2024.9.13 UP
バターサンドから派生した バター“チーズ”サンド。2019年に登場してから、瞬く間にパティスリーの“顔”となった。良質な原料が身近に手に入る北海道美瑛町だからこそ生まれたこだわりの一品である。話を少し巻き戻そう。<ラ・テール 洋菓子店>は1998年に東京都世田谷区三宿で開業した。2004年より美瑛産小麦の生産者とのつながりが生まれ、豊かな自然とものづくりへの熱い想いに触れるうちにこの地に惚れ込み、2017年に店舗を構える。パティスリーのオープンと同時に、この地ならではの“定番”を探る旅が始まった。
北海道のほぼ中央に位置する美瑛町。情熱に溢れる生産者から原料を調達。生産者の顔の見える菓子作りをしている。
風光明媚な町としても名高く、店舗のある丘からは美しい夕日を眺めることができる。
チーズバターサンドを開発したバクサ裕子シェフ
「プリンやドーナツのように名前を聞くと味が想像できて、北海道らしい一品を発信したいと考えていました。リサーチを進めるなかでバターサンドは一つのカテゴリーとして認知されていると気付いたんです。そこに+アルファの要素としてチーズを加えたら、スタンダードと個性が同居したお菓子になるとひらめきました」。考案者のバクサ裕子シェフがバター"チーズ”サンドに行き着くまでの道のりを話してくれた。そもそもその種はドイツでの修業時代に蒔かれていたという。現地でさまざまなバタークリームケーキに触れ、魅力に開眼。日本でもバタークリームのおいしさを伝えるチャンスを伺っていたのだ。北海道は酪農が盛んで、乳製品も豊富。フェルム ラ・テール美瑛本店の開業により長年の夢が叶う。
バタークリームに空気を含ませることで、 まろみをもたせている。
チャンスをものにしたバクサシェフは食感を追求する。「舌の上で転がして食べる硬いイメージを払拭させたかったんです。え?これがバタークリーム?と、びっくりするほどふわっとなめらかにしたかった。軽くするためにはバタークリームに空気を抱かせるのがベストです。そこにクリームチーズとマスカルポーネを加えて味に奥行きをもたらしました」。ただ、ここで探求は終わらない。
空気をしっかりと抱かせ、ふんわりとした 姿を実現したバターチーズクリーム。
「もっと、フェルム ラ・テール独自の味わいを出したい」。最後のひとひねりは試行錯誤が続いた。バクサシェフが作り出したいろんなパターンのバターチーズを社員一同で毎日テイスティングをするも、決め手に欠けていたと振り返る。そんな折、ドイツで学んだ製法をトライしてみることに。「向こうではショートニング等ではなく少しだけココナッツオイルを混ぜて軽さを出していました。当時、日本ではそこまで浸透していなかったので、一か八かの気持ちで取り入れてみました。そうしたら、みごとに味が決ったんです!」。試食したメンバーからは「おっ!」という声があがり、満場一致で賛同したそうだ。
クッキー生地はひと晩寝かせたものを厚さ4mmにして焼成。さっくり&ホロホロの食感が特徴。
ついに、理想のバターチーズクリームが完成。次はサンドするサブレの味を極めるターンがやってきた。コクのあるクリームとのバランスを考えて、サブレ生地に塩を混ぜるアイデアが浮かんだ。「ボリュームのあるバターチーズサンドを楽しんでいただくには、味のバリエーションが必要だと感じたんです。塩気を含むことで1個のサンドでもグラデーションが出ます」。アクセントという大役を担う調味料はオホーツクの塩を採用。海藻の旨みも凝縮されたパワフルな味わいだ。あまじょっぱいサブレに挟まれたバタークリームチーズ。アイテム自体はオーソドックスでも、一口含むと新しい味わいに出会える。コーヒーや紅茶はもちろんのこと赤ワインとも好相性なので、ゆったりとくつろぐ時間のお供にいかがだろうか。
北のごちそう バターチーズサンド ダブルチーズ(1個)389 円
ぎっしりと 詰まった純白のクリームに見惚れる。クリームチーズとマスカルポーネによる深みのある優しい甘さが特徴。口に含むとふわっと溶けていくような軽さで虜にしてきた。ホロホロ&サクサクの歯ごたえで魅了するサブレの生地は「美瑛の風」と名付けた< フェルム ラ・テール 美瑛>オリジナルブレンドの小麦粉を用いている。パティスリーの顔であり、バター“チーズ”クリームサンドという新機軸を打ち出した。冷蔵品ならではのしっとりとした食感も魅力の一つだ。
ダブルクリームサンド(3種入)1,307円
遠方への手土産に最適な常温タイプ。3枚のサブレに、ホワイトチョコレートに北海道産バターとクリームチーズパウダーを加えたものを2層もサンド。「プレーン」や「ショコラ」といった通年で楽しめるフレーバーに加えて、季節に合わせた限定味も揃う。
大地のプリン“ウ・オ・レ”(1本)411円
スプーンですくうたびに、とろっとなめらかな口溶けに感嘆。材料は濃厚&クリーミーでほんのり甘い美瑛産ジャージー牛乳、卵の黄身、オーガニックシュガー、バニラビーンズの4つ。シンプルだからこそ火の入れ方などパティシエの腕が問われる。プリンとクリームブリュレのいいとこどりをした一品。
北のごちそう バターチーズサンド(6個入)2,614円
6フレーバーを詰め合わせ。「ダブルチーズ」を筆頭にカカオ61%とチョコチップを混ぜた「生チョコとチョコチップ」。しゃりしゃりりんごのコンポートが詰まった「アカシア蜂蜜とりんご」、和テイストを楽しむ「抹茶と黒千石」、独特の風味がクセになる「ハスカップとホワイトチョコ」のて定番に加え、季節限定味も堪能できる。
Text:Mako Matsuoka
Photo:Yuya Wada