【インタビュー】自然と心を揺さぶられるのがコンテンポラリーな服|<デパリエ>ディレクター 大槻 聡士

2023年9月に「自分と装いの、新しい現在地。」がコンセプトの伊勢丹新宿店 本館3階 コンテンポラリーへ出店した<DÉPAREILLÉ/デパリエ>は、自分らしさを表現する女性に支持されています。
「ファッションとはエレガンスであること」と話すディレクターの大槻 聡士さんに、女性を最も美しく見せるコンテンポラリーな服について語っていただきました。
※本記事の取材は2023年8月に行いました。
伊勢丹新宿店 本館3階 コンテンポラリー
周囲との調和を大切にしながらも、ファッションを通じて自分自身をアップデートできる程よく旬なリアルクローズと出会えるゾーン。「Classy(品)」な大人の余裕を感じさせる洋服、「Gorgeous(華やか)」な大人の遊び心がある洋服など、時流を超えて洗練されたファッションが揃う。
&C.project
「&C.(アンドシー)project」とは、「Creator」と「Creation」することで独自性のあるオリジナルアイテムを生み出す伊勢丹新宿店 本館3階 コンテンポラリーの独自プロジェクト。伊勢丹新宿店からのテーマに合わせて、デザイナー自身が捉えた時代性を反映したアイテムを提案。
パリで学んだヨーロッパの服飾史へのリスペクト
─<デパリエ>は伊勢丹新宿店としては新ブランドになるのですが、コンテンポラリーゾーンからのオファーをどう思いましたか。
大槻:世の中が多様性というものを受け入れるようになってきて、自分らしい個性をファッションでも表現できるようになってきています。「自分と装いの、新しい現在地。」というのはまさにそんな時代性を表していると思いますし、服作りに対してトレンドを追い求めることをしない<デパリエ>の考え方にとてもマッチしているのでオファーを断る理由はありませんでした。共感できるコンセプトだなっていうのが第一印象です。
─<デパリエ>の服作りに対する考え方というのは具体的にはどのようなことでしょうか。

大槻:コンテンポラリーゾーンのコンセプト同様に、ブランドとして現代的であることは意識していますが、すべての出発点は「今、自分が作りたいのはどんな服か」ということです。そこから素材は、ディテールはどうするかと膨らませていくのが私のやり方です。今季はどういうシルエットにするかということからスタートしてバランス感やボリューム感を考えますし、女性らしい美しいシルエットを引き立てるドレーピングを生み出すために素材の多くはオリジナルにこだわっています。<デパリエ>としてコンテンポラリーであり続けるということは、現在は世の中に存在しない魅力あふれる服を作り、新たな世界観を生み出し続けることだと捉えています。
─<デパリエ>というブランドのアイデンティティーが優先されるということですね。
大槻:私はパリのメゾンで11年間働いた経験があり、ヨーロッパの服飾史というものをリスペクトしています。パリで一緒に仕事をしたクリエーティブディレクターやデザイナーは現代の服を作るにしても1920年代はエレガンスでクラシックだった、40年代や50年代はこんなムードだったと必ず過去のファッションを紐解いていくんです。人を惹きつけるデザインやシルエット、ディテールというのは時代を経ても変わるものではないです。それを後世に伝えていく、残していくことも私の役割のひとつだと思っているので、ファッションの歴史そのものを感じられるような要素を現代的にアップデートして<デパリエ>の服に落とし込むようにしています。
─<デパリエ>のアイテムは一つひとつに個性を感じても世界観が一貫しているのは、大槻さんのパリでの学びが根底にあるからなんですね。

大槻:私としてはファッションがオートクチュールからプレタポルテへと変わって、アートでもシネマでも新しい試みに挑む世代が現れたヌーベルバーグとも呼ばれる1960年代のフランスの時代背景にいちばん惹かれます。60年代のフォーカスというのはブランドを形成する大きな要素でもあります。「デパリエ」という言葉もいろいろな要素が組み合わさってひとつのものができあがるという意味があるんです。それはファッションでもアートでもシネマでも、まさに60年代のフランスに見られた背景です。タグにも「75006 Paris.」とあるのですが、これはパリ6区を意味し、プレタポルテの原点の地であるオマージュです。
─これまでポップアップで出店いただいたときに、お客さまから多かったのがラグジュアリーだけでもモードさだけでもない「伊勢丹新宿店にありそうでなかったブランド」という声でした。

