【インタビュー】大人の女性の審美眼に叶う服|<エステータ>ディレクター 高橋 リタ

オンワードが高感度な大人の女性に向けて2023年秋冬コレクションからスタートさせた<estèta/エステータ>。新たなファッションゾーンの伊勢丹新宿店 本館3階のトラストスタイルで展開しているブランドのひとつで、スタイリストの高橋 リタさんがディレクションするクリーンで知的で気品のある日本の美意識を体現しているかのようなアイテムは大人の女性から圧倒的な支持を得ています。ブランドコンセプトである「審美眼」。それをどのように服作りに落とし込んでいるのか高橋 リタさんにお話を伺いました。
<エステータ>ポップアップストア
□2月28日(水)~3月5日(火)
□伊勢丹新宿店 本館3階 トラストスタイル プロモーション
※掲載の情報につきましては、諸般の事情により予告なく変更・中⽌させていただく場合
がございます。予めご了承ください。必ず事前にホームページを確認してからご来店くだ
さい。
TRUST STYLE/トラストスタイル
「いま」の大人の女性に「信頼」と「確かさ」を備えた洗練されたクラス感にあふれるファッションをご提案するゾーン。旬をほどよく取り入れたデザインと上質な素材にこだわった、大人の女性のライフシーンをアップデートさせるファッションスタイルが揃います。
□1月31日(水) リフレッシュオープン
□伊勢丹新宿店 本館3階トラストスタイル
制服を知らなかったからこそ自然と身についた着まわし術
─リタさんといえばブランドのディレクションも幅広く手がけていますが、本業のスタイリストとしての歩みを知りたいです。

高橋:小学校から短大まで私服の学校だったので、実は、制服というものを着たことがない人生だったんです。学校行事などのシーンに合わせて、毎日の着まわしを考える必要がありました。その時に身につけたコーディネート術は、今のスタイリストという仕事にとても役立っているような気がします。
─着まわしというのを小学生の頃から考えていたなんて驚きです。
高橋:ファッションが好きな両親からの影響や、学校の先生からも好感が持たれるトラッドなファッションが中心でした。短大の時に赤文字系と呼ばれていたファッション誌の読者モデルをやっていたのですが、その時の編集者から「ファッションに関する女子大生のリアルな声がほしいから手伝ってほしい」とお声がけいただきました。それがスタイリングをディレクションするという私のスタイリスト人生の始まりです。
─リタさんがスタイリストになったのは読者モデルからの流れだったのですね。
高橋:女子大生ブームの時代だったこともあり、スタイリストになるためのアシスタント経験はほぼないままスタイリストになってしまいました。『CanCam』で何年か経験を積んだ頃、働く女性をターゲットにした『Oggi』が創刊。私の年齢ともスタイリストのキャリアともぴったりだと編集部からお仕事の依頼が。『Oggi』での一番の思い出は、女性ファッション誌ではおそらく初めてのスタイリスト個人が名前を立てた企画を手がけたこと。「別冊高橋 リタ」といった感じの付録で、生い立ちのことから私生活の愛用品まですべてを公開しました。
─スタイリスト本の元祖のような感じですね。
高橋:当時、私自身がその雑誌の読者層と同世代だったので私のプライベートや着ているもの、愛用しているものを知りたいという声がすごく多かったみたいです。『Oggi』のお仕事は約15年続けたのですが、その後「リタさんの同世代に響くリアルなスタイリングを提案してほしい」と『Precious』からオファーがありました。私はスタイリストとしてきちんと勉強をしていないというのがコンプレックスだったのですが、ベーシックにひと匙加えるという時代が求めるスタイリングとうまくハマったと思っています。スタイリングは作り込みすぎることはせず、女性がそのコーディネートをどんなシーンで着ているのかが見えてくるようなリアルさを大切にしています。
─リアリティというのはブランドのディレクションをするうえでも意識していることでしょうか。
高橋:意識はしていますね。ファッションに関するリアリティというのは母からも鍛えられたと思っています。子供の頃によく母から教わったのが、色の微妙なトーンの見極め方。たとえば、いろいろなブラウンを並べて、「このブラウンとこのブラウンはどう違うか?」というクイズをしたり、組み合わせ方を習ったり。この経験によって、絶対音感ならぬ絶対色感のようなものを習得したような気がします。素材においても初夏に少し肌寒いからといってウールのニットを着ようとすると、それは季節にふさわしい素材ではないと注意されることも。私のモノづくりは、母からの教えも強く反映されていると思います。
「審美眼」を意味するブランド名をイタリア語にした理由
─オンワードと<エステータ>を一緒にやるようになったきっかけを教えてください。

高橋:オンワードさんとの最初のお取組みは<23区>の過去の名品を復刻させるという雑誌での企画でした。復刻アイテムをディレクションしたのは1回きりだったのですが、その時に私が手がけたプロダクトを担当の方が気に入ってくださり、私と<23区>のコラボレーション企画が新たにスタートしました。それが、現在も継続している<R/アール>です。そして今回、まったく新しいコンセプトの新ブランドのお話をいただきました。コンセプトやターゲットの方向性を確認したところ、<アール>とはまったく異なっていたので、私自身も新たな可能性を模索できるチャンスと思い、お受けすることにしました。
─<アール>と<エステータ>の方向性としていちばんの違いはどこにありますか。
高橋:「上質でベーシックであること」というのは共通している部分ではありますが、<エステータ>は少し辛口のモードを表現するようにしています。<アール>の時は「<23区>×リタ」という仮名称のようなものが最初からあったのですが<エステータ>はブランド名を考える、まさにゼロからのスタートでした。
─<エステータ>は「審美眼」という意味だと聞いていますが、どういう経緯でブランド名が決まったのでしょうか。
高橋:審美眼をイタリア語で「エステータ」というのですが、英語やフランス語ではなく、あえてイタリア語を選んだのは、イタリア人のファッションに対する考え方に共感することが多く、イタリアの洗練されたファッションスタイルが好きだから、というのが一番の理由です。イタリア人は自分にいちばん似合う服をよくわかっていて、たくさんある中から厳しく選び抜く目を持っています。出張でイタリアへ行った時、やっと欲しいアイテムが見つかったのに、私にぴったりのサイズがなく売ってもらえなかった経験があります。「あなたが最も美しく着こなすには、このサイズは適格ではない」とピシャリと言われました。その徹底したこだわりも「審美眼」だと実感。そんな記憶の引き出しから、ある日「審美眼」というキーワードが降ってきました(笑)。
─確かに<エステータ>は凛とした美しさを感じるので、どれもが大人の女性のための服という印象です。

