<Échapper/エシャぺ>休息の時間に寄り添う、白のタオル・パジャマ・ベッドリネン。

バスルームでからだを洗い流し、湯気に包まれて気持ちをリフレッシュする。一日を振り返って、眠るまでのひとときを過ごす。ベッドで瞳を閉じて、眠りにつく親密な時間。
どのような風景があれば、心から休むことができるのでしょうか。
「あたらしいラグジュアリー」をコンセプトとする伊勢丹新宿店のプライムガーデンと、スタイリストの井伊 百合子さんが、春を迎える3月下旬に提案したいと考えたのは、情報や装飾と距離を置き、身体そのものが心地よいと感じる、白の世界でした。

コラボレーションの相手として井伊さんが名前を挙げたのは、久﨑 康晴さん。フランス語で「逃げる」を意味する<Échapper/エシャぺ>のディレクターである彼は、井伊さんにとって、ものをつくることに対して深い愛を持つ「研究者」です。
久﨑さんが4年間もの歳月を費やし、試作と技術革新を積み重ねるなかで、自ら使い込み、納得して製品化に至ったリネンのタオルやベッドシーツ・コットンのパジャマ。それは、長い研究の道に連れ添った、熟練の職人のアイデアに支えられた逸品です。
この記事では、<エシャペ>というブランドの特徴はじめ、協業にあたっての井伊さんの想い、そして、プロダクトについて詳しく紹介します。1日をリセットして「またここからはじまる」という気分にさせてくれる、潔い白のストーリーを紐解いていきましょう。
生活文化を継承する、ものづくり。
<エシャペ>のプロダクトで目を引くのは、凛とした佇まいと美しい色合い。色の由来は、日本の山々に自生する熊笹、つよい生命力で盆栽としても愛好される黒松、神事にも用いられる、榊(サカキ)といった植物です。
これらの植物は、神社の境内に植えられていることも多く、日本で暮らす人々にとってはとても近しい存在。古くから日本での生活に馴染みのある植物だからこそ、<エシャペ>は、ブランドの基本カラーとなる深みのある緑、豊かな茶色、濃紺を抽出する原料にこれらの植物を選んだそうです。
生活風土に根付いた文化や精神、素材や技術を継承していくためにものづくりを行う<エシャペ>は、ボタニカルダイをはじめ、製品が生み出される過程で、社会や環境への配慮のもと生産していることも大きな特徴です。
シグネチャーとなる、リネンの原料である亜麻は、少ない水とエネルギーで育つ植物。害虫に強いことから農薬を必要とせず、環境保全に適した天然繊維です。また、大切な商品を包むのは、再利用しやすいように端を始末した、リネンの布と紐を用いた風呂敷のようなパッケージ。優れたものづくりと両立するこうした細やかなアイデアは、お店の在庫スペースにある大量のビニールをしんどいと感じた久﨑さんの気持ちなど、個人的な経験と社会的なイシューを紐づける過程で、考案されてきたものだといいます。
なぜ井伊さんは、白を提案したのか。

今回、井伊さんがリクエストしたのは、<エシャペ>の“白”。
「私は、深緑のパジャマやブラウンのブランケットをもともと愛用してきました。子どもも喜ぶ手ざわりや着心地はもちろん、情緒があって、色合いはとても美しい。ただ、私にとって眠りは、1日をリセットする行為であるような気がしていて・・・。色のないものが着たいと、白のパジャマをずっと求めていました。素晴らしい<エシャペ>のアイテムに白があったら最高に違いない。そんな妄想が広がって、久﨑さんにお話ししたんです」。
ブランドでも研究を続けてきた白。
白は、<エシャペ>にとっても大切にしていた色。発足当初から念頭に置き、ホワイトリネンの研究を続けていたそうです。「素材本来の質感と、佇まいの美しさをどのように両立させていけるのか、繊細な色の研究が必要でした。繊維が持っている艶や質感を損なわないように工夫を凝らし、やさしく晒して仕上げることで、素材の本来の色味を生かした、それぞれの白が出来あがったんです。リネンパイルのタオルは、貝殻の内側のような優しいシェルホワイト。スビンコットンのパジャマは、雑味のまったくないピュアホワイト。ベッドリネンは、パジャマの白よりさらに白いスノーホワイト。さまざまな白の階調を楽しんでいただけたら嬉しいです」。

