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21世紀式アク抜き!で楽々タケノコ料理。 ―樋口直哉さんの『料理のツボ』―

2023.04.08 UP

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シーズンに一度は挑戦!と思っていると店頭から姿を消してしまうタケノコ。春は短いのです。皮付きのタケノコは敷居が高い感じがしてしまいますが、樋口さんの“21世紀式アク抜き”をマスターすれば大丈夫ですよ!

21世紀式タケノコのアク抜き

春の味覚、タケノコ。便利な水煮が年中売られていますが、生のタケノコを自分で茹でるとたまらないおいしさです。

 

タケノコ料理のポイントは「アク抜き」です。よく「アクってなんですか?」と質問されますが、肉や魚などの動物性食材の「アク」と野菜のそれは異なり、ホモゲンチジン酸やシュウ酸などの「エグみ」成分や褐変の原因であるポリフェノールを指します。

 

最近の野菜は品種改良が進んでいることもあり、ほとんどエグみは感じませんが、昔ながらの食材であるタケノコは別。よほど鮮度のいいもの以外は、アクを抜く必要があります。

 

一方「アク」はその「野菜らしさ」でもあります。例えばほうれん草を茹でてから一昼夜水にさらし、アクを取り去るとなんの青菜かわからない味になります。ごぼうの変色を避けるために水にさらすと、アクと一緒に香りも抜けてしまいます。

だから、市販の水煮たけのこは便利ではありますが、アクが完全に抜けているので「タケノコらしさ」が弱いのです。タケノコを自分で茹でるとおいしいのは「アクをどれくらい残すか」を調整できるから。ここに家でタケノコを料理する意味があります。

 

今回は京都産のタケノコを使いました。タケノコのアク抜きには様々なやり方がありますが、今回ご紹介するのはとてもかんたんな方法。タケノコは断面が白く、乾いてないものを選びましょう。穂先が黄色がかっているものはエグみが少なく、緑色になっているものは避けましょう。

 

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タケノコを買うと「米ぬか」がついてきますが(あるいはタケノコに並べられて売っていたりもします)今回は使いません。

 

米ぬかを使うメリットは「米ぬかの風味がつく」「タケノコから出たエグみが冷ましているあいだにタケノコに戻るのを防ぐ」の2点。前者の特性を生かして大量の米ぬかでタケノコを茹でる人もいますし、逆にタケノコ本来の香りが損なわれる、と米ぬかではなく、米の研ぎ汁で茹でる人もいます。アクが戻るのを防ぐには液体にコロイドが混じっていればいいので、米の研ぎ汁でも小麦粉でも同様の効果が期待できるのです。

 

逆に米ぬかを使用するデメリットは「吹きこぼれやすくなる」「鍋を洗うのが大変」の2点です。アク抜きの目的は「アクの主成分であるホモゲンチジン酸やシュウ酸を茹でることで流出させ、濃度を薄めること」です。どちらの成分も水溶性なので、たっぷりの水で茹でれば目的は達成できます。米ぬかを使うと吹きこぼれやすく、鍋を洗うのが大変ですし、米ぬかを含んだ水の排水も問題になってきます。昔ながらの方法もいいですが、現代の家庭では米ぬかを使わず、茹でたほうがいいでしょう。

 

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昔と異なる点がもうひとつ。通常、タケノコは皮付きで、丸ごと茹でるのですが、今回紹介する新方式では皮を剥き、半分に切ってから茹でます。「タケノコの皮には亜硫酸が含まれているので「皮付きのまま茹でたほうがはやくやわらかくなる」「酸化を抑制し、色を白く仕上げる効果がある」と言われていますが、比較するとそこまでの差は出ません。手で剥ける部分が硬く、食べられない部分です。

 

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先端部分を斜めに切り落とし、半分に切ります。鍋に入らなければ1/4に切っても大丈夫です。切ることでアクも抜けやすくなります。

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アクの成分を希釈する必要があるので、手持ちの鍋で一番、大きな鍋に水を張り、タケノコを茹でていきます。落し蓋をして、中火にかけましょう。

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沸騰したら弱火に落とし、20分茹でます。茹でているあいだ甘い香りが漂います。この香りもまたタケノコを自分で料理する楽しみです。

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硬い根元側の部分に竹串などを刺して、火の通り具合をたしかめます。完全にやわらかくするよりも歯ごたえがあったほうがおいしいので、刺されば大丈夫です。タケノコを茹でるのは面倒に思われがちですが、トウモロコシやじゃがいもを茹でるのとなんの違いもありません

