英国展バイヤー紀行|陶器の里 ストーク・オン・トレント編

英国の陶器の里ストーク・オン・トレント(Stoke-on-Trent)。英国中部に位置するこの街は、ロンドン・ユーストン駅から列車で約1時間半。陶器に適した豊かな土と、運搬に欠かせない運河などの地形に恵まれていたことから、炭鉱と陶磁器産業で栄えていました。17世紀頃にはたくさんの窯元があったそうですが、今でも英国を代表する陶器メーカーの工場が点在しています。
今回は、英国展でも大人気の<BURLEIGH/バーレイ>と、<Emma Bridgewater/エマ・ブリッジウォーター>の2つのファクトリーをめぐる、日帰り紀行をお届けします!
列車を降りると、歴史を感じるレンガ作りの駅舎
駅前にはウェッジウッド卿の銅像がお出迎え!
―<バーレイ>の工場 ミドルポート・ポタリーに到着!
タイムスリップしたかのようなレンガ作りの建物はビクトリア時代のもの。<バーレイ>は今もすべての生産工程をこの工場で行っていて、産業革命の頃の陶器産業の繁栄を今に伝えてくれます。工場は運河に面していて、当時は船で材料や製品を運んでいました。
朝一番だったので静かな雰囲気でしたが、日中は国内外からのツーリストで賑わうそう。看板の雰囲気も、何気なく置いてある道具も、素敵です。
<バーレイ>の工場ミドルポート・ポタリー
―工場閉鎖の危機から復活を遂げた<バーレイ>
今も大切にされているこの歴史あるミドルポート・ポタリーも、一時は海外製の安価な陶器に押され閉鎖の危機に追い込まれていました。当時の工場は荒れ果て、職人たちもいなくなってしまったと聞きます。
その危機的状況を救ったのが、チャールズ皇太子(当時)が代表を務めるPrince’s Regeneration Trustでした。2011年に工場を買収し、多額の資金を投じて3年にわたる改修工事を実施。「それによってストーク・オン・トレントの産業と職人技が守られたんですよ」と教えてくれました。
工場の様子と<バーレイ>で働く人たち
―170年以上続く生産工程
実際に生産現場を見学すると、これだけたくさんの工程を重ねて人の手を介して作られていることに、凄さを実感します。時間と手間に加えて、職人の技術を要するこの製法をこの地で続けているのは、今では<バーレイ>だけ。工場閉鎖の危機を乗り越えたからこそ、絶やさずに後世に繋げてほしいと強く感じました。ここで生まれる器たちは、一つひとつの色の濃淡や風合いの違いがあり、それがまた愛おしく感じます。
陶器の型作りから、銅版転写まで、一貫生産のこの工場。事前予約で工場見学も可能です。ちょっとずつ、なじみの形になっていく様子や、素焼きの陶器が整列している姿がなんともかわいい!
職人の手によって一つひとつ仕上げられる陶器たち
三越英国展 2023に、初めて<バーレイ>から転写の柄付け職人が来日し、伝統的な銅版転写の技を披露しました。
※来日イベントは終了しました。
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英国から来日した、職人ルーシー・エイリーン・レイ氏
―ファクトリーショップやカフェは、英国陶器好きにはたまらない空間!
当時の様子を残しつつ、工場の敷地内にはショップやカフェも。
ここに足を踏み入れたら、食器を手に取らずにはいられません!お得な掘り出し物に出会えるのもファクトリーショップならでは。これだけ揃っていると迷ってしまいますが、お財布との相談というよりも、これはもはや、スーツケースに入るかどうかの問題です・・・。工場での見学を通して、どうしても絵柄のズレや、インクの飛び跳ねが出てしまうことを実感して、あえて、ちょっと個性的な器を記念に購入しました。
<バーレイ>のカフェは、英国の田舎らしい雰囲気を感じながら、紅茶や焼き菓子・軽食を楽しむことができます。素朴な味と、さりげない器のミックス&マッチコーディネートがかわいくて、英国展の打ち合わせに必死だった心が和みました。
<バーレイ>のファクトリーショップ
<バーレイ>のカフェ。ミルクティーを囲んで、英国展の打ち合わせ。
ショップの2階には美しいテーブルセッティングのディスプレイが。日本未発売の柄もたくさん並んでいて、時が経つのを忘れて見てしまいます。
昔オフィスとして使われていた場所は、今はミュージアムになっていて、古い資料が当時の雰囲気で飾られています。オールドバーレイのバリエーションも圧巻。「この当時は、こういうデザインが流行っていたのかしら?」「昔はこんな物も作っていたの!?」と、見ているだけで想像が膨らみます。
ショップ2階のディスプレイ
ミュージアムに並ぶオールドバーレイ