高橋:年齢を重ねながらさまざまなファッションを楽しんできた女性が最後に辿り着く、選び抜く服でありたいと思っています。一見すると普通のブラウスのようでもパワーショルダーだったり、袖口がくるみボタンになっていたり、後ろで結ぶリボンが絶妙な長さであったり、どのアイテムもディテールにこだわることで程よくモードな要素を加えるようにしています。その大人にちょうどいいモードの匙加減のバランスを図るのがディレクターである私の役割。絶妙なディテール、抑えたインパクト・・・<エステータ>のアイテムには、大人の女性を美しく引き立てる要素を散りばめています。
─デザインがシンプルでも洗練された印象なのはきっと素材も上質だからですよね。
高橋:素材に関しては、シーズンの初めに膨大な量の生地サンプルを用意していただき、そこから私が触診してひらめいたものをアイテムごとに振り分けて決めています。生地はもちろんのこと、オンワードさんは縫製もパターンも生産背景が素晴らしく信頼できるので、私は本当に作りたいものを自由に表現させていただいています。
クリーンさと知的さと気品を表現するために妥協はしない
─モノづくりにはリタさんならではのスタイリスト視点も活かされていますか。
高橋:<エステータ>のアイテムはトータルコーディネートができる前提で作っているため、極めてベーシックなアイテムもラインナップに加えています。例えば、羽織りに少し装飾性がある場合、それはインナーがシンプルだからこそ際立つもの。どれもこれも主張が強いとコーディネートの全体感はゴテゴテになってしまいますから、ちょっとした引き算がカギになると思っています。ベーシックなようでも<エステータ>らしさには当然こだわっていて、カットソーの素材は超長綿のスーピマコットンを選んでいますし、襟元も繊細でスタイリッシュな始末にしています。着丈もコンパクトでありながら、お腹が出ないギリギリのバランスを計算しています。
─全身が<エステータ>でリアルな着こなしが完成するのは、リタさんらしい計算があったからなんですね。
高橋:私がスタイリングをする時に大切にしているのが「クリーンであること」、「知的であること」、「気品があること」です。この3つのキーワードは<エステータ>のモノづくりにも必ず落とし込むようにしています。
─クリーン、知的、気品はまさに伊勢丹新宿店のお客さまも感じ取っているようで、店頭でも「このブランドは?」と足を止める方がすごく多いです。

高橋:そういうお客さまの反応はもっともっと教えてください(笑)。皆さまがお持ちのベーシックアイテムにひとつ足すだけで今の気分になったり、お出かけしたくなったり、そういう風に<エステータ>を楽しんでくれたらと思います。伊勢丹新宿店はファッションにおいては百貨店の中でも最高峰ですから、そのお客さまにも認めていただけるのはとてもうれしいですね。
─そんな伊勢丹新宿店のお客さまが今欲しているジャケットアイテムについて教えてください。
高橋:ジャケットこそオンワードさんの確かな縫製とパターンが活かせるアイテムです。ブラックのジャケットは「シーンレス」をテーマにしています。Tシャツ&デニムパンツとの合わせならちょっと華やかな休日スタイルが完成しますし、インナーにブラウスを合わせればお食事会にもOKです。デザインはクールでも独特の表情や遊び心を添えたかったので、シアー素材をライニングのように使用しています。
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<エステータ>ジャケット 89,100円
※2024年1月31日(水)から販売予定です。(オンラインストアは2月28日(水)から販売予定です。)
□伊勢丹新宿店 本館3階 トラストスタイル
高橋:ツイードジャケットはリネン素材を選びました。ベージュ×ブラウン×ブラックの3色の糸で織っていて、さらにラメも入っています。ジャケットにとっては大定番のような生地ではありますが、最近は春から暑くなるような日も多く、厚手のツイードを敬遠される方も多いと思います。でもリネンなら、見た目の華やかさやニュアンスはありながら、着心地も爽やかでリアルクローズにピッタリ!ということで抜擢しました。普通のリネンジャケットだと表情も単調になったりしますがツイードにすることで大人っぽく仕上がっていると思います。
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<エステータ>ジャケット 89,100円
※2024年1月31日(水)から販売予定です。(オンラインストアは2月28日(水)から販売予定です。)
□伊勢丹新宿店 本館3階 トラストスタイル
─まだデビューして間もないブランドだけに<エステータ>がこれからどうなっていくのか楽しみです。
高橋:「審美眼」というコンセプトがブレることは絶対にないです。新作についてもその時の気分だったり、生地を触ることで思いついたり、瞬間的なひらめきが多いので、あまり先のことは考えていません。素材、縫製、パターンなどには妥協せず、大人の女性の審美眼に叶うような服を作り続けていきたいと思っています。