<カフェ プルニエ パリ>フレッシュキャビアが日本の食卓にある風景を。

2024.9.13 UP

魚卵好きな日本人にとっても、ちょっと敷居が高く、レストランで背筋を伸ばして食べたくなる食材、キャビア。ロシアの宮廷で愛された美食はパリに根づき、パリ経由で日本にやってきた。

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パリのシーフードレストランからキャビア専門店へ。

世界の三大珍味の一つ、キャビア。フォアグラ、トリュフと並んでヨーロッパの食文化を輝かせてきた食材だ。キャビアは長寿として知られる古代魚、チョウザメの卵を採取して塩漬けしたもので、品種や熟成により、その食感やアロマにさらに磨きがかけられる。

 

チョウザメはおよそ2億年前、ジュラ期初期より存在し、今も大きく形質は変わらないという。海から川へ遡上する性質があり、ヴォルガ川の三角州あたりが優れた産地として知られてきた。意外なことに、昔は卵よりも身の方が珍重されていたという。チョウザメの漁場の支配権を巡って、帝政ロシアと蒙古帝国のチンギスハンが激しく争った歴史もあるそうだ。ロシア皇帝は皇帝直轄でその漁場を守り、キャビアの評判はロシアの貴族社会を通じてヨーロッパに知られるようになった。当然パリにも。

 

1872年、アルフレッド・プルニエはパリで小さなシーフードレストランを開いた。これが後の<プルニエ>である。レストラン経営だけではなく、牡蠣の養殖やデリバリーで成功するなど、プルニエ家は創始者から商才を発揮してきた。息子のエミール・プルニエは、1921年にパリで初めてフレッシュキャビアの蓄養に成功し、自社レストランで提供した。

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シベリアチョウザメのバエリ種は、採卵までに6〜8年かかる。さらに大型のオシュトラ種は10〜12年、ベルーガ種に至っては、おおよそ20年かけて育てた後に採卵する。

 

エミール・プルニエは、フランス国内でチョウザメの生息場を見出し、蓄養や加工を行い、低塩のキャビアの製品化を実現した。これが評判となり同社はキャビア専門店の道を歩む。20世紀半ばになると、ピエール・ベルジュがオーナーとなり、イヴ・サンローランなどパリの社交界との関係性も深め、国際的に知られるようになった。

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<キャビアハウス&プルニエ>本店は、パリのヴィクトルユーゴー通りにある歴史的建造物。パリで活躍するファッションデザイナーやセレブリティたちが集う場所としても知られる。

現在は世界に約40拠点があり、国際空港のシーフードバーの運営や、世界の主要都市にレストランやサンドイッチバーなど様々な業態を展開している。

 

日本初のショップは2014年、伊勢丹新宿店のフレッシュマーケット内だ。シーフードバーと物販ショップという形で登場したが、その4年後に同じく伊勢丹新宿店内で輸入食材などを主に扱う「プラ ド エピスリー」に場所を移し、イートインのカウンターと物販を合わせて展開している。

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伊勢丹新宿店の<カフェ プルニエ パリ>。キャビアをカジュアルに楽しむことができるパリのカフェスタイル。カウンターで10席ある。併設される物販スペースでは、同社の代表的な商品が揃う。

 

キャビアの食文化を食体験とともに伝えるのが同社のやり方で、伊勢丹新宿店店舗でも、その姿勢は貫かれている。多くの日本人にとってキャビアはたまにレストランで食べるもので、家庭で食べるのは馴染みがない。そんなキャビアを日本の食卓により取り入れやすくしてもらおうと、カフェで供される料理はどれもシンプルでカジュアルだ。有料試食という位置づけのため、レストランで食すのよりは敷居が低い。

 

イートインでは、定番のキャビアパスタやピエール・エルメとのコラボで生まれたオリジナルのマカロン「キャビアマカロン」も人気だ。マカロン生地はキャビアの色に合わせて竹炭が練り込まれている。そんななかで一つ紹介するとしたら「プルニエズ シークレット」だろうか。

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プルミエズ シークレット (イートインメニュー) 3,300円

パリ本店で生まれた裏メニュー。実はクリスチャン・ディオールのためにだけ出していたシークレットメニューで、ポーチドエッグをジュレで包み上にたっぷりキャビアをのせる。後に「プルニエズ シークレット」の名前で正式にオンメニューされた。

