シャンパーニュ(シャンパン)の特徴

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スパークリングワインの最高峰が「シャンパーニュ(シャンパン)」。
今回は三越伊勢丹シニアソムリエがシャンパーニュ(シャンパン)の基礎知識・特徴を解説します。

シャンパーニュ(シャンパン)の基礎知識・特徴

シャンパーニュとは

「シャンパーニュ」とは、フランス・パリ北東に約130km、TGV(高速鉄道)に乗って約50分で到着するランス(Reims)という街を中心としたシャンパーニュ地方で、厳格なルールに従って作られたスパークリングワインのこと。日本では、シャンパンと呼ばれたり、英語では「シャンペン」に近い発音をしますが、三越伊勢丹では、フランス本国の発音に近い「シャンパーニュ」と呼んでいます。専門家やワイン愛好家の中でもシャンパーニュと言われることが多いです。
フランスはワインを作るルールが世界で最も厳格な国のひとつであり、使用するブドウ品種、栽培地域・育て方・醸造方法・アルコール度数などあらゆることがルールとして定められています。シャンパーニュと名乗るためにも、数十にも及ぶ厳しく細かい規定を満たす必要があります。ここでは主な5つのルールをご紹介します。

パリ北東部の地図の画像

ルール 1 ブドウ品種
シャンパーニュで使用が認められる代表的なブドウ品種は、白ブドウの「シャルドネ」、黒ブドウの「ピノ・ノワール」「ムニエ」の3種類。3種類をバランスよくブレンドすることもあれば、シャルドネ100%のブラン・ド・ブラン(Blanc de Blancs)、ピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワール(Blanc de Noirs)などもあります。黒ブドウ主体で、ロゼも作られます。

ルール 2 リザーヴワインの使用
通常、シャンパーニュにはヴィンテージ(2015年などの年号)がありません。シャンパーニュではリザーヴワイン(ブレンド用に取っておいたワイン)の使用が認められており、そのブレンド(アッサンブラージュ)技術はシャンパーニュの大きな特徴のひとつです。例えば<モエ・エ・シャンドン>は1年に約9,600万本が作られていますが、そのすべてで同じ味わいを保っているということからも技術力の高さがうかがい知れると思います。
一方、ヴィンテージが表記されているシャンパーニュ(シャンパーニュではこれをミレジメという)もあり、メゾンがその年の良かったとされるブドウだけを使って作ることで素晴らしいワインが生まれると判断した場合に作られます。その代表格が、シャンパーニュの祖とも称される<ドン ペリニヨン>。ブドウの作柄が素晴らしいと認められたヴィンテージにのみ仕立てられています。

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「ミレジメ」とはフランス語でヴィンテージという意味で、特にシャンパーニュで使われることが多いです。ヴィンテージがないシャンパーニュは「ノン・ミレジメ」と言います。

ルール 3 瓶内二次発酵
スパークリングワインの作り方で最も手間がかかる方式です。瓶の中にスティルワイン(非発泡性の白ワイン)と酵母、糖分を直接入れて、瓶内でもう一度発酵させることで、発生した炭酸ガスがワインに溶け込みます。発酵を終えた酵母は、アミノ酸を含む澱となり、ワインに旨味を与えます。瓶内二次発酵はシャンパーニュ方式とも称され、イタリアのフランチャコルタ、スペインのカヴァなど各国の高級スパークリングワインにも採用されています。

ルール 4 長期熟成
瓶内二次発酵を終えたシャンパーニュは、カーヴでの熟成期間に入ります。ほかのスパークリングワインでも熟成は行われますが、長期の熟成が義務付けられているのはシャンパーニュだけ。ノン・ヴィンテージで15カ月以上、ミレジメで3年以上と定められ、プレステージでは5年以上もの熟成期間が設けられています。

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プレステージとは、ミレジメの中でも特に最高なシャンパーニュです。
カーヴの中で、あらかじめ適切な飲み頃に熟成されているので、買ってすぐでも美味しく飲めるのです。