決して一直線ではなかった<エシャペ>誕生までの歴史。
ディレクターの久﨑さんと井伊さんは、過去にファッションブランドのお仕事で出会った間柄。当時から、久﨑さんの素材やデザインに対する探求心は圧倒的で、井伊さんは尊敬と信頼を寄せていたといいます。
「こだわりを諦めないけれど、それでいて柔軟。フットワークが軽い印象があります」という井伊さんに対して「そんなにかっこいいものではないですよ」と久﨑さんは笑みを浮かべます。地方のショップに自ら足を運び、世界中をまわってヒントを求める研究者は、ときに壁にぶつかりながら、キーマンとなる人と出会いジグザグに歩んできました。
<エシャペ>スタートのきっかけは、イタリアのフィレンツェに出張で行ったときのこと。洋服や生地について常日頃考えている久﨑さんは、宿泊先のホテルで出会ったタオルに衝撃を受けます。
「リネンのタオルが水をぐんと吸う気持ちよさに感動しました。肌の上で擦らなくても、さっと吸ってくれる。ふわふわとしたコットンのタオルでは決して得られない感覚でした。洋服のためにリネンのパイル生地を研究していたり、タオルって、いいものがなかなかないなと思っていたので、ふと、その研究をタオルに置き換えたらどうだろうと思いついたんです。信頼する仲間にそのことを話したら、その研究は絶対やり続けなさい、と言われて。本格的に動きはじめることにしました」。

ものを作ることに対する深い愛。
「通常、麻科のリネンは繊維に伸縮性がありません。そのため、生地がへたりにくく丈夫。吸水性や速乾性にも長けた素材です。しかし、高密度に織りあげ、タオル地としてループを作ろうものなら、機械が壊れたり糸が切れたり、生地になったとしても毛羽立ちが酷かったりして、製品化するのは極めて難しいとされていました」。
「また、大きな規模のホテルでは、コットン素材のタオルしか洗濯に受け入れられなかったりして、リネンはタオルの業界で亜流の存在。たくさんのハードルがありましたが、構想期間を含めて約5年の歳月のなかで納得のいくものが出来ました。その過程には、同じ目標を持ち続けてくださった工場や職人さん、アドバイスをくれた仲間の存在が不可欠でしたね。世界に通用するものが作りたいと、何度も何度も試作を重ねてアプローチを変えたり、先の見えない試行錯誤にお付き合いしてくれた方々が居てくれたから、<エシャペ>を世に出すことが出来たのだと思います」。
気持ちをリセットしてくれる白。

パジャマは、ジャストで着たいという井伊さんの希望で生まれたXXSサイズから、Lサイズまで展開。手摘みの綿からつくられた細い糸を高密度に織り上げたオリジナルの生地は、シルクのように柔らかい肌ざわり。肌への接地面が少ない構造で、さらっとしたドライな着心地のため、夏には、着ているほうが涼しいと感じるほど。性別を問わず、からだをおおらかに包む直線的なシルエット。旅行時のパッキングにも使える同素材のケースが付属します。
パジャマ(上下セット) 46,200円 (綿100%) 商品を見る
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使い続けるほどに風合いが増す丈夫なリネンタオルは、一生添い遂げるものに。また、お選びいただいたアイテムのサイズに合わせてギフトボックスのご用意もございます。大切な方への特別な贈り物としてお役立てください。
また、さまざまな大きさの寝具に対応する豊かなサイズ展開でラインナップされるベッドリネンシリーズは、受注での販売を行います。素材となる亜麻は、空洞状の繊維構造が特徴。天然繊維の通気性は、あらゆる気候や地域の方々に、1年を通して快適にお使いいただけます。
無防備な自分に寄り添う、家のもの。
「私の頭の中は、いつも混沌としています。仕事や子どもとの時間、社会。すべてが同時に進んでいるので、あわただしい日もあるし、頭が重くなってしまうときもある。スタイリストの仕事は、毎日動き回っていろいろな洋服や景色を見たり、情報を取り入れる仕事です。こうした生活を気持ちよく続けていくには、“洗い流す時間”も必要だと感じることがある。みなさまはいかがでしょうか。私だけではないような気もします」。
「パジャマは、お風呂からあがった無防備なからだに着るもので、飾る要素が必要ありません。タオルやベッドシーツもそう。だから、出かけるときに着る洋服とは、選ぶ理由は違うと思っています。自分の気持ちがリラックスできるか、気持ちいいと感じるか。そこにとことん集中して選ぶものでありたい。自分や社会について知り、考える日々のなかで、身体が感じる心地よさを呼び覚まして、清々しく穏やかでいられるものが、私の生活のなかにあったらとても嬉しいし、みなさんの生活のなかにあってくれたら、と心から思っています」。
Direction & Styling:Yuriko E
Photography:Masahiro Sambe
Edit and Text:kontakt
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ABOUT &ISSUE
1.プライムガーデンとスタイリスト井伊 百合子さんが<&ISSUE>を始めた理由
2.プライムガーデンとスタイリスト井伊 百合子さんのプロジェクト第二弾

※本館4階 ザ・ステージ#4にてイベント・プロモーションを併設中。