2024.3.1 UP
左から、伊勢丹新宿店惣菜バイヤー・都筑啓太、三笠会館総料理長・河原敏彦
日本で初めて「鶏の唐揚げ」が外食として提供されたのは、一説によると1932(昭和7)年のことだとされている。
「当時、唐揚げという料理はあったようですが、これをレストランで最初に出したのが当店の『伝統の味骨付き鶏の唐揚げ』らしい」
昭和30年代頃の外観。趣のある佇まいだ。
戦後間もなくのころ使われていたメニュー。
教えてくれたのは、銀座で1925(大正14)年に創業、間もなく1世紀を迎える<三笠会館>総料理長の河原敏彦さん。初代料理長のレシピを受け継ぐ「伝統の味 骨付き鶏の唐揚げ」には、いくつかの特徴がある。
<三笠会館>伝統の味 骨付き鶏の唐揚げ (5個入) 1,501円
「一般に唐揚げって、肉をギュッと丸めて均等な形に揚げますよね。当店では鶏の捌き方を工夫して、丸めずにそのまま揚げるんです。こうすると皮のパリパリ感や骨の周りのジューシーな味など、いろいろな食感を楽しんでいただけるから」。手づかみでかぶりつける唐揚げ。ごま塩とカラシを添えて“味変”を楽しむ食べ方も昔からのお約束だ。「漬けだれは淡口醤油ベース。塩分が濃いので漬け込まずにさっとあえます。店のルーツが西日本にあるためか、醤油は淡口です」
鶏のもも肉を使用。味付けは淡口醤油ベースのたれで。たれに漬け込まず、さっと絡ませるだけ。
最後に粉をまぶして下ごしらえは完了。
180度前後の油でキツネ色になるまで揚げる。このとき、肉を丸めずに開いたままで揚げるのが<三笠会館>ならではの調理法
フライヤーを覗き込む都筑
創業者・谷善之丞氏は奈良の吉野出身。東京でひと旗あげようと上京し、銀座・歌舞伎座前にかき氷店を出店した野心家だ。しかし数年後に経営危機に陥り、洋食主体のレストランへと業態をシフトしたところで生まれたのがこの唐揚げである。「銀座で唐揚げ」という外食トレンドの火付け役になり、以後もインドカレーやドリアといった洋食を次々ヒットさせた。「『伝統の味 インド風チキンカレー』は鶏の唐揚げで余ってしまう骨付き肉を有効利用しようと生まれたメニュー。歯応えのある砂肝も入っています」。それからは、現在の並木通りにある本店を洋・和・中の総合レストランとして多業態展開したり、クッキングスクールを開講して昭和の丸の内OLに人気を博すなど、時代に先駆けさまざまな挑戦をしてきた。レストラン店頭やオンラインで販売しているレトルト製品も、都内の自社工場で一から開発している。
<三笠会館>伝統の味 インド風チキンカレー (1折) 1,801円
「老舗が守り続けてきた洋食の価値を、お客さまにもお伝えしたい」。思い入れがあるのはやはり唐揚げの味。
「ただひとつ課題としてあったのは、この味をどうやって会社の外側で売っていくかでした」。約100年にわたってこだわってきたのは、レストランでいただく洋食の味。その品質をできるだけ再現した弁当・惣菜の常設店出店は、ある意味最も大きなハードルだったのかもしれない。「その挑戦の結果が、3月より伊勢丹新宿店に登場する初の洋食惣菜店です。今後は伝統ある〈三笠会館〉の名をまだ知らないお客さまにも、この唐揚げや洋食の味をお伝えする場が生まれます。満を持しての出店だからこそ、期待値は高いです」と話すのは、バイヤーの都筑啓太。最初のラインナップは、弁当と惣菜を合わせて約15種の商品。唐揚げ弁当をはじめ、名物のローストビーフが入った惣菜の詰め合わせや、人気のティラミスといったデザートまで用意している。出店にあたっては、これまで期間限定で出店した百貨店の催事などで、少しずつノウハウを蓄積してきた。
鵠沼店(すでに閉店)で、当時珍しかった“洋食おせち”が生まれた。現在はおせち製造の総指揮も務める総料理長。
スパイシーなインドカレーは骨付き肉と砂肝の食感が評判。供する直前に小鍋に移し温める。
レストランでは鹿が描かれた皿とカレーポットで提供。薬味はレーズン、ピクルスを添える。
創業者の出身地、奈良の三笠山で飛び跳ねる鹿を描いた皿は、美濃の歴史ある幸兵衛窯の五代目が半世紀以上前に手がけた作品。
館内に展示されている銀食器は、英国のアンティークをコレクションしているもの。
「洋食は揚げ物やソース、薬味等の付け合わせが多いので、容器にも工夫が必要。作業工程も多いので、味を維持しながら満足のいく形に持っていくには、やはりそれなりの時間が必要でした」と河原さん。店の厨房を離れ、都内自社工場で工場長をした経験もある彼にとって、このプロジェクトはいっそう思い入れが深いようだ。「当時僕はレトルトや冷凍の技術に興味を持っていて、上司からは『お前はコックらしくないコックだ』とよく言われました(笑)。ただそれも、〈三笠会館〉の味をこれから先の時代も守るためにトライしてきたこと。ご自宅で唐揚げを召しあがる際は、トースターなどでカリッと温めて、店の味を楽しんでいただきたいです」。
写真 太田隆生 取材・文 小堀真子
商品一覧
三笠会館のハンバーグ弁当 (1折)1,651円 |
三笠会館 伝統の味 インド風チキンカレー
(1折)1,801円
三笠会館のローストビーフ重
(1折)2,301円
三笠会館弁当
(1折)2,451円
お好み西洋釜飯 海老ドリア
(1個)1,101円
お好み西洋釜飯 チキンドリア
(1個)1,101円
サンドイッチ弁当
(1折)1,451円
三笠会館 伝統の味 骨付き鶏の唐揚げ(5個入)
(1パック)1,501円
三笠会館 伝統の味 骨付き鶏の唐揚げ(3個入)
(1パック)980円
蟹クリームコロッケ(2個入)
(1パック)1,151円
メンチカツ
(1個)700円
三笠会館ボックス
(1折)2,250円
ハンバーグ
(1個)951円
トマトのキッシュ
(1個)951円
ベーコンとほうれん草のキッシュ
(1個)951円
サーモンのキッシュ
(1個)951円
キノコのキッシュ
(1個)951円
ファルシ アソート
(1パック)801円
三笠会館のプリン
(1個)651円
三笠会館のティラミス
(1個)751円