<トップス> 1964年誕生、世代を超えて愛されるチョコレートケーキ。

2022.10.31 UP

優しい甘さのチョコレートクリームと軽やかなアクセントを与えるくるみ、ふんわりとしたスポンジ。日本人の好みに寄り添う、シンプルでいて味わい深いトップスのケーキはまもなく誕生して60年を迎える。変わらぬ美味しさの秘密とは。

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アメリカンレストランから生まれた人気デザート

アジアで初めてのオリンピックが東京で開催された1964年、東京・赤坂の旧TBS会館の地下1階にアメリカンレストランの<トップス>が開業した。ハンバーグなどの洋食をカウンター式のオープンキッチンで提供するという当時としては斬新なスタイルで、日本人はもちろん、赤坂に多くいた外国人にも大人気のレストランとなった。そこでデザートとして供されたのがチョコレートクリームたっぷりのケーキ。これを目当てに訪れるお客様も多く、また、ケーキだけを購入したいという声が高まったのを受けて、1975年に専用の工場を竣工、同年に百貨店での販売を開始した。

 

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赤坂に誕生したアメリカンレストラン<トップス>。コの字のオープンカウンターが三つ並び、カウンターの中でコックが調理するという画期的なスタイルだった。

創業者は日本料理店経営で成功をおさめた人物だったが、自由な発想と鋭い味覚の持ち主で、海外で食べた味を日本人好みにアレンジすることで多くの人に新しい美味しさを届けることを信条としていた。チョコレートケーキをトップスのデザートとして提供するに当たっては、旅先で得たヒントを元に納得のいく味を完成させるために、数ヶ月をかけて試作を重ねたという。

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印象的なデコレーションは創業時から。ブドウの蔦を描き、その中にブドウと葉を描く。

シート状に焼き上げたスポンジ3枚に、くるみを混ぜ込んだチョコレートクリームをサンドしてカットし、全体にもチョコレートクリームをたっぷり。豊穣の象徴とされるブドウをモチーフに採用したのも創業者のアイディアだ。レストランのデザートとして作り始めた当時は正方形で、それをカットしてお客さまにお出ししていたが、クリームたっぷりの“角”を所望する方が多かったというエピソードも。テイクアウト販売を開始して以降はサイズを小さくして買いやすいように改良を重ね、現在のような細長い形に行き着いた。

 

百貨店でも冷蔵ケースが一般的でない70年代は、ケーキのクリームといえばバタークリームが主流だったが、トップスのチョコレートケーキは当初から生クリームを使用し、フレッシュな美味しさを重視したというのも画期的なことだった。その珍しいケーキの評判は甘いもの好きの女性はもとより、男性の間でも広まり、甘いものは苦手でもこのチョコレートケーキは好きという男性も少なくなかったという。さらに、会社帰りに家族へのお土産として買って帰るということも。

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チョコレートケーキ R(1個/180×65×52mm)2,160円 

サイズは小さいものから順にS、M、R、L、Gの5タイプ。Gは創業当時のオリジナルサイズで現在は受注製造だ。

誕生以来、ほとんどレシピを変えていない。60年近い歴史の中では幾度か改良を試みたが、その度にやはりオリジナルが一番であるという結論に落ち着いた。ちなみに、ロゴデザインも創業以来変わらない。高い完成度ゆえ変える必要がないのだ。

 

チョコレートケーキのベースとなるスポンジは卵、粉、砂糖、蜂蜜のみで油脂を含まないが、その淡白さがクリームのコクと絶妙のバランスを生み出す。また、クリームの水分をスポンジが受けとめて程よいしっとり感を帯び、全体をまとめる役割をも担っている。チョコレートクリームは、チョコレートと生クリームでガナッシュを仕立てるのが一般的だが、そこにココアパウダーも加えるところがポイント。ココアパウダーはチョコレートと違い、製造工程で酸味を除去しているので角が取れ、まろやかな味わいになる。それが優しい風味を生み、懐かしさをも感じさせる理由かもしれない。

 

創業当時から守っているのは、くるみの選別とデコレーションは人の手で行うこと。くるみは決まったサイズを逸脱したものや殻などの不純物を目視で取り除く。そしてチョコレートクリームも一台一台手作業でナッペし、デコレーションする。二つとして同じ顔のチョコレートケーキは存在しない。

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たっぷりとかけるチョコレートクリームのテクスチャーはかなり緩め。クリームの厚みが均一になるようにナイフでならしながら余分を取り除く。

 

 

根強い人気のチーズケーキとチョコレートケーキの進化形

チョコレートケーキ誕生の翌年にデビューしたのがチーズケーキだ。レアチーズケーキというものがまだ知られていなかった時代に、フレッシュクリームチーズそのものといった濃厚なケーキの登場は衝撃的だった。チョコレートケーキ同様、これもまた創業者指揮のもと、幾度もの試作を繰り返してレシピが完成。クッキー生地の上にクリームチーズ、その周囲をクリームで覆い、ブドウのデコレーションを施す。控えめな甘さ、爽やかな酸味が口当たり良く、大人好みの味として人気を博した。レモンティーと合わせて、また、ワインとも相性が良いというお客様からの声もあるという。

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チーズケーキ M(1個/160×60×38mm) 1,944円 

サイズは小さいものから順にS、M、レギュラーサイズ。レギュラーサイズは受注限定生産。

 

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クッキー生地の上にクリームチーズをのせ、さらに白いクリームで表面を覆う。白いクリームは、チョコレートケーキのクリームのベースクリームでもある。

 

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チョコレートケーキと同じブドウのモチーフをデコレーション。濃厚なクリームチーズと白いクリームのバランスが絶妙。

 

 

そして、最上より最上のおいしさを表現したいと生まれたのがモスト&モスト。2018年、伊勢丹限定販売でスタートした個包装のケーキだ。ココアスポンジの間にチョコレートガナッシュとくるみがサンドされた、名作チョコレートケーキのイメージに添いながらもより日持ちがし、しかもワンハンドで食べられるのが特徴。常温で楽しめるチョコレートケーキを目指して研究したが、やはり生でないと納得できるものはできないという結論に。モスト&モストは冷蔵保存だが、賞味期限は10日間と大幅にアップした。チョコレートケーキとは違い、ココアスポンジを採用することで全体的なコクが増し、満足度の高い仕上がりになっている。冷蔵庫から出してしばらく置き、ガナッシュが少し柔らかくなった頃が美味しく味わうベストタイミングだ。

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Most and Most chocolate sand cake(1個)357円

 

 

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誕生50周年記念プレゼント企画に寄せられたお手紙には、家族ぐるみで長い間親しんでいるという内容の手紙がとても多かったという。

 

 

家族団欒の中心にトップスのチョコレートケーキがある、そんな思い出を持つ方も多いだろう。昔を懐かしみながら親子で、さらにはその子も交えてお茶の時間に楽しむ。世代を超えて愛されるケーキである。

 

 

撮影・岩本慶三 

文・池田愛美

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