愛らしいパッケージと魅惑の歯ごたえ。「ミルフィユ」が生まれる場所へ。

2023.9.15 UP

サクサク、ホロホロとした儚(はかな)い食感に心奪われる<フランセ>の「ミルフィユ」。今回、初めて製造工場の密着取材が実現。魅惑の口どけが生まれる瞬間を追った。

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創業60年目に歩み出した、新たな一歩。

1957年に渋谷で創業した<フランセ>は、1997年からは<横濱フランセ>と改名し、「ミルフィユ」や「ハニーシトロン」(レモンケーキ)が横浜銘菓として広く知られてきた。ブランドイメージやメイン商品を大切に受け継ぎながら、創業60年目の節目である2017年に大規模なリブランディングに成功。代表作の「ミルフィユ」はレシピをブラッシュアップし、形も女性や子供も食べやすい2㎝×6.5㎝のスリムな形状にチェンジし、スタイリッシュな印象に進化を遂げた。

 

今回、<フランセ>史上でも希少な工場密着取材を実施。魅惑の“サクサク”食感誕生の現場に向かった。

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工場を案内してくださった株式会社シュクレイ生産部マネージャー・吉田真之さん。1998年に株式会社フランセに入社し、以来25年間、お菓子製造の道ひと筋。現在は横浜工場のマネージャーとして全商品を見届ける、いわば<フランセ>のお菓子の語り部。

三段の層に込めた“サクサク”の技術。  

<フランセ>の代名詞的商品「ミルフィユ」は、フルーツや木の実の風味が広がるフレーバーと、口の中でほどける軽やかなパイ生地が特徴。中でもクリームをサンドしてもなお軽快な食感を保つパイが大きなこだわりだ。その食感のカギはパイ生地を焼き上げる工程にあった。まずは、清潔かつ整然と整えられた工場で、熟練の職人が担当するという生地室へ。

 

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厳密な温度と湿度管理の中で一昼夜寝かし、加工を待つパイシート。

 

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薄く伸ばしていく段階で出る余剰部分は切り取って再び生地の中へ。この“2番生地”を入れることにも大きな意味が。

 

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専用のパイローラーで生地を伸ばす工程。生地に振る小麦粉(打ち粉)の加減も重要だ。

 

ニュージーランドの良質なバターを配合したパイ生地を、専用のパイローラーに打ち粉をしながら何度も通し、薄く薄く伸ばしていく。「打ち粉は多すぎてもいけませんし、少なすぎると生地がベタついて途中で切れてしまう。この塩梅を判断するのも熟練職人の仕事です」と、生産部マネージャーの吉田真之さん。吉田さんは入社以来25年間、<フランセ>の全商品を世に送り出してきた、誰よりも現場を知る人物だ。

 

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パイローラーで伸ばしては重ね…を繰り返し、最終的に約3mmほどの薄さに!

 

「伸ばしていく段階で出る生地の余剰部分は“2番生地”と呼び、再びパイシートに重ねて使います。素材を余さず使い、フードロスをなるべく出さないためはもちろんですが、実はこの2番生地を重ねることで生地の状態がより安定するんです」(吉田さん)

 

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伸ばし終え、ガス抜きの空気穴を開けた生地。この穴の数や間隔も、真っ直ぐ焼き上がるように試行錯誤して配置されたもの。

 

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見事に同じ高さに焼き上げられたパイ生地。表面に重しを置き、湿気による歪みを防止。

 

幾重にも重ねられ、伸ばした生地は最終的に約3mmの薄さに。生地にガス抜き用の空気穴を開け、15分ほど寝かせた後、いよいよ焼きの工程へ。ドイツ製の温風オーブン3台をフル稼働し、245℃で25分間かけて焼成。1日で2,700〜3,000枚ほど焼き上げるという。

 

焼き上がった生地の上には重しを置き、湿気などで生じる生地の歪みや反りを防ぐ。本来、生地によって膨れ方も厚みも異なるはずのパイ生地が、真っ直ぐ同じ高さで揃っていることこそ、<フランセ>の研究と技術の証だ。

 

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「いちご」のクリームをパイ生地に挟む作業。約450kgという、デジポッター(クリーム充填機)のいちごクリームが壮観! 

