
「made in USA」の靴作りを誇る老舗<オールデン>のシューズは、男なら誰しも1度は履きたい男の憧れ。日本でも長く愛されているその人気の理由は、アメリカントラッドの歴史とともに歩んできたそのシューズがもつ唯一無二の存在感と履き心地にほかならない。
ここではオールデンの魅力に迫り、それぞれに特徴を持つ「木型(ラスト)」や、コードバンをはじめとする厳選された「素材」使い、「フィッティング」など詳しく紐解いていくので、ぜひ自分にとっての「マイ・ベスト・オールデン」を見つける参考にして欲しい。
*<オールデン>輸入総代理店 株式会社ラコタ監修
まずは<オールデン>の魅力を語る上で欠かせない、ブランドが歩んできた歴史をたどろう。
【ヒストリー編】
メイドインUSAの誇り。アメリカントラッドの歴史を築いた130年
1884年、米国はマサチューセッツ州ミドルボロウで創業の<オールデン>。極めて上質な素材を用いたトラディショナルなグッドイヤーウェルテッド製法の靴は、アッパーに用いるレザーの厳格な品質チェックに始まり、 ライニングレザーの貼り合わせ、ソーイング、木型への吊り込み、フィニッシングまで、約200にも及ぶ多様な工程を経て完成する。なかでもスキンステッチモカなど1針1針を手作業で入れる工程が要されるものもあり、その工程には高度な職人技が欠かせない。130年を超えるブランドの歴史と「made in USA」の誇りが、オールデンのシューズの高い品質を支えている。
そして何よりも<オールデン>は、足に問題を抱えた人も快適に履くことのできる医療用矯正靴の分野を開拓し、靴設計に革命をもたらしてきた。内振りのカーブが強い、<オールデン>で多く採用している木型「モディファイドラスト」を用いたシューズがこれに当たる。 素晴らしい履き心地の追求は、同ブランドのアイデンティティそのものであり、矯正靴の研究、開発で培った技術は全ての「オールデンシューズ」をより快適で履き心地のよいものとすることにも、大きな貢献を果たしているのだ。
【素材編】
ホーウィン社のコードバンだけではない「素材」へのこだわり
アメトラの王道スタイルに<オールデン>のコードバン「No.8(バーガンディー)」を足元に添えるのは定番中の定番の着こなしと言っても過言ではないが、近年は革好きな人やエイジングを楽しむ人、またビジネス用としてコードバンの「ブラック」を好む人も増えており、今ではバーガンディーと同じくらい人気を二分している。他にも、<オールデン>のシューズは厳選されたこだわりの素材を使用しておりそれぞれ革の持ち味を最大限に味わえるのが魅力なのだ。
ここでは<オールデン>で人気の主な5つの素材をクローズアップし、その特徴を解説していく。
1. コードバン
カラー:ブラック
カラー:No.8(バーガンディ)
<オールデン>の代名詞とも言える素材「コードバン」(馬の臀部の革)は、老舗タンナーであるホーウィン社のシェルコードバンを使用。”革のダイアモンド"とも称されているこの素材は、艶もさることながら、履いていくうちに馴染みがよく履きジワがくっきりと波を打つように大きく入るのが特徴だ。<オールデン>好きならその心得として既知の事実ではあるが、その履きジワこそが最高に格好良いとされている。コードバン自体はハリがある革で下ろしたては硬く感じるが、次第に馴染みしなやかになっていく。
ホーウィン社のコードバンはブラックとNo.8を定番カラーとしているが、そのほか日本国内に流通していない限定カラーのシューズが存在しており、マニアの間では密かな話題となっているようだ。
2. カーフ
数ある革の中から厳選された素材を使用。キメ細やかで履きこむ程に馴染み、美しい光沢が味わえる。コードバンとはまた違った<オールデン>のカーフにも、根強いファンがいる。
3. スウェード
世界中の革の中から厳選されたスウェードを使用。2種類の素材から流動的ながら常に10色程度を展開している。
4. クロムエクセル
