2024.3.1 UP
この世にXO醤なるものが誕生したのは、1980年代の香港。コニャックの最高級品「XO」をテーブルに置いて食事をすることが富の象徴だったことに由来し、最高級の調味料として生み出された。その場所こそ、美食の極みを追求する香港屈指のラグジュアリーホテル「ザ・ペニンシュラ香港」。香港がまだイギリス領であった1928年12月、海上貿易の重要な寄港地として徐々に街を形成し盛り上がりを見せていた九龍半島の先端に誕生し、港に降り立つ旅客たちに「東洋の貴婦人」と喝采を浴びた、唯一無二の存在だ。
ミシュランの星を獲得している広東料理のレストランや、ヨーロッパ料理を東洋で初めて広めたフレンチレストランなどを持ち、究極の料理を味わえる場所として評判を築いてきた白亜の館「ザ・ペニンシュラ香港」。
元祖XO醤のレシピは意外にもシンプル。材料は、中国料理における高級食材の干し貝柱と干し海老、ニンニク、唐辛子、エシャロット。それから、エビの卵を干して乾燥させた蝦子(シャーズー)。蝦子は、中国料理では古くから利用され、うまみ成分として知られている。
右下にあるのが蝦子(シャーズー)。加熱により独特の香りと旨みが引き出される。
干し貝柱は蒸して柔らかくし、繊維一本一本を手で割く。そして、細かくした他の具材と順々に炒め合わせていく。
すべての具材から水分がなくなるまで鍋を回しながら根気よく仕上げる。
XO醤の調理に携われるのはスーシェフ以上のキャリアのある料理人のみ。
旨さの決め手は、ずばり“手間と暇を惜しまない”。温度を一定に保ちながらじっくりと火を入れ、その材料から香ばしさが立ち上ってきたことを確認してから次の材料を加える。聞けば、鉄鍋を振り続ける時間は1時間にも及ぶという。
地道な作業の末に出来上がったXO醤は、言うなれば「旨みの宝箱」。おつまみとしてそのままつまむのもよし。点心や豆腐などにトッピングすれば、いつもの料理がたちまちよそゆきの味にグレードアップする。
XO醤をトッピングした料理の一例、シュウマイ、焼きそば、冷奴。
一度口にすれば、海鮮の芳醇な旨みが冴える味のとりこになるのは避けられない。家庭用にするのはもちろん、手みやげにしても喜ばれるはずだ。
XO醤ソース(香港製/1個)7,344円
スイーツにおいても、美食を極めてきたラグジュアリーホテルの考え方は健在。東西のエッセンスを融合した商品群の中でその代表格と言えるのが、「マンゴープリン」だ。
マンゴープリン(日本製/1個)881円
口に含んだ瞬間、「マンゴーの王様」と呼ばれるアルフォンソマンゴーの濃厚な甘みが充満。スプーンを進めるとココナッツソースがじゅわりと溶け出し、さらに芳醇な味わいとなる。ザ・ペニンシュラ東京のフランス人エグゼクティブ・ペストリーシェフ、パスカル・シャルデラさんによれば、プリンのベースとなるマンゴーピューレやゼラチンを手早く丁寧に混ぜ合わせた後、凍らせたココナッツミルクのソースを封じ込めているという。
マンゴープリンを流し込んだ容器に凍らせたココナッツソースを忍ばせる。
工夫はこれにとどまらない。シェフによれば、マンゴーの甘さをより引き立てるために、ベースとなるプリン液にサワークリームも加えているという。
シーズンに合わせて各地から厳選した一番状態の良い完熟マンゴーとマンゴーソースを乗せ、最後にクコの実をあしらったら完成。
フレッシュな果実を加えることで、程よい食感と酸味を楽しめる。工程は極めてシンプルだが、一流シェフの丁寧かつ確かな技によって、驚くほどなめらかな食感と、みずみずしくも濃厚な味わいが生み出されている。これぞ、美食家たちに愛されてきた「ペニンシュラ」の真骨頂だ。
伊勢丹新宿店本館の地下1階にある<ザ・ペニンシュラ ブティック&カフェ>には、XO醤ソースや、マンゴープリンをはじめとしたフレッシュケーキはもちろん、ペニンシュラオリジナルの中国茶のセットなどのギフトも揃っている。
ペニンシュラオリジナル中国茶2種ギフトセット 鉄観音&ジャスミン(1セット)7,560円
ティーエキスパートが厳選した茶葉と、卓越したブレンド技術によって完成したブレンドティーは、上質で香り豊か。お茶本来の力強い味わいが楽しめる。ご自宅用にもおすすめだ。ぜひ、一流ホテルの味を気軽にお楽しみいただきたい。
Text : Mio Amari
Photo : Yuko Moriyama,Takao Ota,Yuya Wada