【ピース de ミライ】尾州に眠るテキスタイルに<デパリエ>が強さと美しさを注ぐ

【ピース de ミライ】尾州に眠るテキスタイルに<デパリエ>が強さと美しさを注ぐのメインビジュアル

「Classy(品)」で「Gorgeous(華やか)」なファッションを、ブランドとの「共創」でカタチにする伊勢丹新宿店 本館3階のコンテンポラリー。アップサイクルプロジェクトの「ピース de ミライ」で取り組んだのは、尾州の倉庫に眠るデットストック生地に再び光を当てること。同じゴールを一緒に目指した<DÉPAREILLÉ/デパリエ>のディレクターの大槻 聡士さんと、バイヤーの山﨑 真奈に今回のプロダクト開発について振り返ってもらいました。

<DÉPAREILLÉ/デパリエ>×「ピース de ミライ」

□2025年4月9日(水)~4月22日(火)
□伊勢丹新宿店 本館3階 コンテンポラリープロモーションスペース

<デパリエ>に託した「現代女性の強さと美しさ」の表現

  • バイヤー山﨑 真奈の対談風景の画像

山﨑:私たちが尾州に注目したのは、アップサイクルに加えてジャパンクオリティも表現したかったからです。世界三⼤⽑織物産地と言われるぐらいなので品質基準のハードルも高く、だからこそ「サンプルだから」「残反だから」と埋もれさせたくなかったんです。この企画をお伝えした時に大槻さんは快諾いただきましたが、テキスタイルにこだわる<デパリエ>として尾州への思い入れもあったのでしょうか。

大槻:<デパリエ>は「ファッションがオートクチュールからプレタポルテへと変わった60年代の着こなし」をテーマにしていて、マニッシュな雰囲気を大切にしています。紡績から織りまで産地で一貫している尾州のテキスタイルは、<デパリエ>が表現したい世界観にふさわしく、これまでにコレクションに採用した国産生地はほとんどが尾州産です。日本を代表する⽑織物産地として思い入れは強いです。

山﨑:メンズファッションのイメージがある尾州のテキスタイルですが、それを婦人服で取り組むと決めた時にすぐに浮かんだのが<デパリエ>でした。クラシックなテイストの尾州のテキスタイルを使用するなら「現代女性の強さと美しさ」をテーマにしたいと思い、それは「マニッシュだけれどしなやか」という<デパリエ>のコレクションと重なりました。私だけではなくてチームの全員が同じ気持ちでした。

  • ディレクター大槻 聡士さんの対談風景画像

大槻:私は尾州のテキスタイルからは「人の愛情」のようなものを感じるんです。紡績から染め、織りまで手仕事が宿っていて、一つひとつの色柄、織柄にストーリーがあるからだと思います。それこそがいちばんの魅力ではないでしょうか。

テキスタイルを選んだ瞬間に浮かんでいたアイテムの構想

  • テキスタイル選びの際の風景画像

山﨑:洋服に仕立ててほしいテキスタイルを尾州で選び、大槻さんには100種類以上も見本をお渡ししましたけど、そこから絞り込んでいくのは大変ではなかったでしょうか。

  • ディレクター大槻 聡士さんの対談風景画像

大槻:テキスタイルを眺めるのも触るのも大好きなので、100種類ぐらいならむしろ少なく感じました。今回の企画では僕自身が尾州を訪れることはなかったですが、もしも倉庫に足を運んでいたら何時間も籠っていたと思います(笑)。

山﨑:最終的に13種類のテキスタイルから14ピースを制作いただきましたが、大槻さんはどのようにして選んだのでしょうか。

  • <DÉPAREILLÉ/デパリエ>×「ピース de ミライ」のルック画像

大槻:テキスタイルに触れた時点で作りたいと思う洋服が頭に浮かんでいました。「この色柄や織りをあのアイテムに落とし込めばいいものができる」という発想で、それが<デパリエ>のいつものやり方です。<デパリエ>というブランド名には「交差」や「複合」という意味を込めていて、今回も同じチェックでも色調が異なる柄でパターンオンパターンのコーディネートを楽しんでほしいと思っていました。

山﨑:今回完成した洋服はどれも想像を超えるほど素敵で、倉庫で眠っていた状態を知っている私たちからすると、信じられないぐらい輝いていました。伊勢丹新宿店のお客さまはライフスタイルが多様ですが、それぞれのシーンに寄り添えるアイテムだと思っています。

三者混がもたらすマニッシュ&リラックス

  • <DÉPAREILLÉ/デパリエ>×「ピース de ミライ」のルック画像

  • <DÉPAREILLÉ/デパリエ>×「ピース de ミライ」のルック画像

    <デパリエ>ジャケット 110,000円
    □伊勢丹新宿店 本館3階 コンテンポラリー
    ※写真の商品は現品限りです。
  • テキスタイルのアップ画像

山﨑:私が現地でひと目惚れしたのがブラウンのチェック柄にオレンジのペーンを乗せたテキスタイルでした。「これでジャケットを仕立ててほしい」という個人的な願望があり、でも大槻さんには伏せていたのですが本当に想いが叶って感激しました。

大槻:これはベースがウールでモヘアとリネンを混紡しているんです。柔らかさとハリ感のバランスが絶妙で、パキッとし過ぎず奥行きのある杢調のグレンチェックも<デパリエ>らしいと思いました。着た時に程よいリラックス感も生まれると思いますが、マニッシュな要素も加えたかったのでボックスシルエットにしました。

