

近代フランス絵画から現在のアートシーンまで幅広くご紹介する「春の三越美術特選会」を、3月17日(水)~22日(月)まで、日本橋三越本店 本館6階美術画廊にて開催します。
今回は、第二次世界大戦以降のフランスにおいて評価の高いベルナール・ビュッフェについてご紹介いたします。田崎昌彦アシスタントバイヤーに、ビュッフェ作品の魅力を聞きました。
印象派画家の台頭とともに多くの画家が集い、世界のアートシーンの中心地を担ってきたフランス・パリ。大戦後その役割はアメリカ・ニューヨークへと移行し始めていました。
多くの芸術家がニューヨークへ去りつつある中、パリに現れたのが、当時10代の若き天才画家ベルナール・ビュッフェです。優れたフランス人画家の登場は、パリのアート界に差し込んだ光明でした。ビュッフェが築き上げていく画家としての地位は、その才能はもちろんのこと、国を挙げてアートを後押しする動きの中で確立されたものだったともいえます。
ベルナール・ビュッフェ
「黄色い本のある静物」1964年
30号
33,000,000円
戦前にブームを巻き起こした印象派やキュビズム主義に共通しているのは、それまで主流だった宗教画や戦争画とは異なり、日常の景色を主観的に描く自己表現であったことが挙げられます。
ビュッフェが高く評価されたポイントは、自己表現としての絵画というスタイルを継承しながら、自らの技法を用いてビュッフェならではの作風を生み出したことにあります。
ビュッフェの絵画の特徴が色濃く表れている作品の一つが、「黄色い本のある静物」です。目を引きつける赤色の壁の前にはマッチや瓶、本が置かれていますが、よく見ると少し不自然な角度であることがわかります。これは、複数の視点から対象物を観察して一つの絵画に再構築するという、セザンヌが確立した多角的視点の技法によるものです。ビュッフェはこの技法を用いて、自らのものの見方や捉え方を基軸にしながら作品を描きました。
さらに特徴的なのは、そのキャリアを通じてビュッフェの作品でよくみられた、針金のような力強い輪郭線と塗り重ねられた絵具です。ビュッフェの激情を投影するかのような描き方で、静物画でありながら生命がうごめいているかのような躍動感を生み出しています。
作品について語る田崎昌彦アシスタントバイヤー
今回、日本橋三越本店で開催する「春の三越美術特選会」では、ご紹介したベルナール・ビュッフェをはじめ、ユトリロやシャガールといった近代フランスを代表する作家の作品もご紹介します。
そのほかにも、私たちが自信をもってご紹介するジャンルを超えた選りすぐりの作品も展示いたします。お買い物やお食事の際に、ぜひ足を運んでいただけますと嬉しいです。
「春の三越美術特選会」
3月17日(水)~22日(月)最終日午後5時終了
日本橋三越本店 本館6階 美術特選画廊
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