ルール 5 シャンパーニュ地方で作る
そしてすべての前提となることが、シャンパーニュ地方で栽培されたブドウを使用して現地で作られたスパークリングワインであるということ。上記の「シャンパーニュ製法」に則ってフランス国内で作られたスパークリングワインであっても、シャンパーニュと名乗ることはできず「クレマン」と呼ばれ、例えばボルドー地方で作られたものであれば「クレマン・ド・ボルドー」と名付けられます。

シャンパーニュの格付け

シャンパーニュ地方の格付けは村単位で行われています。その基準となっているのはブドウの取引価格であり、シャンパーニュ地方の319の村には80~100%の格付けがされており、100%の17村がグラン・クリュ(特級)、90%~99%の42村をプルミエ・クリュ(一級)と認定されていました。
現在は、取引価格は自由化されましたが、格付けそのものは残っており、グラン・クリュに畑を持つことは特別なことであり、すべてがグラン・クリュであることを掲げる<マイィ グラン・クリュ>という名のメゾンもあります。

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南部コート・デ・パール地区のマップ画像

モンターニュ・ド・ランス地区
ピノ・ノワール主体の産地。力強く、ボディのしっかりとしたピノ・ノワールを育む「アンボネ」「ブジー」など、人気のグラン・クリュが数多くあります。

ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区
マルヌ川の両岸に広がるムニエ種の中心産地。知名度はモンターニュ・ド・ランスやコート・デ・ブランほど高くないですが、フルーティでボリューム感のあるシャンパーニュが作られます。

コート・デ・ブラン地区
「コート・デ・ブラン」は「白い丘」の意味で、名の通りシャルドネ主体の産地。「アヴィス」など名高いグラン・クリュもある地区です。

コート・ド・セザンヌ地区
栽培品種はシャルドネが約7割で、その多くが大手メゾンに出荷されてきました。近年はブドウ栽培から醸造まで自社で行う栽培醸造家、レコルタン・マニピュラン(RM)が注目され、自らシャンパーニュ作りを行うドメーヌが急増しています。

コート・デ・バール地区
シャンパーニュ地方最南の産地。隣接するシャブリ地区同様のキンメリジャン土壌ながら、ピノ・ノワールが85%ほど栽培されています。その果実味豊かなピノ・ノワールに大手メゾンも注目している地区です。

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グラン・クリュ、プルミエ・クリュのすべては、モンターニュ・ド・ランス地区、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区、コート・デ・ブラン地区の3地区にあります。

シャンパーニュの味わい

シャンパーニュは酸を楽しむもの。その酸はブドウが冷涼な気候で育つことで生まれます。フランス北東部に位置するシャンパーニュ地方は北海道よりも緯度が高く、年間平均気温は約10度と世界のワイン産地の中でも非常に冷涼。その厳しい寒さがブドウに美しく豊かな酸を蓄えさせるのです。また、地域によっても異なりますが、主に白ブドウの「シャルドネ」が酸の骨格、黒ブドウの「ピノ・ノワール」はふくよかな丸み、「ムニエ」はアタックの強い味わいを形成します。
乾杯のワインとして食前に飲む場合は酸がよりいきいきとしたシャルドネ100%のブラン・ド・ブラン、前菜から魚・肉料理まで幅広い料理を引き立てる食中酒にはブレンドされたものや、ピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールが適している場合が多いです。
瓶内二次発酵と長期熟成によりワイン自らが生み出したガスが溶け込むことで、泡のキメが細かいこともシャンパーニュの特徴です。通常の炭酸飲料との泡の大きさの違いは歴然です。泡の持ちもよく、上質なシャンパーニュでは翌日の朝にも泡立ちが残っている場合もあります。

シャンパーニュのアルコール度数

シャンパーニュのアルコール度数はルールによって定められており、一般的なワインと比べて低い12%前後となっています。シャンパーニュのきれいな酸を表現するために理想的なアルコール度数として定められたと考えられます。

