2024.3.1 UP
時の総理大臣や皇室にも利用されてきた<中国飯店>。<富麗華>は、社長が自身の人生の集大成として、理想のレストランを具現化するために誕生した。上海料理と広東料理の専属シェフによる料理を軸に、伝統と洗練、西洋と東洋の融合をテーマとする。焼物師や点心師といった専門職の料理人を揃えるのみならず、建築においても独自の世界観を追求。内装の意匠は、中国の素朴さと欧米の生活様式を組み合わせ、3階の中国式庭園においては現地から庭師を呼び寄せて造園したという。
2008年からスタートした『ミシュランガイド東京』では、2024年度版に至るまで16年連続で選出。その優美な世界観は広く認知されるところとなっている。
伊勢丹新宿店には、2007年の食品フロアのリモデルの際に出店。レストランでしか勝負をしてこなかった同店がその際に考えたのは、「立ち寄る時間は本当に短時間かもしれないけれど、<富麗華>ならではの調味料と調理法による料理を提供し、これまでレストランで目指してきたことと同様の“顧客満足度”を目指そう」ということだった。併設のキッチンでは、<富麗華>本店で研鑽を積んだ熟練の料理人を筆頭に、常時3、4人の中国人料理人が腕を振るう。小売店とはいえ、材料をその場で刻むところから始まり、一から手をかけるのは、もはや<富麗華>のカルチャーなのである。
一番の人気を誇るのは、真っ黒な色をした「名物 黒炒飯」。味の決め手は何と言っても、香り高いたまり醤油にある。大豆で造った濃口醤油にカラメルが加えてあり、とろみがあって甘みとコクが強いのが特徴だ。
初めに牛挽き肉を炒めることで、その脂や旨みが後から入れる具材やご飯に行き渡っていく。卵は贅沢にも卵黄のみ。豊かなコクを生むためだ。プロの技ならではの強火で加熱することで、たまり醤油が食指を刺激する香りを立ち上らせる。仕上げに乗せる松の実でさらに風味が増し、食感の変化も楽しい一皿が完成する。
「名物 黒炒飯」は、まず牛挽き肉を炒めて旨みを引き出す。強火にすることでいっそう香りが立つ。
卵は、豊かなコクを生むため卵黄のみを使用。口あたりが優しく、卵の存在感も増す。
ご飯を加えて炒めたら、色もコクも濃いたまり醤油を回し入れ、さらに香ばしく炒め合わせる。
強い火力を保ったまま豪快に鍋を振り、仕上げの火入れをする。ご飯一粒ずつに脂と旨み、香ばしいたまり醤油の香りをまとわせ、「名物」の名にふさわしい風味を生む。
名物 黒炒飯(大)(1パック)1,188円
レストランでも提供している炒飯は、香りが豊かでコクが深い中国のたまり醤油が決め手。牛肉の旨みや松の実の食感も相乗して忘れがたい味わいに。
伊勢丹新宿店に出店した当初は、パックで小売り販売すること自体が同店では初めての取り組みだったことから、商品をかなり絞りこんでいたという。だが、現代のライフスタイルに沿うことを重視し、本店の点心師が作る点心各種や鎮江産の黒酢を用いる酢豚も販売するように。いまや、春巻と酢豚は、黒炒飯と並ぶ看板商品3本柱のひとつとなった。
春巻のおいしさの秘密を点心師に尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「皮はぎゅっと巻くのではなく、ふんわり空洞ができるように包みます。揚げる際にそこに油が入ることで中の皮にも火が通り、パリパリの食感になるんです。油に投入する際は、低い温度から入れてゆっくりゆっくりと。中の空洞までしっかり火が入るので、冷めてもおいしさを保つことができます。下に比重があるので、油を優しくかき混ぜながらきれいな形をキープすることも忘れません」
春巻(1本)238円
豚肉、鶏肉、竹の子、黄ニラなどを特製の皮で巻く。冷めてもおいしく食べられるよう、低温でゆっくり揚げる。
点心に限っては、点心専任の点心師が本店で作り、店舗併設の厨房で仕上げている。
春巻は、空洞ができるように巻いてパリパリの食感に。
特製 黒酢の酢豚は、食感がよく脂と肉のバランスのよい肩ロースを用いる。ポイントはなんといっても、鎮江産の黒酢。たまり醤油と砂糖と合わせて特製たれをつくる。豚肉と絶好の相性で、豊かなコクが広がり、甘みと酸味の具合が絶妙な仕上がりとなる。
2度揚げも重要なポイントだ。1度目は低温、2度目は高温で揚げることで外はサクッと、中はしっとり柔らかい食感を生む。
特製 黒酢の酢豚(大)(1パック)1,512円
柔らかく脂のバランスもよい肩ロース肉を使用。外はサクッ、中は柔らかい肉に特製たれをたっぷりと。
2度揚げすることで、ジューシな食感に!鎮江産の黒酢のたれで仕上げる。
伊勢丹新宿店で販売している商品の半分ほどがここでしか販売していないものである。メニューのレシピは、中国現地で10年以上のキャリアがあり、<富麗華>のレストランでも経験を重ねた料理人が指揮を取っている。好きなものを好きなだけ買える便利さから、世界観は異なるもののシーンによってレストランと新宿店を使い分けて利用するお客も少なくない。多彩な種類の料理を買い揃えれば、いつもの食卓がパーティーさながらの賑やかさに!
広東風焼きそば(1パック)1,134円
あっさりした醤油味が特長の広東風の焼きそば。肉類は使用せず、具材は水菜とマコモダケを使用。
四種の点心詰合せ 972円
専任の点心師が手作りする、海老入り、野菜餡入りの飾り点心の詰合せ。食卓が華やぐ愛らしい彩り。
Text : Yumiko Numa
Photo : Yu Nakaniwa,Yuya Wada