ボルドーワインの特徴

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ブルゴーニュと並び、ワイン大国フランスの中でも代表的な産地「ボルドー」。今回はボルドーワインの基礎知識・特徴を三越伊勢丹シニアソムリエが解説します。

ボルドーワインの基礎知識・特徴

ボルドーとは?

ボルドーとは、フランス南西部、大西洋沿いに位置する地方の名前で、もともと「水のほとり」という意味で、大西洋にそそぐジロンド川と、その支流のガロンヌ川・ドルドーニュ川の3つの川で地域が細分化されていて、海流の影響による温暖な海洋性気候と肥沃な土壌から、個性豊かなワインが作られています。

パリ北東部の地図の画像
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ボルドーワインは「アッサンブラージュ」と「赤ワイン」の2つがキーワードです! 

キーワード 1 アッサンブラージュとは?

アッサンブラージュとは、もともとフランス語で「寄せ集める」「組み合わせる」という意味で、ワインをブレンドすることを意味します。ボルドーは複数のブドウ品種のブレンドによってワインの魅力を紡ぎ出す代表的な産地です。赤ワイン用として使用が認められている主要な品種は、ブレンド全体の80~90%を占めて骨格を作る「カベルネ・ソーヴィニヨン」「メルロー」、それを補助する淡い味わいの「カベルネ・フラン」、凝縮したジャムのような「プティ・ヴェルド」、スパイシーな香りを与える「マルベック」の5種類です。白ワイン用は主に3種類で、ハーブを思わせる爽やかな「ソーヴィニヨン・ブラン」、甘口ワインでよく使わる「セミヨン」、マスカットのようにフルーティな「ミュスカデル」が主体となっています。また、このアッサンブラージュ故、長期熟成することで味に深みが増すため、ボルドーワインは長期熟成に向くものが多いのです。

キーワード 2 ボルドーといえば赤ワイン

幅広いタイプのワインが生産されるボルドーですが、世界的に最も良く知られているのは赤ワインです。A.O.C.ワイン生産量の約85%を占めることから、由緒あるボルドーワインの格付けが赤ワインを対象にしたものが多いというのも頷けます。ブルゴーニュの赤ワインは、どちらかというと渋みが穏やかな味わいであるのに対し、ボルドーの赤ワインは名物の羊料理など風味豊かな肉料理にも相乗するタンニンの豊かさが特徴であり「ボルドー=重厚な赤ワイン」というイメージが定着しました。近年では食生活の変化に合わせて、タンニンが緻密で穏やか、かつ洗練された味わいのものも増えてきています。

ボルドーワインの格付け

ボルドーの中心を流れるジロンド川左岸のメドック地区を筆頭に、グラーヴ地区・ポムロール地区・サン・テミリオン地区など、世界に名だたる高級ワイン産地が連なるボルドー地方では、地区ごとの格付けがあり、品質が厳しく管理されています。その筆頭は、「五大シャトー」を頂点とするメドックの格付け。1855年のパリ万国博覧会の際、外国人客に対して上質なボルドーワインをわかりやすくアピールするために制定されました。1級から5級まで61のシャトーが格付けされ、制定当初より1級だった<シャトー・マルゴー><シャトー・ラフィット・ロートシルト><シャトー・ラトゥール><シャトー・オー・ブリオン>に加えて1973年に<シャトー・ムートン・ロートシルト>が2級から1級に昇格した以外は基本的には不変です。
※<シャトー・オー・ブリオン>のみ、メドック地区ではなく、クラーヴ地区です。

ボルドーワインの生産地区

ジロンド川を中心に左岸か右岸かで大きく分かれます。

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まずは、左岸の「メドック地区」、右岸の「サン・テミリオン地区」をおさえるといいでしょう。

左岸にメドック地区、右岸にコート地区の地図

メドック地区
ジロンド川の左岸に位置します。五大シャトーのうち、マルゴー村の<シャトー・マルゴー>、ボイヤック村の<シャトー・ラフィット・ロートシルト><シャトー・ラトゥール><シャトー・ムートン・ロートシルト>(ボイヤック村)が作られる地区になります。マルゴー、ボイヤック以外にも、サン・テステフ、サン・ジュリアン、リストラック、ムーリなどの村が有名です。カベルネ・ソーヴィニヨンを主体とした濃厚で複雑な赤ワインが作られています。

ジロンド川の先の地区の説明地図

コート地区
ジロンド川の右岸に位置。「コート(丘)」の名の通り、丘陵地帯の畑で栽培されるブドウから深みのあるワインが作られています。

グラーヴ地区
赤ワインに加え、セミヨン・ソーヴィニヨン・ブランから複雑でアロマティックな白ワインが作られています。ボルドーの中でも例外的に白ワインが有名な地区ですが、五大シャトーのひとつである赤ワインの<シャトー・オー・ブリオン>が作られています。

ソーテルヌ地区
ガロンヌ川左岸で支流のシロン川との間に位置。貴腐菌が生まれる気候条件で、<シャトー・ディケム>を筆頭に極上の甘口白ワインの産地として知られています。