シャンパーニュの飲み方

一般的なワインは作られたタイミングでリリースされ、飲み頃は飲む人に委ねられますが、シャンパーニュは飲み頃になったものが出荷されるため、購入後なるべく早く飲むことをおすすめします。自宅のセラーで長期間保管した場合、気が抜けてしまうこともあるため、古いシャンパーニュを飲みたいときはメゾンが保管・熟成していたシャンパーニュをお求めいただくと安心です。
温度帯に関しては、ほとんどのシャンパーニュにおいてしっかり冷えているものが美味しいといって間違いないでしょう。4~8℃を目安に、冷蔵庫またはワインクーラーでよく冷やしてお飲みください。ちなみに氷水を張ったワインクーラーにボトルの首までつけると1分で1℃落ちる(室温25℃で5℃にしたいときは20分)ので、狙った温度に合わせることができます。
グラスは泡立ちが美しい縦長のフルート型、または香りを楽しめる中央が少し広がったワイングラス型がおすすめです。幅広のクープグラスは象徴的な乾杯のシーン以外ではあまり使われることはありません。グラスの中の底に傷がついたものをお選びいただくと泡がきれいに立ち上るのですごくかっこいいです!

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シャンパーニュのトレンド

シャンパーニュは有名なメゾンを選んで乾杯など食前に飲む華やかなものという文化が長く続いていました。ちなみにノーベル賞の祝賀会では「ポメリー」が一番多く選ばれており、その実績から乾杯に最も向いたシャンパーニュとも称されています。その一方、10年ぐらい前から小規模生産者(レコルタン・マニピュラン)の掘り出し物を見つけて食中も楽しもうという潮流が生まれています。国内では伊勢丹新宿店のシャンパーニュの祭典「ノエル・ア・ラ・モード」がその火付け役となりました。
そのトレンドを汲んで大手生産者も味が画一でない農産物としてのシャンパーニュを追求することを始めています。たとえば<ルイ・ロデレール>は2021年にスタンダードラインのブリュット・プルミエをリニューアル。リザーヴワインにその年に収穫したブドウで作られるベースワインをブレンド。エチケットには創業から数えて何回目の収穫かを表す数字が書かれています。

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自社畑で収穫したブドウを使い、醸造も自社で行う生産者(多くが小規模生産者)をレコルタン・マニュピランといい、「RM」と表記されます。反対に、ブドウの栽培と醸造が異なるメーカーを、「NM」(ネゴシアン・マニュピラン)と言い、大手メーカーが多いです。(自社で畑を持っているNMもあります。)

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シャンパーニュの選び方

目上の人へのお祝いであれば有名なメゾン、仲間とワインを持ち寄る会では知る人ぞ知る小規模生産者のものなど、何を目的に購入するかで変わってくるでしょう。三越伊勢丹ではお客さまの用途やお好み、お飲みになるシーンを伺いながら、ぴったりな一本をご提案します。
ちなみにシャンパーニュはごく一部を除き基本的には辛口です。シャンパーニュでよく見られるブリュット(Brut)という表記は辛口という意味ですが、よりキリッとした酸を楽しみたいときはノンドサージュ、ウルトラブリュット、ブリュットナチュレなどと表記されたものを選んでみるのもおもしろいでしょう。

解説ソムリエ

  • シニアソムリエ谷口さん

  • 谷口 賢一

    三越伊勢丹 シニアソムリエ

    三越伊勢丹の中元・歳暮をはじめとするギフトのお酒担当。日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ・日本酒サービス研究会認定利酒師・米国ワインエデュケーター協会認定ワインスペシャリストの資格を有する、お酒のスペシャリスト。

監修 ワインプラスカレッジ (講師 トゥールダルジャン工藤)
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【ワインプラスカレッジ】
2022年1月、広尾に開校したワインスクール。まったくの初心者から、プロフェッショナルまでさまざまな方々が楽しめる講座があり、国内外のコンクールで活躍するトップソムリエはじめ、各ジャンルの専門家が講師を担当。これまでのワインスクールとは一線を画し、内装にもこだわったスクールで、通うこと自体が楽しみになる場所を目指しています。