<キャピタルコーヒー>日本の家庭へコーヒーを普及させた立役者が守り続ける“きれいな味”。

2024.3.1 UP

今では“高級コーヒー”の代名詞としてその名を知られる「エメラルドマウンテン」を日本へ広めた立役者であり、戦後まもなく、コーヒーを家庭に普及させてきた<キャピタルコーヒー>。77年の歴史を振り返るとともに、生産者の熱き情熱が込められた豆が、「きれいな味」「冷めてもおいしい」と評される上質なコーヒーになるまでを辿る。

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戦後の日本に“家庭でコーヒーを楽しむ”という大きな潮流を生みだした。

<キャピタルコーヒー>の創業は、コーヒーがまだ家庭に普及していなかった終戦直後の1946年。

 

「創業者である栗田昌彦は、静岡県浜松市でお茶や椎茸を栽培する家の次男として生まれたのですが、コーヒーが好きで、どうにかコーヒー屋さんをやりたいと周りに話していたそうです」

 

こう話すのは、自らコーヒー鑑定士の資格を持ち、世界の生産地で行われる「カップオブエクセレンス(COE)」の国際審査員も務める、二代目・栗田鏡子社長だ。

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<キャピタルコーヒー>代表取締役社長・栗田鏡子さん。創業者の栗田昌彦さんの跡を継ぎ社長に就任。

戦前、若い頃に東京へ出てきた昌彦氏は、喫茶店の前身とも言われる「ミルクホール」に通い、コーヒーの魅力に開眼したという。終戦後に東京へ戻ってくると、和装小物の営業として戦前から信頼関係を築いていた百貨店で、コーヒー販売をスタートした。

 

当時、コーヒー屋さんで使用される“業務用”のコーヒー豆は、ザルに出しっぱなしになって埃がかかっていたり、高級品にも関わらず、雑に扱われていることに、勿体無さを感じていた昌彦氏。1960年代にいち早く視察に訪れていたアメリカなど、先進国ではコーヒーを貴重品として扱っていたため、自らが販売する百貨店では、一種類ずつガラスケースの中に入れて販売したり、新しい豆を後ろから入れる回転式のケースにして“先入れ・先出し”で鮮度を管理するなど、画期的な陳列を次々に採用した。

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粒が揃っていることも<キャピタルコーヒー>の豆が上質と評される所以の一つ。

「コーヒー豆はまさしく貴重品であり、販売場所も百貨店さんですので、昌彦はとにかく上質なものを入手するために、商社などさまざまなツテを開拓し、粒揃いのコーヒーを揃えたそうです。さらに、喫茶店で嗜むのが主流であったコーヒーを、『ご家庭でも楽しんでいただきたい』との想いから、百貨店にカウンターカフェを併設。当時、喫茶店は専門分野の形をとって、“抽出は我々にしかできない”ように見せているお店が多く、お客さまもみなさん、コーヒーをどうやって淹れるかが分からなかったんですね。そこで、コーヒー豆の売り場に併設したカウンターでハンドドリップを実演しながら、『ご自宅でも手軽に淹れることができるんですよ』と、おいしい淹れ方を広めたそうです」

 

昌彦氏のコーヒーへの情熱は、“<キャピタルコーヒー>=上質なコーヒー”というイメージを確立し、さらにコーヒーを“自宅で楽しむ”という大きな潮流を生みだした。

高級コーヒーの代表格「エメラルドマウンテン」を日本で初めて販売。

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ブラジル・ミナスジェライス州のセラード高原に拓かれた自家農園から直輸入された豆。

1988年には、昌彦氏の念願が叶い、ブラジルで自家農園を取得。自家農園という強みを生かし、糖度の高いコーヒーチェリーを手摘みするという当時は珍しかった収穫方法を農園で採用。こういった取り組みが業界内で評判を呼び、翌年にはコロンビアから、高級コーヒーの代表格「エメラルドマウンテン」を日本で初めて販売し、市場を広げた。とくに品質を重視するコロンビアのコーヒー生産量のうち、厳密な基準をクリアした1〜3%の豆だけが、「エメラルドマウンテン」として認定されるという。

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生豆の状態でも、縁が透き通るように美しい「エメラルドマウンテン」

「FNC(コロンビアコーヒー生産者連合会)という、日本で言うお米の農協のような組合からお話をいただいたのがきっかけです。南北に広がり、標高の差が大きいコロンビアでは、年間を通してコーヒーが収穫できることもあり、国を挙げての大切な生産物。コーヒー生産国の中でも特に品質を重視しているのがコロンビアなのですが、その『FNC』による厳密な選別基準をクリアし、カップテストが繰り返されて、初めて『エメラルドマウンテン』の名が与えられます。他の国に比べて山岳地帯が広く、家族経営の小規模農園が多いコロンビアでは、『自分たちがエメラルドマウンテンを作るんだ』と切磋琢磨して、コーヒーのおいしさをさらに高めているんです」

 