ポムロール地区
ドルドーニュ川右岸に位置するポムロール。粘土質と砂利質が混じり鉄分を含んだ独特のテロワールで良質なメルローが収穫され、<シャトー・ペトリュス>や<シャトー・ル・パン>を筆頭に、優れた赤ワインが作られます。

サン・テミリオン地区
古くローマ時代からワイン作りの歴史があり、世界遺産の町サン・テミリオンを中心にA.O.C.が広がるメルローを主体にした右岸の銘醸地。石灰岩の地層を持ち、凝縮された果実味としなやかな口当たりが特徴のワインが作られます。<シャトー・シュヴァル・ブラン>や<シャトー・オーゾンヌ>という高級ワインが有名です。メルローを主体としたワインが多いのが特徴です。

アントル・ドゥ・メール地区
「アントル・ドゥ・メール」は「2つの海の間」の意味。2つの川の間のテロワールで、軽快な白ワインが生まれます。

ボルドーワインの味わい

赤ワインは渋みが豊かで、しっかり力強く重厚な存在感があり、牛や羊などの肉料理とよく相乗します。近年は渋みを抑えた軽やかな味わいのものも増えています。ボルドーといえば赤ワインというイメージが強いですが、辛口の白ワインやロゼ・スパークリングワイン、<シャトー・ディケム>を筆頭とした甘口の貴腐ワインも生産されています。ボルドーの白ワインはブルゴーニュに比べて比較的リーズナブルでフレッシュな味わいのものが多いので、低めの温度でもフレンドリーにお楽しみいただけます。

ボルドーワインの飲み方

赤ワインは香りが立ちやすい縦長でやや膨らみのあるグラス(ボルドータイプ)で空気に触れさせながら楽しみます。温度は常温が良いとされますが、それは日本よりも冷涼なフランスでの室温です。最適な温度は銘柄により異なりますが、15~20℃ぐらいが目安となるでしょう。白ワインは高級なものは冷やしすぎず(約12℃)、香りを開かせながら、リーズナブルなものはしっかり冷やして(約8℃)お楽しみください。こまめに冷えたワインを継ぎ足せるよう、グラスは小さめがおすすめです。ちなみに氷水を張ったワインクーラーにボトルの首までつけると1分で1℃落ちる(室温25℃で8℃にしたいときは17分)ので、狙った温度に合わせることができます。

ボルドーワインの選び方

初めてボルドーワインを飲むという方は、シンプルにBORDEAUXと書かれた手頃なワインからお飲みいただくと「ボルドーらしさ」を掴むための第一ステップになるかもしれません。その後、メドックなど地域名が書かれたもの、さらに細かい村名(サンテステフなど)、そして格付けワインと段階を踏んで格付けを登っていくのもおすすめの楽しみ方です。ジロンド川の左岸はカベルネ・ソーヴィニヨン主体、右岸はメルロー主体のものが多いので、作られた場所をチェックすると好みの味わいに出会える確率がアップするでしょう。
ワインは、料理と共に味わうことで真価を発揮します。スパイスを効かせた肉料理にはカベルネ・ソーヴィニヨン主体、ソースの味わいで楽しむ肉料理にはメルロー主体の赤ワインが抜群に合います。また、三越伊勢丹ではお客さまの用途やお好み、お飲みになるシーンを伺いながら、ぴったりな一本をご提案しますので、ワイン選びに迷ったらぜひご相談ください。

ワインラベルの味方イラスト
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ラベルの記載にルールはないので、分からない場合は係員にご質問ください!

ボルドーとブルゴーニュのワインの違い

フランスワインの2大産地と称されるボルドーとブルゴーニュ。並べて語られることの多い両者ですが、栽培面積・生産量はボルドーが倍以上と圧倒的に異なります。

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主な違いとして、
1)ワインに使われるブドウ品種の割合
2)格付け
3)瓶の形の3点です。

ブドウ品種の割合
作り方が異なり、ボルドーはアッサンブラージュ(ブレンド)して作られるのに対して、ブルゴーニュは基本的に単一品種で作られます。

格付け
格付けの概念も異なります。ボルドーはシャトー(生産者)ごとに格付けが行われる一方、ブルゴーニュは、クリュ(畑)単位で格付けが行われます。

ボトル形状
見た目の違いとして、瓶の形が異なります。ボルドーはいかり肩、ブルゴーニュはなで肩となっているため、分かりやすい違いかもしれません。

ボトル形状のイラスト画

解説ソムリエ

  • シニアソムリエ谷口さん

  • 谷口 賢一

    三越伊勢丹 シニアソムリエ

    三越伊勢丹の中元・歳暮をはじめとするギフトのお酒担当。日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ・日本酒サービス研究会認定利酒師・米国ワインエデュケーター協会認定ワインスペシャリストの資格を有する、お酒のスペシャリスト。

監修 ワインプラスカレッジ (講師 トゥールダルジャン工藤)
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【ワインプラスカレッジ】
2022年1月、広尾に開校したワインスクール。まったくの初心者から、プロフェッショナルまでさまざまな方々が楽しめる講座があり、国内外のコンクールで活躍するトップソムリエはじめ、各ジャンルの専門家が講師を担当。これまでのワインスクールとは一線を画し、内装にもこだわったスクールで、通うこと自体が楽しみになる場所を目指しています。