リ・スタイルとリ・スタイル プラスのバイヤーに聞く!ファッションのムードが向かう先は?

リ・スタイルとリ・スタイル プラスのバイヤーに聞く!ファッションのムードが向かう先は?

伊勢丹新宿店の視点で今を切り取るTHE MOMENTS。今回のテーマは「TSUGI」。本館3階のリ・スタイルとリ・スタイル プラスは伊勢丹新宿店のなかでも「次」を意識したファッションを求めるお客さまが多く集うショップ。それぞれのバイヤーは現在のファッションのムードをどのように捉えているのか?セレクトの基準として大切にしていること、2024年春におすすめしたいスタイリングなども含め語ってもらいました。

橋本航平(はしもとこうへい)
伊勢丹新宿店 本館3階 リ・スタイル:バイヤー
2014年三越伊勢丹入社。本館3階のインターナショナル・デザイナーズでの販売を経てアシスタントバイヤーに。その後、同売り場のバイヤーを経験した後、2023年4月から現職。

奥田詩保子(おくだしほこ)
伊勢丹新宿店 本館3階 リ・スタイル プラス:バイヤー
2017年に入社。リ・スタイルのアシスタントバイヤーを4年間務め、今年度からリ・スタイルプラスのバイヤーに。国内外の展示会へ出向き、商品の買い付けやイベントの企画に携わる。

「自分にとって新しいこと」、それが何よりも大事

—バイヤーとして、今の伊勢丹新宿店のお客さまはファッションになにを求めているように感じていますか。

橋本航平(はしもとこうへい)

橋本:コロナに振り回されるような時期がようやく過ぎて、あらためてファッションを楽しめるようになりました。そこで感じているのがお客さまが求める「新しさ」が変わってきているいうことです。コロナの時期はなかなか新しいことを始めることができないこともあってブランドのコラボレーションが増え過ぎたこともありました。ただ、コロナ禍が明けてそういう表層的、記号的な新しさに対してお客さまの反応がとても薄くなってきたと感じています。

奥田:リ・スタイル プラスは、その時々のパーソナルな気持ちを大切にされるお客さまが多いので、世の中のムードにご自身のスタイルが影響を受けることはなく、時代による変化はリ・スタイルよりは少ないかもしれません。それでも自分の新しい一面を引き出してくれる服はどれだろうと模索しているような印象はお客さまからは感じています。

—さまざまな変化に対して、バイヤーとしてはどのようなアプローチを考えていますか。

橋本:リ・スタイルに足を運んでくださるお客さまは「自分だけのときめきを見つけたい」という方が多いんです。なので商品を陳列しているだけはお客さまが望むような「出会い」を叶えることはできないと思っていて、装飾を工夫したり、プロモーションを企画したりすることで「ロマンティックな出会い」をお届けしたいと考えています。

奥田:「出会いをプロデュースする」という考えはリ・スタイル プラスもまったく同じです。「誰かにとっては新しくなくても、自分にとっては新しい」を探しているお客さまに対して何が提案できるのかというのをバイヤーとして常に課題にしています。

橋本:リ・スタイルとリ・スタイル プラス、どちらのショップも行き来する方もいます。ファッションをフレンドリーに楽しみたいときはリ・スタイル、ファッションに少しストイックでありたいときはリ・スタイル プラスと、お客さま自身のタイミングで使い分けているのではないでしょうか。

選択肢は広く、ひとつひとつのセレクトの信念は深く

—お客さまが近しい場合でも「ショップらしさ」を表現するために、ブランドやアイテムのセレクト基準がそれぞれあると思います。

橋本:自分としては「古さを生まない新しさ」という考えを大切にしています。前シーズンと今シーズンのアイテムでもコーディネートが完成したり、新たに取り扱うブランドでもこれまで積み重ねてきたことを重要視したり。最近のファッションの潮流としてもアーカイブが見直されていることもあり、お客さまの手元にずっと残したくなるようなブランドやアイテムであるかどうかがセレクトの基準ですね。

奥田:これはどのバイヤーとも同じだとは思いますが、まずは自分の「勘」というものがあります。そこに加えて「ファッションから遠いところをやりたい」という思いも持っています。コレクションなどもファッションとはかけ離れたテーマからインスピレーションを得ているデザイナーに惹かれますし、そのような提案がリ・スタイル プラスらしさなのかなと思っています。

橋本:かつてはこの色で、このシルエットであれば売れていたという時代も確かにありましたが、そのような考えは今のお客さまに響くことはないです。なのである程度は選択肢を広げつつ、それでいてひとつひとつのセレクトには覚悟と信念のようなものを持つことが大事です。それは僕だけでなく、奥田さんも同じように思っているはずです。

奥田詩保子(おくだしほこ)

奥田:そうですね、まったく同じ考えです。お客さまに「リ・スタイル プラスってあんなショップだよね」とイメージがついてしまったらバイヤーとしては褒められることではないと思ってます。ブランドやアイテムを大胆に入れ替えたりする覚悟は必要だと思っています。