現地を訪れるたび、小さな農園の熱き情熱に触れる栗田鏡子社長にとって、「『エメラルドマウンテン』は語り尽くせない」という。

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エメラルドマウンテン(100gあたり) 1,188円

<キャピタルコーヒー>が日本で初めて販売を開始した1989年以来、高級コーヒーの代名詞となった「エメラルドマウンテン」。世界の80%以上のエメラルドを採掘するコロンビアが、総力をあげて作った商品であることから、「エメラルドマウンテンコーヒー」という名前が付けられたという。小規模農園が多いコロンビアで、どうしたらおいしいコーヒーができるかを細かく指導し、啓蒙を続ける「FNC」(コロンビアコーヒー生産者連合会)の原料を、販売当初から使用し、業界でもSDGsを先駆けて実践。優れた甘い香りと良質な酸味、素晴らしい風味が魅力。

 

生産者の情熱が込められたコーヒーを家庭に届けるまで、丁寧に紡いでいく。

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<キャピタルコーヒー>では、世界中から選び抜いた50〜60種の豆を多品種少量生産。

必ず現地を訪ね、農園主と対話を重ねるという“生産者の顔が見える”コーヒー豆だからこそ、埼玉県川口市にある工場でも、丁寧な精練から焙煎、販売まで一貫して心血が注がれる。

 

世界中から選び抜いた生豆は、毎朝、精練機にかけて異物を取り除き、目視でチェック。欠点豆のハンドピックを行うなど手間暇を惜しまない。

 

大きなサイロに格納された豆は2階に運ばれ、150kg釜の熱風式焙煎にかけられる。ザー、ザーと音をたてながら転がっていた豆は、熱によって水分が抜け、15分ほどでパチッパチッという音とともに豆が爆(は)ぜる。内部の豆の音や変化に耳を澄ませていた焙煎士は、テストスプーンで頻繁に色・香りを確認し、絶妙な焙煎度合いを見極めていく。

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甘い香りが特徴のエメラルドマウンテンブレンドを焙煎中。テストスプーンで何度も豆の色や香りをチェックし、釜から引き上げるタイミングを計る。

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焙煎後の豆は熱で焙煎が進むのを防ぐため、すばやく冷却器へ。

粗熱をとった後は、さらに人の目と手で欠点豆を除去し粉砕。ロースト具合をチェックするL値検査を行い、職人が感性を研ぎ澄まして仕上げた豆を、今度はデータで測定する。果実は気候に左右されやすいが、カップへ注ぐ際はいつもと同じ味になるよう、測定値は理論的な面での指針になるという。

 

最後の工程は、カッピング。挽き豆の状態でまず香りをチェックし、湯を注いでさらに嗅ぐ。4分後に撹拌してアロマを確認した後、テイスティングが2度行われ、温度差によって生じる味の違いを見分けていくのだ。

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カッピングエリアには焙煎前後の豆も並び、外観もチェックの対象になるという。

こうして五感とデータを駆使することで、<キャピタルコーヒー>の“きれいな味わい”が生み出されているのは、いうまでもない。

 

川口工場では、50〜60種類のコーヒー豆を扱い、ブレンドを入れると約100種類のコーヒーを焙煎。その数は、一日約2,500kgにのぼるという。非効率であっても目視やハンドピックを行い、職人による丹念な焙煎とデータ管理、丁寧なカッピングを行うのは、一粒一粒に生産者の熱き情熱が込められているからこそ。これからも家庭に上質なコーヒーを届けるため、この“きれいな味”を紡いでいく。

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伊勢丹オリジナルブレンド(100gあたり) 1,188円

コロンビア「エメラルドマウンテン」と、相性のよいブラジルの自家農園の豆、さらに、すっきりとシャープな酸味をもつタンザニア・キリマンジャロの「エーデルワイス農園」の豆をブレンド。3種のスペシャルティコーヒーを使用し、良質なコクと後味が特徴。酸味と苦みのバランスが良く、飲みやすい味わいで、伊勢丹新宿店で一番の売上を誇る人気商品。

 

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ハンドピック ベストクォリティブルーマウンテンNO.1(100gあたり) 4,536円

ジャマイカを代表する最高級の豆「ブルーマウンテンNO.1」を、焙煎後にさらにハンドピックで仕上げた一品。豆の美しさもさることながら、やわらかな風味と芳醇な味わいのなかで、酸味、苦み、香りの調和がとれた、まさに“コーヒーの王様”。コーヒー好きなら一度は味わいたい贅沢な一杯。

 

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インスタントコーヒーモカ(60g入) 1,350円

インスタントコーヒーというとブレンドが一般的だが、単一品種であることを示す“シングルオリジン”を採用したモカ。そのおいしさを損なわぬよう、水が綺麗なスイス・ベルンで抽出・インスタントに仕上げている。モカならではの深いコクのある酸味に魅了され、コーヒー好きも思わず手を伸ばしてしまう一品。

 

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ドリップコーヒーエチオピア ゲレナ農園 ゲイシャ(4袋入) 864円

エチオピア南部シダモ地方のグジ地区に位置する「ゲレナ農園」で栽培される、原種の一つ「ゲイシャ種」を使用。華やかな香りとコク、ベリー系のほのかな酸味と甘みが特徴。ゲイシャはコーヒーの品種のことを指すが、ラベルには日本人が持つ”芸者"のイメージをあえてデザイン。手軽においしい一杯が飲めるため、ギフトにも。

 

Text : Aki Fujii

Photo : Yuko Moriyama,Takao Ota,Yuya Wada

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