シンプル・イズ・ベスト。茶巾絞り「栗きんとん」を作ろう! ―樋口直哉さんの『料理のツボ』―

2024.10. 3UP

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秋の味覚といえば栗。9月も半ばを過ぎると野菜売り場に並びはじめますが、木に実るので国の分類では果物の一種。食物繊維やカリウムを多く含むので身体にもいいですし、なによりも季節を感じられる食べ物です。

 

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買ってきた栗はキッチンペーパーや新聞紙などで包み、さらにビニール袋に入れてから冷蔵庫のチルド室で保存するのがオススメです。じつは採れたての栗は甘くありません。それをゆっくりと加熱することでアミラーゼという酵素が働き、デンプンが糖に変わっていくのですが、低温で保存してもデンプンが糖に変わり、甘くなるのです。時間を置くほど甘くなりますが、カビが生えるおそれもあるので、2週間を目安にしてください。

 

今日は栗きんとんをつくりましょう。栗きんとんと聞くとお正月のおせち料理に入っているさつまいもと栗を甘く煮た料理が思い浮かびますが、これからご紹介するのは岐阜の郷土菓子。蒸した栗の実を砂糖と炊き上げ、布巾で栗の形にかたどるシンプルな和菓子です。最近では和菓子屋さんなどでも買えますが、自分でつくると味わいもひとしお。材料も少ないので、手軽に挑戦できます。

 

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◾️栗きんとん

 

<材料> 15個分

栗  500g (正味300g程度)

グラニュー糖 栗の30%

 

<作り方>

まずは栗を蒸します。

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栗はさっと洗い、蒸し器に入れて40分〜50分加熱します。蒸し器がなければ熱湯で茹でてもかまいません。

 

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火が通った栗を包丁で半分に切ります。

 

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スプーンなどで中身をくりだしましょう。黒く変色した部分は丁寧に取り除くのがきれいに仕上げるコツです。

 

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ラフにつくるのであればお玉やポテトマッシャーなどで栗の身を細かく砕きます。この方法だと栗の実の食感が感じられる素朴な味わいになります。

 

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丁寧につくるのであれば裏ごしです。裏ごしは労力がかかりますが、栗の実を取り出すときに混ざってしまった渋皮などを取り除けるので、口当たりがよくなります。裏漉してパウダー状になった栗をアイスクリームにかけてもおいしいデザートになります。

 

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今回は「きんとん」にするので栗の1/3量を鍋に入れ、全体の30%量の砂糖を加えます。グラニュー糖を使っていますが、上白糖でもかまいません。

その場合は25%程度まで量を控えたほうがいいでしょう。上白糖には転化糖液(ブドウ糖+果糖)が少量加えられているので、グラニュー糖よりも甘みが強いからです。木べらで混ぜながら弱火にかけて砂糖を溶かしましょう。

 

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砂糖は加熱するとシロップになるので栗がしっとりとしてきます。全体が溶けたら火を止め、残りの栗を加え、さらに混ぜましょう。

 

「どうせ全部加えるなら最初から栗を全部入れて加熱したらダメなの?」

 

と思うかもしれませんが、最初にすべての栗と砂糖を鍋に入れて火にかけると砂糖が溶けにくく、栗が焦げて鍋底に張り付くリスクが出てきます。そのため、こんな風にあらかじめ砂糖を溶かす→栗を加えるという工程を踏むのです。

 

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よく練り上げ、手に栗がくっつかないくらいが目安です。手で触ってみて栗がベタベタとくっつくようであれば砂糖=シロップが多すぎということ。逆にポロポロになっていたら砂糖の量が足りません。砂糖の適量が栗の重量に対して30%なのです。

 

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木の板などに濡らしてから絞った清潔な布巾をしき、栗きんとんを移します。

 

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20g〜24gくらいにまとめていきます。

 

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濡らした布巾で茶巾に絞ります。

 

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きゅっと絞ると茶巾の跡がつきます。これで出来上がり。あとは同様の工程を繰り返しましょう。

 

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出来上がり。お茶請けにぴったりのお菓子です。冷凍保存もできるので長く楽しめるでしょう。冷凍する場合はラップなどで包み、さらにジッパー付きのビニール袋などに入れてから冷凍庫に入れ、解凍する場合は冷蔵庫で一晩、または常温で2時間ほどで食べられるようになります。

 

栗きんとんは茶巾で絞る形の和菓子の基本。これが上手にできると潰したさつまいも、そら豆や百合根などでも同様につくれます。和菓子は一見すると難しそうですが、郷土菓子は昔から家庭でつくられてきた素朴なおやつ。時間はかかりますが意外と手間は少なく簡単なのでぜひ、楽しみながら作ってみてください。

 

シーズンに一度は作りたい、栗ごはん。

今回は栗を使ったもう一つの定番。栗ご飯の作り方もご紹介します。

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◾️栗ご飯

 

<材料> 4人前

栗   300g〜500g

米   1合半(225g)
もち米 半合(75g)
水   370ml

うす口醤油 大さじ1

みりん   大さじ1

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まず、栗の皮を剥いていきます。栗を水に2時間程度つけておくと皮がやわらかくなるので剥きやすいでしょう。

 

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根本の部分に包丁を入れ、剥がすようにして外側の皮=鬼皮を剥いていきます。

 

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その後に渋皮を剥いていきます。今回は基本をご紹介ということで包丁で剥いていますが、今は栗剥き器という鬼皮と渋皮を一緒に剥けるハサミ型の調理器具が売られているのでそれを使った方が断然楽です。

 

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剥いた栗は半分に切り、水に30分ほどさらしてアクを抜いておきます。味は変わらないのですが、ポリフェノールを水で洗い流す形になるので、そのまま加熱するよりも色がきれいに仕上がるというメリットがあります。

 

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米にはもち米を混ぜておくともちもちとした食感がでますが、全量うるち米でもかまいません。洗ってからザルに30分程度あげ、吸水させておきます。

 

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米に分量の水、しょう油、みりんを加えて、栗をのせて普通に炊飯するだけです。炊飯器でもいいですし、鍋でも炊けます。炊飯器の場合は炊き込みご飯モードで、鍋で炊く場合は蓋をしてから中火で加熱し、沸騰してきたら弱火に落として10分、火を止めて10分蒸らしましょう。

 

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炊き上がり。栗ご飯は色合いを生かすために塩だけで炊く場合もありますが、しょう油を加えるのが個人的には好み。しょう油味が栗の甘みを引き立ててくれます。たけのこなどの炊き込みご飯にはみりんを使いませんが、栗ご飯の場合はご飯にも多少の甘みがあったほうが栗と一緒に食べたときに違和感がないので、少量加えるのもポイント。みりんのお陰でご飯の表面が締まり、食感にも張りが出ます。栗ご飯は栗の皮を剥くのが大変なので、毎日つくるような料理ではありません。ただ、一年に一回は季節を感じる意味で、こういった料理を味わうのもいいものでしょう。

 

Text&Photo : Naoya Higuchi

 

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