ワークブーツなどに用いられることの多いホーウィン社のクロムエクセル。特徴は肉厚な牛革にオイルを染み込ませており、しっかりと厚みがありながら足馴染みに優れている。革が馴染んでクタッとしてくる感じやキズがついてもそのまま履き続けていくうちにどんどん味になってくるのも相棒感を感じられる魅力のひとつだ。また、水弾きも良く、天候を気にすることなく履けるもの特徴。
5. ユティカ
<オールデン>が2015年~2018年頃の約4年のみ使用した、現在は取り扱いのない希少な革。ホーウィン社が手掛ける素材ならではの無骨と温かみがあり、オイルをたっぷり含む事で肉厚ながらシットリしている。柔らかな素材は馴染みやすく、足にかかる負担を和らげてくれる“究極のワーク革”である。油分が多く、グローブレザーに近い表面は、雨や汚れも比較的強い。
【木型(ラスト)編】
左から:アバディーンラスト/プラザラスト/ヴァンラスト/バリーラスト/ミリタリーラスト/モディファイドラスト
履き味に直結する「木型(ラスト)」を知る
<オールデン>は創業当時から「靴は歩くためのギア」という哲学を持っている。様々な特徴の木型を採用しているのは、何よりも歩きやすさを前提に考えられているから。「履きやすい」「長時間歩いても疲れにくい」実際に履いている人は口を揃えていうだろう。
現在アメリカ本国では10種類以上の木型を使用しているが、日本の市場ではより日本人の足に馴染みやすい木型を中心に展開している。今回はその中から、伊勢丹メンズ館でも取り扱っている特に人気の高い木型を中心にピックアップし、その特徴を詳しく解説する。木型によってサイズ感やフィッティングも変わってくるので、まずはその特徴を知り、自分の足にあった”推しラスト”を見つけて欲しい。
1. ABERDEEN LAST/アバディーンラスト
<オールデン>が持つ木型の中で一番古いとされている。よりトラッドに、よりスタイリッシュに見せるドレスシューズ向けの細身の木型。スリムでありながらも、足のつま先から甲で靴を足に固定する設計なので吸い付くようなフィット感が履き心地と歩きやすさも兼ね備えている。 美しく映えるフォルムは足元をエレガントに魅せてくれる。
2. PLAZA LAST/プラザラスト
アメリカ的なチゼルトウ(つま先がスクウェア型)が印象的な、ほかの木型と一線を置くノーズが長めな木型。<オールデン>ではストックシューズとしてアメリカ国内に流通しており、主にドレスシューズに使われることが多い。
3. VAN LAST/ヴァンラスト
つま先が垂直に立ち上がっているモカシン専用ラストで、モカ(甲にあるU字型の意匠)がきれいに乗るように作られている。本国のヴァンラストと比べより甲が高く、ヴァンプ(つま先革)が長く履き口が狭い仕様だ。つま先から甲でしっかりホールドしており、踵の食いつきがいいので、日本人の足型に合ったフィッティングと言える。他のラストと比べて捨て寸は短めだが、程よくゆとりを持たせ、スリッポンながらさまざまな足型に合う。デザインがシンプルな分、とてもドレッシーな印象だ。
4. BARRIE LAST/バリーラスト
アーチの絞りは緩め、ヒールカップはやや浅め。どっしりとした安定感あるフォルムはアメリカントラディショナルなデザインと相性がよく、ボリュームある無骨な雰囲気に男らしさが伺える。甲部分がキュッと締まって、つま先にゆとりがある分、とても履きやすいし、履き心地がいいのが特徴だ。
5. MILITARY LAST/ ミリタリー ラスト(379X)
タンカーブーツに代表されるラストが「ミリタリーラスト」、正式名称は「379X」。海外では見かけないラストとして靴好きには有名だ。第二次世界大戦中に軍靴用として作られ、戦後長く倉庫で眠っていたものを94年に発掘し復活を遂げ、95年に日本でデビューしたタンカーブーツに使用されている。その形は土踏まずを緩やかに絞っていて、踵まわりが小さく、甲が低いので、足幅が細い方でも合わせやすいのが特徴だ。
6. MODIFIED LAST/モディファイドラスト
履き心地の良さを追求した<オールデン>を代表する木型。美しいアーチのシェイプは土踏まずを支える“アーチフィッティング”の為のもので、アーチが高かったり、甲高でインサイドラインがストレートな足、ハンマートウ、フラットフット、内股で足の弱い方等などに広範囲に対応できる。つま先は丸みがあり、指を自由に動かせるストレスを軽減、長時間歩いても疲れにくい設計になっている。