山﨑:「肩掛けでもサマになるジャケット」というのが私の第一印象でした。

大槻:<デパリエ>のジャケットは「肩で着る」ということにこだわっているので、肩幅などもすごく細かく計算しています。

しなやかなウールの優雅さが一枚着で映える

  • <DÉPAREILLÉ/デパリエ>×「ピース de ミライ」のルック画像

  • <DÉPAREILLÉ/デパリエ>×「ピース de ミライ」のルック画像

    <デパリエ>サロペット 77,000円
    □伊勢丹新宿店 本館3階 コンテンポラリー
    ※写真の商品は現品限りです。
  • テキスタイルのアップ画像

山﨑:こちらのサロペットのテキスタイルはどういう観点で選んだのでしょうか。

大槻:ブラウンジャケットと同様にオレンジのペーン柄なので、ジャケットとのコーディネートで美しい調和が生まれるだろうと選びました。ウール100%なのですが細番手なのでしなやかな落ち感もあって、一枚着で主役になるサロペットのテキスタイルとして最適です。こちらはギャザーなど女性らしいディテールを意識しています。

山﨑:試着をしたチームのメンバーの開口一番が「着心地がすごくいい」でした。ジャケットを羽織ればお仕事スタイルとしてもキマりますし、初夏や夏は一枚着で軽快に楽しめるのでワードローブとして重宝するのは間違いないと思います。お客さまには毎日でも着ていただきたいくらいです。

静かな美しさを秘める精緻なヘリンボーン

  • <DÉPAREILLÉ/デパリエ>×「ピース de ミライ」のルック画像

  • <DÉPAREILLÉ/デパリエ>×「ピース de ミライ」のルック画像

    <デパリエ>
    ジレ 88,000円
    パンツ 55,000円
    □伊勢丹新宿店 本館3階 コンテンポラリー
    ※写真の商品は現品限りです。

大槻:先ほど山﨑さんはブラウンのテキスタイルにひと目惚れしたと言っていましたが、私にとってはこのヘリンボーンでした。職人の熱い想いが込められているかのような精緻な織り柄に瞬間的に心を掴まれました。

山﨑:大槻さんが職人さんへの思いも馳せてくださったことがうれしいです。おそらくメンズ向けのテキスタイルですが光沢感もストライプ柄も主張は穏やかで、<デパリエ>の繊細なクリエーションと相性がいいのではと思いました。

  • テキスタイルの画像

大槻:本当に素晴らしいテキスタイルだったので、単品ではなくジレとパンツを作ろうと即決しました。品格がアップするという意味でセットアップで着こなしていただきたいですね。お客さまにとってちょっと特別な一着になってくれたらうれしいです。

サステナブルでもあるファッショナブルを届けたかった

山﨑:大槻さんは今回の取り組みをどのように感じましたか。

  • ディレクター大槻 聡士さんの対談風景画像

大槻:純粋に楽しかったですよ(笑)。この取り組みを本格的にスタートする前に、「ファッションの現在地」を整理するために自分でプロローグのようなものを考えてみたんです。コロナによって衣服の価値観や役割が様変わりしましたが、やはりあらためて思ったのが「ファッションがもたらす高揚感」を届けたいということでした。流行に捉われないためには本当にいい物を生み出すことが必要で、そのために産地の素晴らしい技術を見つめ直す「ピース de ミライ」はすごくいいプロジェクトだと思いました。

山﨑:「ピース de ミライ」で販売される14ピースはどれも<デパリエ>らしさにあふれていますが、そのプロローグを通じてどのような思いが生まれましたか。

大槻:ファッションの在り方をこれからも自問自答し続けていくんだろうなと。職人技や伝統文化をリスペクトすることで、人の感情や感性に訴えかける洋服ができたのではないかなと自分では思っています。

  • <DÉPAREILLÉ/デパリエ>×「ピース de ミライ」の商品画像

山﨑:今回のプロジェクトの主旨はアップサイクルです。そこに共感してくださるお客さまもいらっしゃるはずですが「サステナブルだからこの服を選んでください」ではなく、伊勢丹新宿店としてはファッションの喜びをお届けしたかった。日本の産地と向き合いながらアップサイクルを実現でき、生み出すことができたことを私たちは大変嬉しく思います。大槻さんのクリエーションのおかげです。本当にありがとうございました。

大槻:こちらこそありがとうございます。同じような取り組みをまた一緒にできたらと思っています。

  • 大槻さんと山崎の対談風景画像

    大槻 聡士
    文化服装学院卒業後、渡仏。国際デザインコンテスト「Le club des createurs de beaute」、「Dinard international festival」受賞。Jean-Paul GAULTIER,TSUTSU, BALMAIN PARIS, Martin Margiela, BALENCIAGA, GIVENCHY, ISABEL MARANT といったパリのメゾンにて11年間デザイナー、モデリストとして活躍する。帰国後、1er Arrondissement を立ち上げる。

    山﨑 真奈
    2018年三越伊勢丹に入社。伊勢丹新宿店のリ・スタイル、インターナショナルデザイナーズにてアシスタントバイヤーを経験後、2024年度から現担当のコンテンポラリーのバイヤーに着任。

伊勢丹新宿店 本館3階 コンテンポラリー

周囲との調和を大切にしながらも、ファッションを通じて自分自身をアップデートできる程よく旬なリアルクローズと出会えるゾーン。「Classy(品)」な大人の余裕を感じさせる洋服、「Gorgeous(華やか)」な大人の遊び心がある洋服など、時流を超えて洗練されたファッションが揃う。

&C.project

「&C.(アンドシー)project」とは、「Creator」と「Creation」することで独自性のあるオリジナルアイテムを生み出す伊勢丹新宿店 本館3階 コンテンポラリーの独自プロジェクト。伊勢丹新宿店からのテーマに合わせて、デザイナー自身が捉えた時代性を反映したアイテムを提案。