2024.3.1 UP
パリを拠点に世界的に活躍するパティシエ、青木定治さん。1989年に単身渡仏して以来、フランス・パリを代表するパティスリーの一つとして、世界中のファンを魅了し続けている。そんな<パティスリー・サダハル・アオキ・パリ>の代名詞といわれるのが、いまでは“世界一”とも称されるマカロンだ。アトリエを構えて“自分の表現”として最初に挑んだのがこの菓子だという。
オーブンから取り出された焼きたてのマカロン生地。厳しさの中に慈しみが滲む真剣な眼差しでチェックする青木さん。
「パリで美味しいと評価されている全店舗のマカロンを食べ歩き、“美味しいマカロンとは何か? 世界一の美味しさは何か?”」を追求し、実に3年の歳月を費やして納得のいく表現に辿り着いたという。独自で考案した配合比と製法で、サダハルアオキの唯一無二のマカロンを誕生させた。
まずはマカロンの生地の土台となるアーモンドプードルを計量。フレーバーに応じて、ショコラなどを独自の配合比で合わせていく。
泡立てたメレンゲをさっくりと混ぜ合わせ、テクスチャーを確かめながら生地を練り込んでいく。
サクッと軽やかな印象から口の中でほろほろと崩れるマカロン生地は、中にサンドしたクリームと繊細に溶け合い、やがて消えていく。生地の土台となるアーモンドプードルのほんのり香ばしい風味がさまざまなフレーバーを受け止め、多層的な味わいを表現する。それを口に含んだ瞬間、パリの風景が広がるようだ。
香ばしく焼き上がった生地の上に、中に挟むショコラクリームを絞り出していく。もう1つの生地を優しくのせてサンドしたら完成。
ちなみにサダハルアオキのマカロンはパリ仕込み。普段はフランス直送のマカロンだが、この日は特別に青木さん自ら軽井沢の店舗の厨房で製造してくれた。フランスと日本に現在14店舗を構える<パティスリー・サダハル・アオキ・パリ>が軽井沢に「コンフィチュール」製造のための<アトリエ軽井沢店>を構えたのは2020年のこと。
カフェを併設した軽井沢の店舗では、長野県産の果物を中心に旬の果実を使った70種類以上のコンフィチュールを製造している。
青木さんにとって、軽井沢は幼い頃からゆかりのある地でもある。
「コロナ禍で行き場をなくした果物をなんとかしよう、というのがアトリエを始めたきっかけでしたが、豊かな自然とそこで育まれる上質な農作物はもちろん、信州・信濃には京都と江戸をつなぐ中山道も通り、名だたる武将たちが土地を守ってきた長い歴史に裏付けされた素晴らしい民度もある。実は親戚の別荘があったので、幼い頃から軽井沢へはよく来ていたんです。とにかく魅力的な土地なので、最近日本で過ごすときは、もっぱらこのエリアに入り浸りです」
これぞと思った菓子を徹底的に研究し自身が納得いく表現を模索し続ける。そしてその土地の風土が育む果実や素材と向き合い、試行錯誤の時間を誰よりも楽しむ。継承と進化を常に繰り返し、少年のように菓子と戯れる青木さんの情熱と愛情が、サダハルアオキの菓子が世界中から愛される所以だろう。
マカロン 10P(10個入)4,256円
<パティスリー・サダハル・アオキ・パリ>の看板商品として世界中から愛されている「マカロン」。生地の土台となるアーモンドプードルのほんのり香ばしい風味がさまざまフレーバーを受け止め、多層的な味わいを表現する。カシス、ピスタッシュ、キャラメル サレ、アールグレイ、フランボワーズ、セザム、フレーズ、シトロン、ショコラ、マッチャの全10種。
<パティスリー・サダハル・アオキ・パリ>の店頭には、見目麗しい焼き菓子やショコラが並ぶ。「何よりも生地を楽しんでもらいたい」と考える青木さんが得意とする和素材を生かし、パリのエスプリを纏ったスイーツは目移りするものばかり。日常のひととき、こんなに素敵なスイーツを囲めば、きっと笑顔が溢れるはず。
バンブー 1,048円
生地やクリームに抹茶を巧みに使い、茶の風味、甘さ、繊細な苦味が多層的に重なるグラデーションが魅力。2003年パリ世界陸上の際に、日本人選手団を応援するために誕生した一品。和素材を得意とするサダハルアオキらしさを存分に発揮させた定番の人気商品。
コフレ アソーティモン ドゥ ビスキュイ プティ(230g/9種類)3,564円
レーズンとシナモンを合わせた「レザン」、アールグレイのサブレにフランボワーズのコンフィチュールをサンドした「アールグレイ」、甘酸っぱいイチゴを使ったメレンゲ「ムラング フレーズ」など、9種類の味が楽しめる焼き菓子の詰め合わせ。パリの街並みが描かれた白×シルバーの缶は手土産にも最適。
ボンボンショコラ 6P(6個入)3,132円
蓋を開けると、まるで化粧パレットのようなカラフルなショコラがずらり。その日の気分で口紅のカラーを選ぶように、多彩なフレーバーが楽しめるサダハルアオキの代表的ショコラ。口どけの良いガナッシュと心地よい酸味のフランボワーズや、青木さんが得意とする和素材使いを堪能できるマッチャやユズなどが揃う。
ケーク オ ショコラ ア ロランジュ 5,314円
青木さんがまだ店を持たない頃にアパートで焼き始めたのが誕生のきっかけという思い出のケーク。サダハルアオキの原点を物語る様々なエピソードが隠された思い出のケークは、スペイン産のオレンジピールと濃厚なショコラが香る贅沢な組み合わせ。
Text:Chisa Nishinoiri
Photo:Takao Ota,Yuya wada