ブルゴーニュワインの特徴

ボルドーと並び、ワイン大国フランスの中でも代表的な産地「ブルゴーニュ」。
ブルゴーニュワインの基礎知識・特徴を三越井伊勢丹シニアソムリエが解説します。
ブルゴーニュワインの基礎知識・特徴
ブルゴーニュワインとは?
フランス東部に位置し、北のパリと南のリヨンを結んだ直線上の約半分を占めるブルゴーニュ地方で作られるワイン。北はシャブリ地区、南はボージョレ ヌーヴォーで有名なボージョレ地区まで南北に非常に長い地域です。

ブルゴーニュの中でも最高峰の産地と称されるのが、コート・ドール(黄金の丘)。その北に位置するコート・ド・ニュイ地区では生産量の約90%がピノ・ノワールで占められ、世界的に有名な「ロマネ・コンティ」もこのエリアで作られます。南側がコート・ド・ボーヌ地区で、「モンラッシェ」などの白ワインが有名です。
ブルゴーニュの各地域についてはこちら
今回は、ブルゴーニュワインを知るための3つのキーワード、「単一品種」「長い余韻」「テロワール」についてご紹介します。
キーワード 1 単一品種
ブルゴーニュワインの最大の特徴は、単一品種(モノ・セパージュ)で作られるワインだということ。近年では中低価格のワインで複数品種のブドウをブレンドしたものもありますが、たとえば「ロマネ・コンティ」は黒ブドウのピノ・ノワールのみ、「モンラッシェ」「ムルソー」は白ブドウのシャルドネのみと、ブルゴーニュの高級ワインはいずれも単一のブドウで作られています。ほかの品種として、ボージョレ地区を中心に黒ブドウのガメイ、一部地域では白ブドウのアリゴテも栽培・使用されています。
アメリカやチリ、オーストラリアなど新世界では単一でなくても、大半を使用しているブドウ品種をラベルに表記することが可能です。一方ブルゴーニュでは品種が表記されていない場合でも100%単一の品種を使用しています。
キーワード 2 長い余韻
美味しいワイン、それを決定づけるのは「余韻の長さ」です。
余韻を長くするには「複雑みのある味わい」であることが最も重要であり、その複雑性を生み出すためには、ボルドーのように複数のブドウ品種をブレンドすることが一般的です。しかし、ブルゴーニュのワインは一切のブレンドをせずとも、味わい、香りともに驚くほどの余韻の長さが楽しめるという魅力が、ファンの心を掴んで離さない要因なのでしょう。
キーワード 3 テロワール
ワインは、テロワール(土地の個性)が表現される芸術ですが、その中でもブルゴーニュは最も顕著にテロワールが語られるワインです。たとえば銘醸地として知られる「ジュヴレ・シャンベルタン」や「ポマール」などの小さな村の中にごく細かな畑の区画が明確に存在し、それぞれの区画ごとのキャラクターを研究し尽くしてブドウの栽培やワイン作りに昇華されているのです。狭い範囲にひしめき合った畑ごとのテロワールの違いによるバラエティー豊かな味わいがブルゴーニュワインを愉しむ神髄でしょう。また、ブドウ樹の樹齢が比較的高く、ブドウ栽培からワイン醸造までを一貫して手掛ける「ドメーヌ」と呼ばれる作り手が多いことも特徴です。

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ブドウの栽培から醸造までを行う「ドメーヌ」に対して、ブドウを買い入れて醸造を行う生産者のことを「ネゴシアン」と言います。
ブルゴーニュワインの格付け
ブルゴーニュワインは畑によって格付けが決まります。4つのクラスがあり、全生産量のわずか約1.5%にあたるグラン・クリュ(特級畑)を頂点に、約10%を占めるプルミエ・クリュ(一級畑)、村名クラス、地域名クラスと続きます。実際に飲むとそのヒエラルキーで味の格、余韻の長さに違いがでてくることは確かに実感できます。
しかしグラン・クリュという格付けは、エチケットにあえて表記されないことも多く、知識として知っておくしかありません。事前に学ぶこと、調べることも、楽しみのひとつだといえるでしょう。

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同じ畑で複数の生産者がいるため、例えば、グラン・クリュは、全部で33ですが、グラン・クリュのワインの銘柄はもっとたくさんあります。
ブルゴーニュワインの生産地区
シャブリ地区

ブルゴーニュ地方最北部に位置する産地。冷涼な気候と牡蠣の化石を含むユニークな土壌から生まれるミネラル豊かな白ワインは世界的に人気です。
コート・ド・ニュイ地区

コート・ドールの北部に位置する、「黄金の丘」という意味を持つブルゴーニュ最高峰の産地。生産量の9割近くをピノ・ノワールが占め、有名な「ロマネ・コンティ」をはじめ、多くの銘醸赤ワインが生み出されます。
コート・ド・ボーヌ地区