<バーレイ>ファクトリーショップの2階にあるショールームへようこそ。
特別なディスプレイや日本未発売の限定商品が並ぶ素敵な空間を、360度お楽しみください!
―水玉模様が愛らしい<エマ・ブリッジウォーター>に到着!
続いて訪れたのが<エマ・ブリッジウォーター>のファクトリー。あの水玉模様「ポルカドット」柄が目に飛び込んできました。創業1983年と歴史は浅いですが、英国女性の心をつかんで離さない人気ブランド。古い工場を買い取り、このストーク・オン・トレントの地で製品を作り続けているエマ。
ブランド誕生のきっかけは、エマ自身が母親にマグカップをプレゼントしようと探し回ったけれど、気に入ったものが見つからず自分で作ってしまったというから、なんだか夢があります。
<エマ・ブリッジウォーター>ファクトリー
―体験もできるエマの代名詞、型押し技法
<エマ・ブリッジウォーター>の特徴は、ハートやお花などをかたどったスタンプ状のスポンジに絵の具をつけて、素焼きの陶器に手で一つひとつ押し付ける型押しの技法。定番の水玉やハートや動物だけではなく、メッセージや名前をデザインしたもの、英国王室のコロネーションなどロイヤル関連のコレクションも人気です。
このファクトリーでは、この型押しの体験もできて、自分だけのオリジナルの食器を作ることもできます。後日焼きあがったあと、梱包して日本まで送ってくれるそうですよ。
型押し(ステンシル)の様子
絵付け体験ができるスタジオ

レンガ造りの建物が連なる中庭と、絵付け体験ができるデコレーティングスタジオを、360度でお楽しみください!
―可愛らしい世界に浸れるショッピングとティータイム
こちらもショップでのお買い物とカフェでのティータイムは欠かせません!<エマ・ブリッジウォーター>の可愛すぎる世界観を堪能できます。カフェで提供されるカップやプレートは、絵柄もバラバラ、知らない人の名前入りもあったりして、それもまた可愛い!事前予約が必要ですが、アフタヌーンティーも人気とのこと。今回は真冬だったので見ることができませんでしたが、季節が良いと敷地内にあるガーデンもきれいだそうです。
英国展では、<エマ・ブリッジウォーター>の定番ポルカドットから、フラワーシリーズ、ブリティッシュコレクションなど、人気アイテムや新作をセレクトしてご紹介します。ぜひお気に入りを見つけにいらしてくださいね。
敷地内にある<エマ・ブリッジウォーター>のショップ
可愛らしいカフェ
―旅を振り返って
ファクトリーツアーだけでなく、直営ショップやカフェも充実しているストーク・オン・トレント。今回は時間の都合上回れませんでしたが、<ウェッジウッド>の工場や<スポード>のミュージアムもあるので、器好きの方にはぜひロンドンから足を伸ばしていただきたいスポットです。
ちなみに、帰りの列車は原因不明(?)の運休になってしまい、小さな駅が大混乱。なんとか別のルートを使って深夜にはロンドンのホテルに帰ることができました。列車ダイヤ乱れは「イギリスあるある」だそうなので、訪れる機会がある方は余裕をもったスケジュールを組むことをおすすめします!
ストーク・オン・トレント駅
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