重要無形文化財保持者(人間国宝)陶芸作品特集
有田焼白磁の造形美を追い求める井上萬二氏

重要無形文化財保持者(人間国宝)陶芸 有田焼白磁の造形美を追い求める井上萬二氏

つややかな磁肌と静謐さ漂う品格あるたたずまいが唯一無二の存在感を放つ、陶芸家・井上萬二氏の白磁。1600年代に生み出された日本初の磁器である有田焼のなかでも、染め付けをせず純白の地肌を際立たせる白磁は、作り手の高い技術と美意識をありありと映し出します。形が織りなす美を追い求め、技術を極め続けた井上氏が作り出す作品は、自身の最高傑作といえます。

※人間国宝は、重要無形文化財の技術保持者として各個認定された人物を指す通称です。

無色の世界、造形で魅せる品格

無色の世界、造形で魅せる品格

©井上萬二窯

一切の加飾をしない白磁の神髄は、造形の美しさにあります。器や花瓶といった純白の作品は、その形で、品格ややわらかさ、端正さ、そこはかとないあたたかさを感じさせます。井上氏の70年以上にもおよぶ作陶人生は、まさに造形美の追求とともにあります。

「白磁は、造形の道を進むもの。基本となる形の美しさを様々に展開し、自分だけの形を生み出していくものです」と語る井上氏。今までにない形、自分にしかつくれない形を作るのに必要となるのが、高度なろくろの技術です。

白磁丸形壷

白磁丸形壷
サイズ:径32.5×高32.2㎝
価格:2,200,000円

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当代随一の師に磨かれたろくろ技術

当代随一の師に磨かれたろくろ技術

©井上萬二窯

戦前祖父が窯を開き、戦後に父が再建し、三代目として跡を継ぐ井上氏が作陶の道に足を踏み入れたのは17歳の時。父のすすめで入門した柿右衛門窯で、ろくろ師として名高い初代奥川忠右衛門の技に出合いました。

当代随一とされる奥川氏の技を見たその瞬間を、「なんてすごい技だと身震いした。この人に近付きたいと思った」と井上氏は振り返ります。

柿右衛門窯での10年にもおよぶろくろ技術の修練のあとにも、より技術を磨くために佐賀県立窯業試験場に入り、陶土や釉薬、築炉、焼成など、あらゆる角度から徹底的に焼き物を研究しました。

その後、自らの窯に入り作陶活動に専念。それだけにとどまらず、アメリカでの陶芸技術指導や、ヨーロッパでの展覧会の開催など活躍の場は広がり、井上氏の高い技術は世界各国の芸術家や愛好家からも一目置かれる存在となりました。

白磁緑釉桐彫文耳付花瓶

白磁緑釉桐彫文耳付花瓶
サイズ:径23.5×高35㎝
価格:1,320,000円

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良い焼き物に必要なのは技術と心

良い焼き物に必要なのは技術と心

©井上萬二窯

卓越した技術と国内外での功績が評価され、1995年に66歳で重要無形文化財「白磁」保持者に認定、その2年後に紫綬褒章を受章し、白磁の第一人者としての地位を築きました。

重要無形文化財保持者(人間国宝)認定後も、自己を律する姿勢は変わりません。「名陶無雑」という座右の銘は、「良い焼き物には雑念がない」、つまり必要なのは技術と心であるという意味です。

齢90歳を超えた現在も作陶意欲は少しも衰えることはなく、日課である1時間のウォーキングで目にする自然から得た新たな発想をもとに、創作活動を続けています。

傑出したろくろ技術で究極の美を表現する井上氏の作品が、空間でいかに存在感を放ちまた調和するのか、ぜひご自身の目でお楽しみください。

作品紹介

お問い合わせ 03-3241-3311 大代表 美術工芸担当まで。

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