 

次にクリームをサンドする工程では、3枚のパイに2層のクリームを打ち、冷蔵室で一晩寝かせる。

「冷やすことでクリームとパイ生地がしっかりと密着します。パイのサクサク感が損なわれないよう、クリームも水分を極力少なくした配合をしているんですよ」と吉田さん。仕上げにチョコレートをコーティングし、ツヤツヤと光り輝くミルフィユは、目にも止まらぬ速さで一つ一つ包まれ、箱詰めされていく。

 

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3層を重ねたら、重しをして均一にプレス。クリームが固まるまで冷やしながら一晩寝かせる。

 

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「れもん」の製造風景。3層に重ね、一晩寝かしたものをスライサーでカット。1枚のパイ生地から120個のミルフィユが誕生する。

 

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コーティングされた「れもん」の様子。専用の型にはめて大きさの均等を確認しながら、包装用に4個ずつ並べていく。

 

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「ピスタチオ」「ジャンドゥーヤ」の表面のチョコレートは粘土が高いため、ムラのないよう風を吹き付けながらコーティング。波打った独特の模様はこの工程から生まれる。

 

さて、ミルフィユの工程も最終段階へ。最後にパッケージの中央にシールを貼っていよいよ出荷となる。「ミルフィユは生地を焼きクリームを挟んでカットし、包装するまで2日。うちで一番時間がかかるお菓子です。暑い季節は冷蔵庫で冷やしても美味しいですよ。ロゴを印刷せず、中央にシールを貼るひと手間を加えているのも、<フランセ>のブランドへの思いといいますか、こだわりですね」(吉田さん)

 

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個包装のレーン。裸んぼのミルフィユが自動包装機で一瞬にして包まれ、箱に充填されていく。目にも止まらぬ速さ!

 

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フルーツや木の実が描かれた色鮮やかな包装紙で包まれ、最後に箱の中央にブランドロゴのシールを添付して完成。

 

2017年の大規模なリブランディングを機に、パッケージデザインも一新された。<横濱フランセ>時代を象徴した洋画家・東郷青児氏のデザインから、北澤平祐氏のイラストに。色鮮やかで愛らしく、どこか懐かしいパッケージが、新たなブランドの世界観を表現し、老若男女の心を捉えている。

 

ホロホロと軽やかなパイの歯ごたえ、食べやすいサイズ感、そして胸躍るパッケージデザイン。そうした小さなトキメキが共有できる「ミルフィユ」は、気負わず誰にでもお持ちできる、贈り物の定番なのだ。

 

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ブランドのアイコンとなっているカラフルで愛らしいショップバッグも、パッケージと同じく北澤平祐氏にイラストを依頼。フルーツと木の実、そして向かい合う真っ赤なワンピース姿の2人の女の子でブランドイメージを表現。

 

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果実をたのしむミルフィユ(12個)1,814円

人気NO.1を誇る<フランセ>の看板商品。代表的フレーバーの「いちご」「れもん」「ピスタチオ」、そしてアーモンドとヘーゼルナッツのクリームを挟んだ「ジャンドゥーヤ」の4種類が味わえる欲張りな詰め合わせ。サクサク・ホロホロのパイの食感とともに、果実の甘酸っぱさと木の実の香ばしさが思う存分楽しめる。

 

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フランセビスキュイ(9枚入)972円

薄く焼き上げたサクサクのストロベリークッキーでカマンベールチョコレートを挟んだサンドビスケット。イチゴの甘酸っぱさとカマンベールのほのかな塩みが軽やかなハーモニーを織りなす。北澤平祐氏による、モダンガールがビスキュイを頬張るイラストもレトロでロマンチック。

 

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レモンケーキ(8個入)2,160円

<横濱フランセ>時代に「ハニーシトロン」の名で愛されたレモンケーキを今に受け継ぐ。レモンピールと蜂蜜を加えたスポンジ生地をレモン風味のホワイトチョコレートでコーティング。レモンの酸味とピールのほのかな苦味が爽やかな名作。

 

 

Text : Yoko Fujimori

Photo : Mariko Tosa , Yuya Wada

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