他にも根強い人気の5型の木型はこちら。
7. TRUBALANCE LAST/トゥルーバランスラスト
オーソペディック(足の治療や運動機能の補助を目的とした靴)のライン、フットバランスシステムの1つトゥルーバランスラスト。丸みを帯びたトウデザインが特徴的で、ALDENの中でもっとも幅が広いとされている。つま先にボリュームがあり、甲が低めなこの木型はモディファイドラストと並び、多くの足型に合うのが特徴だ。
8. HAMPTON LAST/ハンプトンラスト
<オールデン>では最もドレス顔な木型の1つ。シャープなつま先とは異なり、やや内ぶりで程よいアーチシェイプが心地よいスタイリッシュなラスト。本国での取扱いも多い。
9. COPLEY LAST/カプリラスト
レイドンラストのつま先をシャープに尖らせたトウデザインが印象的な木型。美しく足元をシャープに魅せるのは勿論、その見た目とは異なり程よくゆったりした履き心地が特徴。
10. LEYDON LAST/レイドンラスト
王道バリーラストを横幅、高さ共にやや細身に仕上げた木型です。つま先に丸みを残しているので、本国ではセミカジュアルなモデルに使用されることが多い。
11. GRANT LAST/グラントラスト
<オールデン>全ラストの中でワイドとナローの中間に位置するベッシックな木型。フォルムにクセない為、どんなパターンを乗せてもしっくりくるユーティリティ性が魅力の木型。
【フィッティング編】
<オールデン>シューズのサイズ選びのポイントとは
<オールデン>が理想とするフィッティングは、英国やイタリアなどタイトフィッティングを主流とした欧州の靴メーカーと考え方が根本的に異なり、全てアーチ(土踏まず)フィッティングを取り入れている。アーチが合えば、つま先は程よく余裕を持ち、指先が常に自由に動かすことができ、革靴というよりスニーカーに近い履き心地が味わえる。それは、初めて足入れしたときから快適な履き心地でなければ歩行のサポートが出来ないと考えている<オールデン>の理念そのものと言える。
<オールデン>のサイズ選びは、ラストや革素材、デザインの複合的な要素でサイズが前後する。したがって初めて購入される方は必ずフットメジャーで測定して、店頭スタイリストと相談することをおすすめしたい。自分のレングス(長さ)やウィズ(幅)を知ることはもちろんだが、それにあった最適な木型やサイズを選ぶことも重要だ。それを踏まえて押さえておきたいサイズ選びのポイントを伝授する。
【靴の内側に記されている記号の見方】
①:サイズ表記
②:ウィズ表記(分母=ウィズ・分子=ウィズによって導き出されるヒールサイズ)
③:シューズのモデルナンバー
サイズ表記について
<オールデン>のサイズは全てUSサイズで表記されており、UKサイズと比べるとハーフサイズ大きな表記となる。例えばUK7ハーフ(JP26㎝)で自分のサイズを覚えている人はUS8(JP26.5㎝)を探すとよいだろう。
ウィズ表記について
本国では木型によりそのウィズは様々で、AA~EEEEまで揃えており、多くの足型をサポートしている。ただ、<オールデン>のウィズ企画は元々がやや幅広の為、日本国内ではDでの展開が主流。これは一般的なメーカーのEまたはEEに相当している。
木型別サイズ合わせ
木型によっては広くて丸いつま先や、より狭くて先のとがったつま先のものもあり、それぞれの形状が異なるため、フィット感やサイズが異なる。一部のモデルは、他のモデルよりも0.5㎝ほどサイズが大きくなるものもあるので特徴をよく掴むことが必要だ。例えば、前述の主要な木型を目安にすると、「アバディーンラスト」は通常のUSサイズよりわずかに長さはあるもののサイズはジャストで選べるが、「バリーラスト」や「トゥルーバランスラスト」は通常のUSサイズより大きめなのでハーフサイズダウンすることをおすすめする。 また、冬場に履く機会が多いブーツは、肉厚なソックスで着用するなど、ソックスの厚みによってもサイズが異なるためこちらも注意が必要だ。
