“ホクホク系”サツマイモでおかずもおやつも作ろう! ―樋口直哉さんの『料理のツボ』―  

2022.11.27 UP

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このところ、さつまいもが人気です。日本でも専門店がオープンする他、主にアジア圏への輸出も伸びている作物の一つでもあります。日本の家庭では手軽に食べられる干し芋やスーパーなどでも買えるようになった焼き芋が一般的かもしれませんが、家でかんたんに料理できるので自分で作らない手はありません。

 

まず大切なのは、品種選びです。

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さつまいもを料理する時の重要なポイントは「品種選び」です。さつまいもは大きく「粉質」と「粘質」の2種類があります。季節替わりで色々な品種が売られていると思いますが、まず憶えておきたい品種は『◯◯金時&ベニアズマ』と『安納芋&ベニハルカ&シルクスイート』です。前者は粉質で、昔ながらのホクホクしたさつまいも。天ぷらやポテトサラダに向いています。後者はねっとりとした甘みが特徴で、焼き芋に最適な品種です。好みに応じて選ぶといいでしょう。今日は料理とおやつの2品をご紹介します。

 

まず、ご紹介するのは「さつまいもの揚げ出し」。さつまいもはホクホクしすぎて、喉に詰まる感じがしてちょっと苦手……という人にもオススメできる料理です。

 

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今回はなると金時を使いました。なると金時は徳島を代表する品種で、粉質の芋。さっぱりとした甘みで、料理に使いやすいさつまいもです。

 

さつまいもの揚げ出し

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〈材料〉 2人分

さつまいも 1本

片栗粉   大さじ2

小麦粉   大さじ2

大根おろし 適量

水     100ml

しょう油  大さじ1+½

みりん   大さじ1+½

鰹節    1パック(4〜5g)

 

〈作り方〉

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まずは、うまだしと言われるつゆを作ります。出汁5:しょう油1:みりん1というのは基本的な配合で、僕はそばだしと呼んでいます。

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茶こしなどで鰹節を取り除きます。できたてのめんつゆは出汁の風味が格別です。提供するまで時間がある場合は冷やしておくといいでしょう。

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さて、さつまいもの処理に入ります。さつまいもは2.5cm幅に切り、皮を厚めに剥きます。さつまいもを切ると、皮のすぐ下から乳白色の粘液が出てきますが、これにはクロロゲン酸などのポリフェノールが含まれているので、空気に触れていると色が黒くなったり、食べるとかすかな渋みがあります。そのため、皮を厚めに剥くのがセオリーなのです。

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ただ、さつまいもの風味は皮にあるのも事実。そこで今回は皮を剥いたさつまいもと皮ごとのさつまいもを準備しました。ボウルに入れ、水大さじ1(分量外)を加えたらラップをかけ、600wの電子レンジで2分30秒加熱します。そのまま揚げるよりもさつまいものデンプンが水分を含むので、ぱさつかずに仕上がります。

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揚げる衣には2種類の粉を使います。片栗粉だけだとカリッと揚がるのですが出汁をかけてから時間が経つと水分を吸って剥がれたりします。逆に小麦粉だけだとカリッと感は弱いですが、出汁をかけても形を保ってくれます。両方をあわせたあわせ粉はいわばいいとこどりです。

 

このあたりでフライパンに揚げ用のサラダ油も準備しましょう。1cmほどの高さまであれば十分です。

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粉は薄くまぶしましょう。粉を厚くまぶすと衣が剥がれる原因になります。

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180℃の油で表面がカリッとなるまで揚げましょう。

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カリッと揚がったことが箸でつかんでもわかります。

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大根おろしを添え、うまだしをかけます。うまだしは温めてからかけたほうがいいでしょう。

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うまだしをかけ、大根おろしを添えることで水分が補われるので、口に入れた時の印象がしっとりします。この料理には甘みの強い粘質の芋ではなく、さっぱりとした粉質の芋がおすすめ。さつまいもの性質を見極めることが料理を成功させる近道なのです。

 

 

次はおやつ。定番の大学芋をご紹介します。大学芋は関西風のカリッとした飴がけスタイルと蜜を絡める関東風がありますが、このレシピは後者。関東風は蜜が固まってしまったり……という失敗をよく聞きますが、それを避けるための秘密兵器が「メープルシロップ」です。甘みの強い蜜を絡めるのでやはり◯◯金時のような粉質のさつまいもが向いています。

 

大学芋

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〈材料〉

さつまいも  1本

メープルシロップ 100ml

うすくち醤油   小さじ1

黒ごま      適量

 

〈作り方〉

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さつまいもは5cm長さに切ってから、1cmの棒状に切ります。

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水にさらして表面のデンプンを流します。

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その後、かぶるくらいの水を加えて、中火にかけます。沸いてきたら弱火に落として8分間茹でます。最初に茹でることでやはりさつまいもの水分を補い、仕上がりがしっとりします。

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ザルなどにあげて10分ほど冷まします。この工程で表面の水分が蒸発し、その後の揚げる工程がかんたんになります。

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フライパンに油を注ぎ、さつまいもを入れてから、中火にかけます。

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泡立ってきたら弱火に落とし、さらに揚げます。冷たい状態から揚げることで、表面の水分を徐々に抜き、カリッとした食感を出します。茶色く色づき、箸で触ってしっかりとした食感になったらザルなどにあげて油を切ります。

 

今回のように小さいフライパンで何回かに分けてさつまいもを揚げる場合、火を止めた状態のフライパンに次のさつまいもを入れれば大丈夫です。さつまいもが入ると油の温度が下がるので結局は冷たい油から揚げるのとほとんど同じ状態になります。

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小鍋にメープルシロップとしょう油を入れて、火にかけます。

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スプーンでかき混ぜてうっすらと跡が残るくらいまで煮詰めます。「煮詰めすぎ」には注意してください。煮詰めすぎるよりも煮詰めすぎないくらいのほうがリスクが少ないのでとろみがついたくらいで火を止めましょう。

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揚げたさつまいもをざっくりと絡めれば出来上がりです。仕上げに黒ごまを少し振りました。メープルシロップはなにもしていない状態でとろみがついているので従来の砂糖と水を煮詰めるレシピよりもかんたんに、しかもおいしくつくることができます。しょう油のかすかな塩っぱさが大学芋らしさ。おやつにつまむと止まらなくなるおいしさです。

 

さつまいもは常温、または新聞紙で包んでから野菜室で保存します。芽が出ることがありますが、手でポキポキ折ってしまえば問題なく食べられます。日持ちする野菜なので気軽に挑戦してください。

 

 

 

Text & Photo : Naoya Higuchi

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