2024.7. 26UP
「この山椒の実だけ、試しにかじってみてください。塩辛くなくて香りがいいでしょう?おじゃこの適度な塩っけと混ざり合って、すごくやさしい味わいなんです」
大好物という<祇園やよい>の「ちりめん山椒」を熱く語るのは、植物療法士の森田敦子さん。ハーブや精油を用いたフィトテラピーを学ぶべく1992年に渡仏する以前は航空会社で客室乗務員をしていた。
「当時の先輩が、仕事で疲れた私を京都へ連れていってくれて、お土産にくれたのがこのおじゃこでした。以来、炊きたての白飯にはおじゃこ派。ちなみに、山椒のぴりっとくる成分の中には、体に嬉しい抗菌成分が含まれているんですよ」
<祇園やよい>ちりめん山椒 おじゃこ紙箱入り(1箱)1,080円
本館地下1階 粋の座
創業より伝わる技法で炊き上げ、やさしい味付けにてちりめんじゃこと実山椒の素材の持ち味を生かした京惣菜。辛すぎないほどよい塩加減で白飯が進む。
ひとたび興味を持つと追求したくなる性分。客室乗務員時代、気管支喘息に苦しんだ経験から欧州の薬草学を知った森田さんは、その後のフランス留学を経て、日本におけるフィトテラピーの先駆者となった。
「フランスで学び最も痛感したことは、女性のためのヘルスケアの重要性でした。出産や閉経などで一生変化し続ける女性の健康維持には、単純な寝食だけではない、独自のケアが大切だということです」
以後、女性のためのフィトテラピーというテーマを掲げ、今、話題のフェムテック分野でも熱心に活動。特に、デリケートゾーンのケアに焦点を当てたコスメ<アンティームオーガニック>が広く知られている。
「2013年の発売から間もなく、伊勢丹新宿店の店頭にも置いていただきました。といっても、当時はデリケートゾーンという言葉にすら眉をひそめる女性が大半で、日に1本売るのが精いっぱいでした。それが今となっては、フェムテックをテーマにした店頭イベントが開かれるようになりました。女性のヘルスケアは、妊娠・出産だけでなく更年期や介護にも絡む大切な課題。自分の体に本当の意味で目を向ける女性が少しずつ増えてきたのかもしれません」
そんな森田さんが伊勢丹新宿店へよく来るようになった最初のきっかけは、約20年来の親交がある作家の桐島洋子さん。料理好きな桐島さんに連れられ、一緒に地下1階へ通った時期があるという。
「古伊万里が好きなのも、実は桐島さんの影響。食品フロアでは料理のこともたくさん教えていただきました。伊勢丹って世間的には常に新しく進化しているイメージが強いですが、食品フロアにくると、昔からずっと変わらずにあるお店も実は多いんですよね。そういうところに、どこかホッとする自分がいるんです」
2007年に開校した日本初の植物療法専門学校「ルボア フィトテラピースクール」は、東京・目黒区にある。
「炊きたてごはんの真ん中に穴を開けて、スプーンでおじゃこを盛り付けると香りが立ちます。卵の黄身を落としてもおいしいですよ」。
フランスのフィトテラピーと、日本の本草学をベースとしたトータルライフケアブランド<ワフィト>を監修。写真は東京・目黒区にある旗艦店。
今年からはかねて準備してきた訪問看護ステーションをいよいよスタート。
<ワフィト>では、スキンケアからデリケートゾーンケア、インナーケアまで幅広い商品を展開。
タレント、モデルなどのインフルエンサーにも愛読者が多い森田さんの著書。女性に必要な体調ケア、デリケートゾーンのケアについてわかりやすくまとめられている。
フランス留学時代は大学で植物薬理学を履修。研究者肌な森田さんの一面を感じさせるディスプレイ。
スクールでは、1day講座から本格的に植物療法士を目指すコースまでさまざまなカリキュラムを用意。フィトテラピーを応用した介護ケアを学べるコースなどもある。
植物療法士
森田敦子
サンルイ・インターナッショナルおよびワフィト代表。パリ第13大学で植物薬理学を学ぶ。帰国後に植物療法を教える「ルボア フィトテラピースクール」を開く。近著は『私のからだの物語』(ワニブックス)。
写真:太田隆生
取材・文:小堀真子