
伊勢丹新宿店の本館地下1階で、国内外のワインと洋酒を取り揃えるコーナー「グランドカーヴ」。その奥に、知る人ぞ知る隠れ家のようなヴィンテージセラーがあることをご存じでしょうか。
ヴィンテージセラーの入口は、グランドカーヴの奥にあるガラス扉。「vintage cellar」というサインが掲げられています。細い通路を抜けた先にある、足もとから天井近くまでぎっしりとワインが並べられた約40㎡の空間は圧巻のひと言。ワイン好きならずとも訪れていただきたいヴィンテージセラーの魅力や活用方法を、グランドカーヴの専属ソムリエ・宮沢典芳がご案内します。
セラーの中は夏でもひんやり。掘り出し物のお宝ワインが見つかるかも
— ヴィンテージセラーに入ると、中は肌寒いぐらいの温度ですね。
一年を通して16度に保たれています。夏でもこの温度なので、半袖だと長時間はちょっとつらいですね。そして奥のオールドヴィンテージのセラーはさらに温度が低く、14度に設定されています。
— オールドヴィンテージのセラーというのは、南京錠のかかった鉄格子の先にある小部屋のことですね。その2度の違いには、どんな理由が?
ワインは温度を高くすると熟成が進みやすいといわれているので、古いワインは低めの温度にすることで品質を保っています。
— なるほど。この暗さも、ワインにとっては良い環境ということですよね?
そうです。最近はLED照明を入れて、以前よりも少しだけ明るくなったのですが、それでもやっぱり暗いですよね。
温度や明るさなどは、なるべくフランスなど現地のワイナリーにある地下セラーの環境に近づけることを目指しているのですが、湿度に関してはあまり高くするとラベルを傷めてしまうので抑えめに設定しています。
— たしかに何十年も前の古いワインでも、キレイな状態のものが多いです。こちらのヴィンテージセラーにはどのようなワインが並べられているのでしょうか?
「ワインのミュージアム」を目指して品揃えしています。
たとえばいまヴィンテージセラーにあるもので最も高いワインだと“シャトー ペトリュス マグナム(税込 1,485,000円)”になるのですが、そういった「高額ワイン」や「オールドヴィンテージワイン」に力を入れています。実は2,000~3,000円程度のお求めやすいワインも置かれているのです。ヴィンテージセラーに初めて入ったお客さまは、「こんな価格のワインもあるんだ」と驚かれることもありますね。

— だとすると、表に出ていないお求めやすいワインを求めてヴィンテージセラーに来るというのもアリですか?
アリですよ。数本しか入荷のないものやイレギュラーなものは表に並べられないことも多いので。
— とはいえちょっと入りにくい雰囲気ですが、だれでも勝手に入っていいんですよね?
もちろんどなたでも自由にお入りいただけます。細い通路の奥にあるので、より入りにくく感じてしまいますよね・・・。実は壁の裏側にどうしても動かせない機械室があってこういうかたちになってしまったのです。
— なるほど。わざと入りにくい演出がされているわけじゃなくて安心しました(笑)。でもそのおかげで隠れ家のような雰囲気があって、そんなところも魅力的ですね。
伊勢丹のヴィンテージセラーの特徴は?
— いまヴィンテージセラーには何種類ぐらいのワインが並んでいるんですか?
約900種類です。産地についてはギフトのニーズが高いフランスワインを中心に、世界各地のものを取り揃えています。
— セレクトで特徴的なジャンルはありますか?
「シャンパーニュ」「ハーフボトル」「オールドヴィンテージ」には、特に力を入れています。
シャンパーニュに関しては、伊勢丹で毎年開催している「ノエル・ア・ラ・モード」というシャンパーニュイベントの影響もあって、かなりこだわりを持ってセレクトしています。現在は約70種を取り揃えており、RM(レコルタン・マニピュラン)という小規模生産者のものや高額帯のものなど、流通量の少ないシャンパーニュも展開しています。
あとはハーフボトル(375ml)が充実しており、お客さまにお褒めいただくことも多いです。もともとハーフボトルはデイリーな価格帯のものをメインに扱っていたのですが、ヴィンテージセラーでは1本数万円と高額なものも取り揃えています。お客さまからのご要望も多いので年間を通して探していますね。
そしてヴィンテージセラーの奥にある、オールドヴィンテージの棚も特徴です。古いヴィンテージのワインはどうしても高額になりがちですが、なるべく買いやすい価格のものを揃えられるようがんばっています。20歳や還暦のお祝い、結婚式でのプレゼントなど、人生の大切な節目にあわせてお求めになる方も多いです。
− オールドヴィンテージの棚は鉄格子の扉の先にあるので、すごく特別感が感じられて、まるで宝探しのようにワクワクします。棚にはヴィンテージごとに並べられていますが、かなり古いものもあるのでしょうか?
もともとは「100年セラー」というコンセプトでかなり古いものも取り揃えていたのですが、やはり還暦以降にあたるヴィンテージのお問い合わせは極端に少なくなるので、いまは1960年からのものを置いています。
それより古いワインをご所望の場合は、海外からのお取り寄せとなります。お客さまに商品の状態を画像でご確認いただき、2~3週間を目安に航空便でお届けいたします。
— 在庫がなくても、まずはスタッフに相談してみれば良いのですね。ヴィンテージセラーではソムリエによるアテンドの予約もできるそうですね。
はい。WEBサイトからご予約いただけます。専任ソムリエがワインの産地・種類・飲み口などをご説明し、お客さまの好みにあったワイン選びのお手伝いをいたします。
また、ご予約時にご要望をお伝えいただければ、条件にあうワインをお客さまのご来店にあわせてご用意しておくことも可能です。
— それは助かりますね。どんな情報を伝えておけば、好みのワインを探しやすくなりますか?
ギフトなのかご自宅用なのか、「用途」と「予算」は知りたいです。あとはご自身で楽しまれるワインをお探しの場合、以前飲んで美味しかったワインを教えていただけると好みが分かるので、それに近いものを選ぶことができます。ご要望はもちろん、素朴な疑問でも何でもお気軽にお問い合わせください。
— ソムリエは何人いるのですか?
5名の専任ソムリエがいます。私以外の4名は女性です。
それぞれ得意ジャンルも違って、私はシャンパーニュで、堀内は最近アメリカに力を入れています。刈部は知人も多く、日本ワインに強いですね。秋本はオールラウンドで、古いワインを集めています。小林はレストランソムリエの経験もあるので、食事とのペアリングやシーンに添った提案を得意としています。
ソムリエ紹介

