〈MOHEIM〉ディレクター 竹内茂一郎さんに聞く

「時を経ても古びることのない普遍的な美しさと、満たされた日常の風景」をデザインするライフスタイルブランド〈MOHEIM/モヘイム〉。「当たり前のように、いつも静かにそこにあって 主張しすぎず、ずっと大切にしたいデザイン」をカタチにし、暮らしの風景の新しいスタンダードを創造し続けています。ディレクター兼デザイナーである竹内茂一郎さんに、そのこだわりと今後のビジョンを伺いました。
竹内茂一郎
1975年福井県生まれ。2001年桑沢デザイン研究所卒業、2008年SHIGEICHIRO STUDIOを設立。家具やプロダクト、空間、グラフィックなどの幅広い分野でデザイン・ディレクションを手がける。時代や流行に左右されず、真の美しさや機能性を引き出す古びないデザインを追求し、クライアントやユーザーの多岐にわたるニーズに柔軟に対応する創造力が高い評価を得ている。
〈MOHEIM〉のこだわり、そして大切にしていること
──〈MOHEIM〉の名前の由来を教えてください。
実家に古くから伝わる屋号「茂兵衛」から着想しました。ブランド名を考えるにあたり、日本人にとってなじみのあるレトロな響きがあり、無国籍な印象になる名前にしたいと思い、名付けました。
──デザインをする上で大切にしていることは何でしょう。
「飽きないデザイン」「時間が経っても古びないもの」を作りたいと、常に考えています。デザイナーを志し始めたときから、いいなと思うものはいつも「シンプルで、時代に左右されない美しさや機能美を備えているもの」が多かった。それゆえ〈MOHEIM〉では、「シンプルであること・多用途性、機能性の高さ」に限界までこだわったモノづくりを大切にしています。 例えば「TROLLEY」というワゴンは、キッチンだけではなく、文具などを置いてデスク横でも違和感なく使えるデザインです。上下段の天板がトレイとして使える点も、ありそうでなかったうれしい機能と喜ばれています。
──出身地である福井県が、竹内さんに与えた影響はありますか。
子どもの頃から親しんできた福井の自然が無意識のうちにインスピレーション源になっているかもしれません。大学進学を機に故郷を出たあと、偶然にも福井を拠点とする〈MOHEIM〉を立ち上げることになって、改めて鯖江のメガネ、越前漆器や和紙など、伝統を受け継ぎながら新しいことに挑戦する人たちがたくさんいる「モノづくりの福井」を実感しました。
一過性のお気に入りではなく、長く暮らしに寄り添うものを
──「強い想いで見出されたデザインに囲まれて暮らすこと」は、人々の心や時間にどのような影響を与えると思いますか。
お気に入りのアートやファッションを身の回りに置いたり、身に着けることで感じられる幸せは、その人の心や生活を豊かなものにする上でとても大切だと思っています。作り手の強い想いで作られたものは、一過性や使い捨ての「お気に入り」ではなく、その人のライフスタイルや好み、年齢が変わっても長く使い続けられるものとなり、より深い満足感を与えてくれると考えています。
──今“Stay Home”が求められ、人々は改めて「自分の住まいの心地よさ」を考えつつあります。
世の中が大きく変わろうとするときは、本当にいいものや必要とされるものが見直されるときです。多くの人が、以前よりもこだわりを持って「毎日使うもの」を選ぶようになっていると思います。
〈MOHEIM〉のアイテムはすべて、色違いで揃えられてインテリアになじみやすく、日常的に家族で使えることなどを大前提に作られています。また、価格やコンパクトなサイズ、機能性も、多くの人にとっての「ちょうどいい」ブランドとして皆さまの暮らしに寄り添う存在でありたいですね。
──三越伊勢丹のお客さまの暮らしやデザインへの想いと、〈MOHEIM〉のブランドコンセプトが通じ合うのはどのような点でしょうか。
伊勢丹や三越にいらっしゃるお客さまは、質の高い洗練されたライフスタイルを期待していると感じています。単に流行を追いかけるのではなく、上品に自分らしさを表現する方が多いのではないでしょうか。〈MOHEIM〉の製品には、素材や職人の技術、優れたデザインが際立つさりげない存在感があり、多くのお客さまに気に入っていただけると考えています。
今後のビジョンと、新たに挑戦したいこと
──今、注目している技術や暮らしの道具はありますか。
個人的には、プラスチックなどの素材に竹やコーヒー豆、麦などの自然素材を混ぜた樹脂などのエコ素材に注目しています。環境にやさしいだけではなく、異素材を混ぜ合わせることで生まれる独特の手触りやテクスチャーに、面白さと魅力を感じています。また、インドの金属食器加工の技術を活かしたインテリアや、「おうち時間」が増える中で、日本人が好む光の照明も作ってみたいですね。
──「メゾン・エ・オブジェ・パリ 2020年 1月展」に出品されたそうですが、いかがでしたか。
〈MOHEIM〉のブランドコンセプトは、国や人種を超えたボーダレスな概念です。日本人の僕が「美しい」と思って作った〈MOHEIM〉のシンプルな機能美に、魅力を感じてくれる人が世界中にいて、色々な国から問い合わせをいただいているという事実が、それを証明してくれていると思います。
──今後の〈MOHEIM〉が発信、挑戦したいこと。守り続けたいことをお聞かせください。
ファッションや自転車、家電メーカーなど、異業種とのコラボレーションをやってみたいですね。また、国内外のデザイナーからお申し出をいただくことも増えていますので、 協業することでより幅広く世界に向けて発信したいとも考えています。「古びることのない普遍的な美しさ」というブランドコンセプトをブレずに守りながら、まだ挑戦できていないこともぜひ実現していきたいと思います。