 

長年愛され、魅了し続ける、他にない<プルニエ>のフレッシュキャビア

今やキャビアを扱うブランドは国内外に増え、日本でも国産キャビアに挑戦する自治体が増えている。そんな中<プルニエ>の強みはどこにあるのか。同社のスーパーバイザーを務める水谷 類さんは「やはり長年積み上げてきたノウハウにあると思います」と語る。まずはチョウザメの蓄養環境だ。同社のそれは、循環式でミネラル豊富な水質を保ち、貴重なチョウザメを資源として持続することを公言している。チョウザメは絶滅危惧種で、ワシントン条約ではキャビアも含めた輸出制限にルールが設けられている。そのワシントン条約の制定にも同社は資源保護のために協力してきた。

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ボルドー近郊にあるプルニエの蓄養ファーム。大自然に囲まれ、チョウザメはミネラル豊富な水を循環させながら健全に育てられている。

チョウザメは繊細な生き物で、生育環境を整えたり、採卵時期の見極めも重要だ。品種によってその適期は異なるが、最も一般的なバエリ種で採卵までに6〜8年を要する。採卵は熟練職人による仕事で、採卵前には少量取り出した卵の状態を見て適切な時期を見極める。そして加工にも同社のノウハウがある。

 

控えめな塩の他に保存料などを使用することなく、冷蔵保存のまま輸送して品質管理を行う。冷凍しないことによりキャビアのフレッシュな食感やアロマが保たれる。老舗ブランドであるが故、品質管理や評判はキャビア全体の評判にも繋がる。結果、「贈答などでも安全性、信頼性のある認知度の高い当社ブランドが選ばれる」と水谷さんは話す。

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プルニエキャビア トラディション(フランス製/30g)12,420円

シベリアチョウザメ、バエリ種の卵で、トラディションは同社の代表商品。品質の高いバエリ種は自然に輝く黒色で、へーゼルナッツのような風味がある。

キャビアと合わせて楽しみたい銘品

食事文化としてキャビアを定着させていくため<キャビアハウス&プルニエ>ではキャビアと一緒に楽しめる食材やドリンクにも力を入れており、これらもまたオリジナリティに溢れている。

 

例えばキャビアと並んで評判の高いバリックサーモンは、その昔ロシア皇帝に献上されていたと言われるレシピで、背側の脂の少ない部分を柵形にトリミングする。サーモンというと薄切りが一般的でヴィネガーでマリネされるものが多いが、これは脂の多い腹側の話。背側は牛肉でいうサーロインのように、厚切りで真価を発揮する。舌で押すとネットリとした身が絡み、薪でほのかに付けられた燻し香も控えめで極めて上品だ。

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バリックサーモン ツァーニコライ For Two(スイス製 320g)27,108円

ノルウェーのフィヨルドで3年かけて飼育したアトランティックサーモンをスイスで加工。ねっとりとした身質でやさしい燻製の味わい。上にキャビアを乗せて食べるのも定番。

キャビアとサーモンに合わせるワインも、同社オリジナルのセパージュのシャンパーニュがある。シーフード全般、特にキャビアとの相性を考えて造られたもので、ドライすぎずにキャビアのアロマを活かすよう工夫されている。

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シャンパーニュ ブリュット(イタリア製/1本)8,690円

赤品種のピノムニエを20%ほど使用し、ただドライなのではなくふくよかさがありキャビアの風味とよく合う。醸造元のロンバール社とは二人三脚で長年の付き合い。

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フィッシュスープ(フランス製/480g)3,132円

パリの本店レストランが監修する魚介のスープ。さまざまな魚種の味が溶け込み、温めるだけでそのまま食べられる。

 

<カフェ プルニエ パリ>のカウンターでは、キャビアのメニュー一品と一杯のシャンパーニュが、自分への素敵なご褒美になる。贈り物で貰ったら間違いなく嬉しいし、家に人を招くときに供すればサプライズにもなる。<キャビアハウス&プルニエ>が長年かけて構築してきたキャビアという特別な食文化は、味わい以上に贅沢な時間や人との関係性をもたらしてくれるものだ。

 

Text : Kaori Shibata

Photo : Takao Ota , Yuya Wada

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