大槻:<デパリエ>を立ち上げたとき、自分らしいファッションを自分で選ぶことができる審美眼のある大人の女性に届けたいという思いがありました。私が思い描いていた女性像と伊勢丹新宿店のお客さまは重なる部分があったと思います。
─<デパリエ>の服は華やかさもあって、上品さもあって、伊勢丹新宿店のお客さまのライフスタイルにマッチしていると思います。
大槻:20代で渡仏して、現地で初めて観たパリ・コレクションの華やかさに感動したことは何年経ってもはっきりと覚えています。その時代ごとで自然と心を揺さぶられるのが「コンテンポラリーな服」だと思います。<デパリエ>の服は私がパリのメゾンブランドで学んだこと、体験したこと、経験したことを表現のベースとしているので、それが伊勢丹新宿店のお客さまに届いたのであれば大変喜ばしいことです。
─私は<デパリエ>を試着したことがあるのですが、ハンガーに掛かっているのと実際に着てみるのとでは印象がガラッと変わったのが驚きでした。

大槻:現代を生きる女性が美しくなれる、格好良くなれる、それを叶えるのが<デパリエ>だという思いがあるので、「服は人が着ることで初めて完成する」という考えを大事にしています。<デパリエ>の服はエレガントなんだけれど、どこかしらマニッシュな雰囲気が漂うとよく言われるんです。アイコンのジャケットなどは着用したときのハンサムな感じは<デパリエ>ならではだと。それは私が物作りにおいていつも思い描いているイメージを具現化するためにこだわりを追求していることも影響しているのかなと思います。
─女性の身体を包み込むような着心地のよさは私も身をもって体験しています。
大槻:目に見えない縫製部分にもこだわりますし、随所に取り入れたハンドの技法がもたらす着心地のよさ、心地よさを気に入ってくれるお客さまは多いですね。伊勢丹新宿店のポップアップで接客を担当したスタッフからは、じっくりとご試着いただく方が多くいらっしゃったと聞いています。ジャケットやアウター、それに合わせるインナーのニットもと。パンツを探していたのだけどスカートにも興味を持っていただけたり。実際にお袖を通すことでしかわからない着心地の良さや着映えする格好良さをぜひ一度体験していただきたいです。
常に斬新なコンテンポラリーファッションの提案を
─<デパリエ>からご提案いただいたこの秋冬の「&C.project」は、ブランドが得意とするフランス製の素材にこだわったと伺いました。
大槻:伊勢丹新宿店限定となる「&C.project」のラインはひとつの共通テーマとして、フランス製の素材を選んでいます。この秋冬の<デパリエ>は時代を超越してファッションシーンに影響を与え続けてきた女性「ルル・ド・ラ・ファレーズ」がテーマなんですが、彼女が愛した素材がスパンコールでした。袖に特徴をもたせたオーバーシルエットなのでふわりとしたプリーツスカートなどを合わせて、ボリューム感のある着こなしでよりエレガントなムードを楽しんでもらえたらと思っています。

大槻:ロングジレもフランス製のツイード素材です。やはりインポートだからこその表情というのはあって、ざっくりとした風合いが特徴の素材でもどこか優美さを漂わせます。カジュアルに羽織ることもできますが、雰囲気は少しマニッシュだからこそインナーはあえてボウタイやレースのブラウス、シアーなニットなどでエレガントさをプラスして、大人の女性ならではのバランスで着こなすのがおすすめです。
─ショップを構えることで、大槻さんが伊勢丹新宿店のお客さまに提案していきたいこと、発信していきたいことなどはありますか。
大槻:ショップを構えるということは、その場所から常にブランドの世界観を発信し続けることだと思っています。ジャケットひとつをとっても、シルエットやディテールが変化していくこともありますが、アイテムそのものが醸し出す<デパリエ>らしさというのは変わらないはずです。いずれはグローバルな展開というのも構想としてはありますが、まずは伊勢丹新宿店のお客さまに新鮮であり斬新、コンテンポラリーと感じていただけるファッションを提案していきたいと思っています。