コート・ドールの南部に位置し、コート・ド・ニュイよりも緩やかな丘陵にブドウ畑が広がる産地です。「モンラッシェ」や「ムルソー」をはじめとした世界最高峰といわれる白ワインや良質な赤ワインを生み出しています。
コート・シャロネーズ地区
コート・ドールの南に連なる丘陵地帯に広がる産地。コミュナル(村名)A.O.C.が中心で、赤も白もフルーティで軽やかなワインが中心。コストパフォーマンスの高いワインが多く作られています。
マコネ地区
コート・ドールよりもやや温暖で、土壌はシャルドネに適し、生産量の85%が白ワイン。「マコン」「プイィ・フュイッセ」などフルーティな白ワインが人気の産地。ガメイからの赤ワインも作られています。
ボージョレ地区
マコネの南端から世界屈指の美食都市と賞されるリヨンまで約55キロに渡る産地。ガメイで作る赤ワインで知られています。毎年11月第3木曜に解禁される新酒、ボージョレ ヌーヴォーは日本でもポピュラーです。
ブルゴーニュワインの味わい
ブルゴーニュワインの魅力は、繊細さ(フィネス)といった言葉で語られます。また、味わいの多様性も特徴です。一般的にはブドウ品種やブレンド比率の違いにより多様な味わいが生まれることが多いですが、ブルゴーニュの有名ワインは基本的に、赤はピノ・ノワール100%、白はシャルドネ100%のように同じブドウ品種を使用しているにもかかわらず多様性があるのです。ピノ・ノワールを使った赤ワインは比較的タンニン(渋み)が穏やかで、豊かかつマイルドな酸味と香りの高さを一緒に楽しめます。繊細さと凝縮感を合わせ持ち、長期熟成のポテンシャルも十分です。シャルドネを使った白ワインは穏やかな酸と長い余韻からくるコクを楽しめるといわれています。熟した果実の充実感と樽由来のリッチなフレーバーを合わせ持ち、フレッシュなものからリッチなものまでバラエティー豊か。シャブリも世界で人気を博するブルゴーニュの白ワインです。ブルゴーニュワインは、赤ワインのタンニンや白ワインの酸が少ないことで穏やかな味わいとなり、比較的和食にも合いやすい味わいです。たとえば手土産やレストランのコースでどんな料理が出てくるか分からないときも、ブルゴーニュの白ワインを選ぶと比較的外しにくいでしょう。
ブルゴーニュワインの飲み方
赤ワインは香りが立つような大ぶりのグラス(ブルゴーニュタイプ)で空気に触れさせながら楽しみます。温度は常温がいいとされますが、それは日本よりも冷涼なフランスの室温です。最適な温度は銘柄により異なりますが、15~20℃ぐらいが目安となるでしょう。白ワインは高級なものは冷やしすぎず(約12℃)、香りを開かせながら、リーズナブルなものはしっかり冷やして(約8℃)お楽しみください。ちなみに氷水を張ったワインクーラーにボトルの首までつけると1分で1℃落ちる(室温25℃で8℃にしたいときは17分)ので、狙った温度に合わせることができます。
ブルゴーニュワインの選び方
初めてブルゴーニュワインを飲むという方は、BOURGOGNE PINOT NOIR、またはBOURGOGNE CHARDONNAYと書かれた地域名クラスからお飲みいただくと、「ブルゴーニュらしさ」を掴むための第一ステップになるかもしれません。その後、村名クラス、プルミエ・クリュ、そしてグラン・クリュと段階を踏んで格付けを登っていくのもおすすめの楽しみ方です。また、三越伊勢丹ではお客さまの用途やお好み、お飲みになるシーンを伺いながら、ぴったりな一本をご提案します。
ブルゴーニュとボルドーのワインの違い
フランスワインの2大産地と称されるブルゴーニュとボルドー。並べて語られることの多い両者ですが、栽培面積、生産量はボルドーが倍以上と圧倒的に異なります。

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主な違いは3点です。
1.ワインに使われるブドウ品種の割合
2.格付け
3.瓶の形
1. ブドウ品種の割合
作り方が異なり、ブルゴーニュは単一品種で作られる一方、ボルドーは、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを主体としてブレンドして作られています。
2. 格付け
格付けも大きく異なります。ブルゴーニュは、クリュ(畑)単位で格付けが行われるのに対して、ボルドーはシャトー(生産者)ごとに格付けが行われます。
3. ボトル形状
見た目の違いとして、瓶の形が異なります。ブルゴーニュはなで肩、ボルドーはいかり肩となっているため、分かりやすい違いかもしれません。

解説ソムリエ
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谷口 賢一
三越伊勢丹 シニアソムリエ
三越伊勢丹の中元・歳暮をはじめとするギフトのお酒担当。日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ・日本酒サービス研究会認定利酒師・米国ワインエデュケーター協会認定ワインスペシャリストの資格を有する、お酒のスペシャリスト。

【ワインプラスカレッジ】
2022年1月、広尾に開校したワインスクール。まったくの初心者から、プロフェッショナルまでさまざまな方々が楽しめる講座があり、国内外のコンクールで活躍するトップソムリエはじめ、各ジャンルの専門家が講師を担当。これまでのワインスクールとは一線を画し、内装にもこだわったスクールで、通うこと自体が楽しみになる場所を目指しています。
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セパージュとはブドウ品種の割合のこと。
単一なので、モノ・セパージュといいます。