橋本:デザイナーさんと話すこともセレクトの基準になることもあります。コレクションを見ただけでは伝わってこないことも作り手との会話によってなにをどう解釈してを服に落とし込んだのかなど、こちらの理解も深まります。さらに作り手の考え方に共感したり、人柄そのものに惹かれたりすることはリ・スタイルらしさを一緒に積み重ねていけるかどうかの判断にもつながります。

2024年の春に楽しんでもらいたいスタイリング

—セレクトにしてもあらゆる角度から検討していることがよくわかりましたが、今季のおすすめしたいスタイリングを教えてもらえますか。

橋本:リ・スタイルでは今季からアムステルダムを拠点にしている<extreme cashmere/エクストリーム カシミア>というブランドを取り扱います。「オーセンティックなアイテムを自分らしく着こなしてほしい」というのを今季のリ・スタイルのテーマにしていて、シンプルなコットンカシミヤのTシャツドレスもビスチェのようなアイテムを合わせることで表情もユニークになり、自由な着こなしを楽しんでもらえたらとセレクトしました。

<エクストリーム カシミア>

<エクストリーム カシミア>
ドレス 71,500円 商品を見る
ベアトップ 34,100円 商品を見る
ベルト 11,550円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 本館3階 リ・スタイル

橋本:<CECILIE BAHNSEN/セシリー バンセン>はリ・スタイルではおなじみのブランドのひとつです。リ・スタイルはフェミニンなアイテムが得意なのですが、甘くなりすぎないようにリジットデニムと合わせ、少しマニッシュな要素を追加して楽しんでほしいという提案です。シアー素材のレイヤードというのも推したいスタイリングのひとつです。

<セシリー バンセン>

<セシリー バンセン>
ベアトップ 154,000円 商品を見る
セーター 115,500円 商品を見る
デニム 99,000円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 本館3階 リ・スタイル

橋本:「白」のバリエーションを見せていきたいとも考えていて、それを象徴するブランドとしてクローズアップするのが<Chika Kisada/チカ キサダ>です。クラシックバレエからインスピレーションを受けたドレスをプロモーション展開します。

<チカ キサダ>

<チカ キサダ>
ドレス 74,800円
クリノリン 418,000円
□伊勢丹新宿店 本館3階 リ・スタイル

奥田:リ・スタイル プラスでは久しぶりにお取り扱いとなるのですが、こちらは英国の<wales bonner/ウェールズ ボナー>です。自分の好きを積み重ねてきた頭の中がおしゃれな人はどんなアイテムでも自分らしいスタイルで着こなせるというのが私の持論で、ショートパンツやジャージー素材といったスポーツスタイルを着こなしに上手に取り入れてくれるのではと思っています。

<ウェールズ ボナー>

<ウェールズ ボナー>
トップス 86,900円
ショートパンツ 53,900円
□伊勢丹新宿店 本館3階 リ・スタイル プラス

奥田:新しいブランドとしてはアメリカの<ERL/イーアールエル>を買い付けました。ファッション過ぎない少し緩い感じが、私が考えるリ・スタイル プラスのムードにぴったりだと思いました。浮遊感のあるスタイルが個人的にもすごく気に入っています。

<イーアールエル>

<イーアールエル>
Tシャツ 33,000円
パンツ 75,900円
□伊勢丹新宿店 本館3階 リ・スタイル プラス

—バイヤーというのは常に時代のムードを察知していくことが必要だとは思いますが、おふたりが考える次なるファッションの方向性とは。

橋本:これからは個人の感性にフィットしていくファッションが支持されていくと思っています。ハンドメイドの刺繍や手描きのプリントであったり、個人に寄り添うようなカスタムをされたアイテムがデザイナーズと同じぐらいの価値を持つのではないでしょうか。そこを見据えたチャレンジをしていきたいと思っています。

奥田:トレンドという言葉は機能しなくなるはずです。誰かと同じようなスタイルをすればおしゃれになれることはもうないですし、それはお客さまもわかっています。いろんな自分をファッションで楽しむことができる方が増えていくとリ・スタイル プラスのバイヤーとしてもうれしいですね。

橋本:最後に奥田さんに質問したいんですけど。新しいブランドと出会ったときにテンションが上がると思いますが、一瞬で心を掴まれるのか、それともジワジワと魅了されていくのかどちらが多いですか?

奥田:私は圧倒的に一目惚れが多くて、初期衝動を大事にしています。

橋本:僕はジワジワ派です。ひとつのブランドやアイテムを複数の女性像に当てはめていって、それでフィットすることが多ければ「やっぱりいい」と結論づけます。どちらの判断が正解などはないですが、お客さまの反応がすべてなのでこの春のリ・スタイルとリ・スタイルプラスのセレクトの答え合わせはこれからですね。

奥田:そうですね。どんな答えが出るのか楽しみです。