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流水で少し冷まし、タケノコの端を切って味見をします。こうして茹でたタケノコはトウモロコシのような甘い香り。この段階でエグミを強く感じた場合はもう一度、水を張り、5分ほど煮て、もう一度味見をします。それでもエグミを感じる場合は好みの具合になるまで水にさらしてください。アクの感じ方は個人差があるので、食べて確認するしかありません。

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さて、先端部分のやわらかい皮は姫皮と呼び、おいしい部分です。手で剥がしておきましょう。

 

タケノコ料理その1)「タケノコの穂先」

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タケノコは根本にいくほど硬くなりますがアクが少なく、穂先はやわらかいですがアクが強い部位です。アクが強い=タケノコらしいということ。まず、串形に切った穂先を楽しみましょう。

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茹でたてのまだ温さが残る穂先は自分で茹でることでしか味わえないおいしさ。アクをマスキング(覆い隠す)効果があるマヨネーズにしょう油を少し垂らし、一味唐辛子を振ったものを添えます。同じように、フランスでは茹でたてのアーティチョークという野菜にマヨネーズをつけて食べますが、日本のタケノコもそれに負けないおいしさです。

 

 

タケノコ料理その2)「タケノコご飯」

 

さきほどとっておいた穂先側にある姫皮を使ってタケノコご飯をつくりましょう。一年に一度は食べたい炊き込みご飯です。

 

■タケノコご飯

〈材料〉
米    300g(2合)
出汁   380ml
薄口醤油 大さじ1
タケノコ姫皮 適量

 

〈作り方〉

米は洗って、ザルに開けて30分置きます。米の表面についた水分を吸水させる『限定吸水』という方法です。炊き込みご飯は塩やしょう油などの調味料が入るため、米が水分を吸収しづらいので、炊く前に吸水させておかないとふっくら炊けません。ここが最大のポイント。

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姫皮は千切りにします。

 

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鍋に吸水させた米、出汁380ml、薄口醤油大さじ1を注ぎ、上にタケノコの姫皮を散らします。出汁は昆布と鰹節を使って自分で準備してもいいですし、顆粒だしを水に溶いたものでもかまいません。どちらにせよ薄めにしたほうがさっぱりした味わいになります。

 

もしも家に「濃口醤油しかない」という場合は濃口醤油小さじ1,酒小さじ2、塩小さじ1/4で代用します。昔、東京の料理屋では薄口醤油の入手が難しく、こんな風に酒で薄めて工夫していました。ない場合は工夫で乗り切りましょう。

 

中火にかけて沸騰させたら弱火に落とし、8〜10分加熱し、火を止めて5分蒸らします。炊飯器を使う場合は同様に材料を内釜に入れ「早炊きモード」で炊きます。

 

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上手に炊けました。

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炊きあがったご飯はほぐし、タケノコを混ぜ込みましょう。タケノコご飯には油揚げを加えるレシピもありますが、おかずがある場合は材料を絞り込んだほうがすっきりした仕上がりになります。

 

タケノコ料理その3)「タケノコと牛肉の炒めもの」

 

タケノコ料理はわかめと一緒に煮る若竹煮などが定番ですが、淡白なので肉との相性もいいもの。すき焼きにいれるのもおいしいので、それをイメージした炒めものにしてみましょう。

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■タケノコと牛肉の炒めもの

〈材料〉

タケノコ  250g

塩     小さじ¼

サラダ油  大さじ1
牛切り落とし肉 120〜140g
しょう油    大さじ½
砂糖      大さじ½

大葉      10枚

 

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〈作り方〉

牛肉は大きければ半分に切り、しょう油と砂糖で和えて下味をつけておきます。砂糖で和えることで肉の保水力が上がり、仕上がりがやわらかくなります。

 

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タケノコは繊維を断ち切る=横に切ると食べやすく、繊維に沿って=縦に切ると歯ごたえが楽しめます。悩むところですが、今日はタケノコがやわらかかったので、縦に5mm厚に切ってみました。

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フライパンに油をひき、タケノコを並べ、中火にかけます。塩を振り、軽い焦げ目がつくまで加熱しましょう。

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焦げ目がついたら片側に寄せ、空いたスペースで牛肉を炒めます。

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肉に赤い部分がなくなれば出来上がり。

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火を止めて、大葉をちぎり入れ、余熱で火を通しましょう。

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大葉は省略することもできますし、木の芽を散らすとさらに贅沢です。タケノコ料理はじつは考え方次第ですごく手軽にできます。実験するつもりで、あたらしい方法を試してみてください。

 

Text & Photo : Naoya Higuchi

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