宮沢 典芳(ミヤザワ ノリヨシ)
得意分野:シャンパーニュ
年1回はフランスのシャンパーニュ地方へ足を運ぶほど、泡が大好き!毎日、シャンパーニュが飲めるような生活にあこがれつつ、日常ではハイボールなどの泡やラムも楽しんでいます。趣味はスタジアムでのサッカー観戦で、地元の柏レイソルのファン。2019年2月コマンドリー デュ ソルト ブション シャンプノワ叙勲。

堀内 美保(ホリウチ ミホ)
得意分野:ボルドー・アメリカ
都内百貨店勤務のソムリエが二名だった23年前、「ソムリエがいるとワインが売れるようになります!」と自ら伊勢丹に応募し、1年越しで念願の伊勢丹新宿店専属ソムリエとなる。当時作った小さな「ヴィンテージワインコーナー」は今ではヴィンテージセラーとなり、お客さまに書いていたワインの説明書は、コメントカードになり進化。毎日、沢山のお客さまとの出会いがあり、さまざまなワインをご紹介させていただくことが幸せです。

苅部 恭子(カリベ キョウコ)
得意分野:フランス(ボルドーワイン)・オーストリアワイン・日本ワイン
大学卒業後OLを経て、ワイン好きがこうじて飲食関係に転職。伊勢丹新宿店グランドカーヴでは14年勤務しています。沢山のお客さまや仲間たちに囲まれながら、ワイン道を日々精進。帰宅後は2人の息子の母として、掃除・洗濯・食事作りと家事・育児に走り回っています。いまの夢は、上げ膳据え膳の温泉旅館でのんびりすることです。

秋本 奈津江(アキモト ナツエ)
得意分野:ブルゴーニュ
休日は、韓国や日本のドラマや映画を鑑賞するのが楽しみ!お酒はジャンル問わず毎日飲んでいます。伊勢丹新宿店グランドカーヴでは、お客さまとのお話の中で、少しでもワイン興味を持っていただけるようにご紹介しています。

小林 結(コバヤシ ユイ)
得意分野:食事とのペアリング提案
大学で心理学を学んだのち、レストランソムリエとしてサービスに従事。百貨店の商品統括部でアシスタントバイヤーを経験後、ワイン専門の卸を経て、2007年より伊勢丹新宿店グランドカーヴのソムリエールになりました。2011年、ロワール中央地区ワイン委員会より親善大使に任命される。ワインのみならず、蒸留酒・日本酒・ワールドビールを含めたビールの知識も豊富。
— ソムリエおすすめのワインも試飲できるそうですね。
常時7~8種類の銘柄をご用意している有料テイスティングカウンターがあるのですが、現在は新型コロナウィルの影響でサービスを停止しています。ソムリエがお気に入りのワインとの出会いを手助けさせていただきますので、再開の際にはぜひご利用いただきたいですね。
※サービスの利用は諸般の事情により中止しております。
「伊勢丹にワインを買いに行くことはあるけれど、ヴィンテージセラーがあることは知らなかった」という方も多いかもしれません。ソムリエは不在の場合もあるので、ソムリエにワイン選びを手伝ってほしいという方は、ご予約がおすすめです。お好みの1本を見つけに、ぜひ訪れてみてください。
宮沢 典芳(ミヤザワ ノリヨシ)
2002年より伊勢丹新宿店に勤務。1997年 田崎眞也氏主催「第1回コミ・ソムリエコンクール」最優秀賞。1998年 JSA認定ソムリエ資格を取得。懐石料理店、フレンチレストランにてソムリエに従事。恵比寿「カーブ タイユバン」を経て現職。現在はグランドカーヴでの接客コンサルティング、ヴィンテージセラーを中心とした商品選定等を主に行う。シャンパーニュの祭典「ノエル・ア・ラ・モード」を当時のバイヤーと共に立ち上げる。2017年・2018年 ジャパンワインチャレンジ審査員。2019年2月 コマンドリー デュ ソルト ブション シャンプノワ 叙勲。
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