<三笠会館>昭和7年、銀座生まれ。洋食レストランの鶏の唐揚げ。

2024.9.13 UP

手掴みで思い切りかぶりつくのがちょうどいい、サクサク、ジューシーな食感。銀座の歴史あるレストラン<三笠会館>で昭和7年に誕生した「三笠会館 伝統の味 鶏の唐揚げ」は、東京の外食メニューとして初めて提供された鶏唐揚げだといわれている。

このページをシェアする

ph

食感豊かで香ばしい洋食レストランの唐揚げ。

銀座並木通りにある<三笠会館>といえば、ひとつのビルにフレンチやイタリアン、和食、中華、バーなど多様なレストランが入った銀座の老舗。その歴史は1925年、奈良の吉野出身の創業者が、歌舞伎座前で開いた小さなかき氷店から始まった。昭和初期の外食ブームの流れから、間もなく洋食レストランへと業態を変え、1932年には支店もオープン。しかしその支店が経営不振に陥り、料理人たちは店の名物的なメニューを考案する必要に駆られたという。「三笠会館 伝統の味 鶏の唐揚げ」は、そのときの試行錯誤から生まれた洋食風の鶏の唐揚げだ。一説によると、当時外食メニューとして鶏の唐揚げを初めて提供したレストランは<三笠会館>だといわれている。鶏肉と油、片栗粉というシンプルな材料は戦前・戦後の混乱の最中でも何とか調達できたことから、「銀座に来たら、三笠会館で鶏の唐揚げ」といわれるほどの人気メニューとして定着した。

 

戦後間もなく、現在の銀座並木通りに本店を移転。さらに1966年になると、地上9階、地下2階の洋・和・中総合レストランとして新築開店を果たした。以後の<三笠会館>といえば、フレンチ、イタリアンなどの多業態展開や、高度経済成長期の丸の内OLに好評を博した料理教室、レストランで買える洋風おせちの考案など、時代ごとに様々なチャレンジを繰り返して今に至っている。今回ご紹介する伊勢丹新宿店の<三笠会館>も、同店初の業態となるテイクアウト専門店として、2024年春にオープンしたばかりだ。

 

store

写真は1950年代ごろの外観。とんがり屋根に風見鶏が乗った洋館風の建物がおしゃれだった。

 

store

地上9階、地下2階の新築開店時に使用されていたメニューブック。各フロアの案内が書かれたページ。

 

store

創業者の谷善之丞氏は奈良県出身で、東京で一旗上げるべく身ひとつで上京した。<三笠会館>の食器に描かれている鹿は、氏が生まれ育った吉野の鹿にちなんでいる。

 

名物料理の「三笠会館 伝統の味 鶏の唐揚げ」は、味も製法も誕生時からほとんど変わっていないと、現総料理長の河原敏彦氏はいう。精選した国産鶏もも肉を使用するが、ポイントはあえて不揃いな形にカットして骨も残し、肉を丸めずにそのまま揚げる点だ。大ぶりサイズの唐揚げは、パリっとした皮の香ばしさや、骨付きのジューシーな部分など、味わいと食感に広がりが生まれる。下味は淡口醤油ベースのたれをさっと絡めるだけ。スパイスをしっかり効かせた洋食としての味付けだから、白飯にはもちろん、酒のつまみにも合う。

 

store

二代目総料理長を務める河原敏彦氏は、フランスのプロヴァンス地方で修業を積んだ。

 

store

骨付きもも肉は、食感豊かに揚がるよう切り込みの入れ方を工夫している。

 

store

淡口醤油ベースのたれを使用。味がしっかりしついているので、つけ込まずにさっと絡める。

 

store

片栗粉をまんべんなくまぶしたら下ごしらえは完了。

 

store

約180度の油で、こんがりとキツネ色になるまで揚げる。肉は小さく丸めずに、開いたままで投入するのがコツだ。

 

store

伝統の味 骨付き鶏の唐揚げ(5個入)1,501円

ひと口目はそのままでかぶりつきたい。レストランのメニューと同じようにごま塩とカラシが付属しており、同店の唐揚げならではの“味変”も楽しめる。

 

語りたくなる洋食を、テイクアウトでいただく。

唐揚げと同様に歴史ある一品として、「伝統の味 インド風チキンカレー」がある。もとは唐揚げに使用した鶏の、もも肉以外の部位を有効活用すべく生み出したメニューだった。現在でもその名残から骨付き鶏肉と砂肝が入っており、スパイシーなカレールーにコリコリとした砂肝の食感が効いて、なかなかに個性的だ。

store

伝統の味 インド風チキンカレー(1折)1,801円

インド風カレー特有の爽やかな辛味と、骨付き鶏肉の旨みが絶妙に溶け合う砂肝入りのカレー。レストランのメニューと同様に薬味のレーズン、ピクルス、フライドオニオンも添えている。

 

<三笠会館>におけるエポックメイキングな料理としては、本店内にあるフランス料理店<榛名>で提供されている、黒毛和牛のローストビーフもそのひとつだ。1966年にオープンした同店では、客の前で大きなローストビーフを切り分けるワゴンサービスが話題を集めた。そんな名物料理をお重スタイルで楽しめる「三笠会館のローストビーフ重」は、ちょっぴり非日常感を味わえるひと品といえるだろう。

store

精選したロース肉をじっくり熟成してローストし、肉の旨みを封じ込めた<榛名>のローストビーフ。料理長が客前で切り分けるワゴンサービスは当時大変珍しいものだった。

 

store

三笠会館のローストビーフ重(1折)2,301円

黒毛和牛を使用。スパイスとハーブを効かせて焼き上げた、しっとりとした食感のローストビーフをご飯に乗せて。醤油ベースのオリジナルソースが白飯によく合う。

 

また、洋食の定番メニューの「ハンバーグ」や、80年代に起きたイタメシ・ブームの先駆け的レストランで誕生したオリジナルの「ティラミス」など、単品料理からデザートまでを幅広くラインナップする。歴史あるレストランの伝統的な料理を、デパ地下で気軽にテイクアウト。そんな特別な気分と一緒に、お楽しみいただきたい。

store

ハンバーグ(1個)951円

人気のデミグラスソースをたっぷりとかけたハンバーグは、1品買うだけで夕食のメインになる。写真の単品料理のほかに、ライス付きの弁当タイプもある。

 

store

三笠会館のティラミス(1個)751円

1986年に誕生。イタリア製のサヴォイアルディ、濃厚なマスカルポーネとエスプレッソの苦味を染み込ませた、しっとりとした生地の食感が印象的。

 

Text : Mako Kobori

Photo : Yuya Wada

RECOMMEND

店舗・オンライン情報

「家族で愉しむ集いの食」レストランメニュー

「家族で愉しむ集いの食」レストランメニュー

卵やうさぎのモチーフがキュート。春の訪れを祝う、2025年のイースターのスイーツ

卵やうさぎのモチーフがキュート。春の訪れを祝う、2025年のイースターのスイーツ

伊勢丹美味歳時記 〜4月 ~

伊勢丹美味歳時記 〜4月 ~

CATEGORY

カテゴリー