを狙っています。ディテールが凝ったものでいいのがあれば買いたいです。

 

Q.今後、挑戦してみたいことは何ですか?

今年中にパリ・ミラノ以外の都市のショーにも挑戦したいです。韓国・アメリカ・ロンドンなど。

 
Gendaiさんのプロフィール画像
源大
 
2000年生まれ、東京出身。
2021年、大学在学中にモデルとしてデビュー。
<Mame Kurogouchi>、<SUGARHILL>など気鋭ブランドのショーに多数出演し注目を集める。『BRUTUS』、『GRIND』といったファッション誌のほか、<mastermind>、<TARO HORIUCHI>などのブランドルックにも出演し、ファッションをフィールドに活動を行っている。
 
 

Text:ERI KOIZUMI