【モデル編】
<オールデン>を代表する定番をはじめ、メンズ館で人気のおすすめモデルまで5型をご紹介。
1. タッセルローファー「664」
<オールデン>タッセルローファー「664」 136,400円 商品を見る
□伊勢丹新宿店メンズ館地下1階1 紳士靴/三越伊勢丹オンラインストア
モデル:664
木型:アバディーンラスト
カラー:ブラック
ウィズ:D
素材:コードバン
タッセルローファーの起源は、1940年代に活躍したハリウッド俳優ポール・ルーカス氏が、タッセル(房飾り)付きの紐靴をデザイン性を損なわずにより履きやすく作って欲しいと、ニューヨークとカリフォルニアの靴店に依頼したことから始まる。そして偶然にも、その両店がルーカス氏の要望を叶えるべく生産を依頼したのはオールデン社。同社は独創的なデザインかつ履きやすいシューズを考案し、後にタッセルローファーを完成させた。
「664」は履き口の周囲をぐるっと覆うタッセルコードをあしらっており、エレガントさを備えつつ軽快な履き心地が魅力な1足だ。
2. ワンピーススリッポン「N9104」
<オールデン>ワンピーススリッポン「N9104」 138,600円
□伊勢丹新宿店メンズ館地下1階1 紳士靴
モデル:N9104
木型:プラザラスト
カラー:ブラック
ウィズ:D
素材:コードバン
国内のレギュラーモデルには存在しない伊勢丹別注モデル「N9104」。<オールデン>の名作タッセルモカシンの房飾りとクローンステッチによるモカシン縫いを除去した1枚仕立てで革の繋ぎ目がなく、足にかかる負担を最大限に和らげた仕様だ。プラザラストを用いることでフォーマルやビジネス、モードといった様々なシーンで活躍するエレガントな1足に仕上がっている。
3. ロングウィングチップ 「N5502」
<オールデン>ロングウィングチップ 「N5502」141,900円
□伊勢丹新宿店メンズ館地下1階1 紳士靴
モデル:N5502
木型:バリーラスト
カラー:ブラック
ウィズ:D
素材:コードバン
つま先から始まる"W"の装飾が足を包み込むにようにバックステイ(踵のぬい目の補強部分)まで回り、靴全体でそのデザインを表現する別名アメリカンブローグと呼ばれる「ロングウィングチップ」。
伊勢丹別注モデルの「N5502」は、フィット性の高い外羽根式に重厚感あるダブルレザーソール、伝統のリバースウエルトを機械式のグッドイヤーウエルト製法で仕上げる、まさにオールアメリカンな1足と言える。
4. チャッカブーツ「1340」
<オールデン>チャッカブーツ「1340」143,000円
□伊勢丹新宿店メンズ館地下1階1 紳士靴
モデル:1340
木型:バリーラスト
カラー:ブラック
ウィズ:D
素材:コードバン
<オールデン>が改良に改良を重ね、1970年代に完成されたチャッカブーツ「1340」。無駄なデザインを持たないシンプルな見た目ながら、サイドのトリプルステッチ、バックステイに施されたヘヴィーステッチは、アメリカの空気が漂い、どこか心を掴まれるインパクトがある。オンオフ兼用で足元を演出してくれるのも魅力だ。
5. タンカーブーツ「4540H」
<オールデン>タンカーブーツ「4540H」148,500円
□伊勢丹新宿店メンズ館地下1階1 紳士靴
カラー:バーガンディ(#8)
ウィズ:D
素材:コードバン
「タンカーブーツ」は1995年に〈オールデン〉の日本の輸入総代理店ラコタが企画して誕生した日本発のモデル。現在では多くのセレクトショップが別注をしていて、世界的にも知られてきている。
ノルウィージャンフロントと呼ばれるつま先に施すステッチは、熟練職人による手縫いが特徴。木型を入れた状態でライニングまで縫わないよう細心の注意を払いながら縫われるこの技法は、履いたときにモカのステッチが足に当たらないようになっている。熟練の職人でも1日に10足程度しか縫うことができない希少性に加えて、ミシンのステッチとは違った手縫いの温かみと高級感が魅力だ。
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