
もっとみんなに知ってもらいたいブランドがある。伊勢丹新宿店本館2階のリ・スタイルTOKYOのバイヤーの﨑谷由衣が大好きなデザイナーさんに会いに行く連載企画。今回は最初は販売員として、現在はバイヤーとして、﨑谷が約7年間も携わっている〈PHEENY/フィーニー〉です。「愛らしくて、だけど芯は強いデザイナーの秋元舞子さんの魅力を知ってほしい」と、インタビュー。2020年秋冬の新作についてもお話しいただきました。

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仕事から離れているときに新作の着想を得ることも

﨑谷:2019年の春夏コレクションには初めての水着やラッシュガードがありました。私にとって秋元さんは海や山などアウトドアを楽しんでいるイメージがあったので秋元さんらしいコレクションだなと思いました。
秋元:海が大好きなのでよく行きますし、旅行中にアイテムの着想を得ることは多いですね。2020年の春夏コレクションには濡れた水着の上からでもタオル代わりに着られるようなオーバーサイズのワンピースがあったんですけど、それなんかはまさにそうです。
﨑谷:あの麻素材のワンピースですね。水着の上に着て濡れてもあの素材なら乾きは早そうです。
秋元:水着は洋服の下に身に着けていても違和感のないデザインであれば旅行中はずっとそれで過ごせますし、ラッシュガードも気の利いたデザインがほしいなって感じていたのでそれなら自分で作ろうって思ったんです。
﨑谷:確かに〈フィーニー〉の水着やラッシュガードは洋服感覚で着られるようなデザインですよね。リ・スタイルTOKYOで洋服と一緒に並んでいても違和感がまったくなくて、馴染んでいました。

秋元:アイデアが詰まったときは近くの古着屋とか、遠出して海とか、なにか思いつくかもって出かけることは多いですね。ただ、基本的に難産は少ないかもしれません。作りたい服もたくさんあって、やりたいことだらけなので(笑)。
ブランドのファンとともに秋元さんのファンも急増中

秋元:2020年の秋冬コレクションは自分でもすごく気に入っていて、トップスからボトムスまで〈フィーニー〉でトータルコーディネートをする日もあるぐらいです。基本的には自分が着たいと思う服を作っているんですけど、できあがった服を試着したら「あれ?似合わないかも」って結構多かったりするんですよ(笑)
﨑谷:私は店頭の販売員として、現在はバイヤーとして〈フィーニー〉の服を見続けていますけど、もちろんコレクションによって毎回変化はありますが、〈フィーニー〉らしさみたいなベースはずっと変わらないような気がします。

秋元:ラベンダーのシアーシャツはこれまでの〈フィーニー〉とはちょっと雰囲気が違うかもしれませんが、昔は平気だった全身古着の着こなしも年齢を重ねると「おや?」って感じになるんですよね。なので、こういうきれい目のシャツを着こなしに取り入れて古着を着くずすのが最近の私の定番になっています。〈フィーニー〉の服をずっと買ってくださっているお客さまは、私と一緒に年齢を重ねていっているイメージなので「全身が古着は…」みたいな感覚は自分と同じように抱いているんじゃないかなって思っています。
﨑谷:ずっと変わらないファンの方も多いですけど、今はSNSの影響で若い世代にもファンはとても増えていますよ。秋元さん自身の熱烈なファンの方も伊勢丹新宿店のリ・スタイルTOKYOにはよくいらっしゃいます。着こなしも秋元さん風、髪型も秋元さん風、もう秋元さんそのままみたいな(笑)。
秋元:とてもありがたいですし、すごく熱い方はいるなーってときどき感じています(笑)。やっぱりブランドにとって世の中に対する影響力は伊勢丹新宿店に置いてもらえるってのは大きいと思います。
コレクションを考えるときは生地の構想に時間を費やす

﨑谷:〈フィーニー〉の2021年の春夏コレクションはまさに自粛期間中に取り組んだと思いますけど、服作りに対していつもと違った部分などはありましたか。
秋元:近所でも出かけたら着ていた服はすぐに洗おうって思うようになったので、次の春夏コレクションは家でも洗えるような服が多いです。いつもと違った部分があるとしたら、着心地だったり、洗っても型くずれしづらかったり、そんな生地へのこだわりは強かったかもしれないです。
﨑谷:〈フィーニー〉はオリジナル生地が多いですよね。シアーシャツは他のブランドさんにもありますけど〈フィーニー〉だとシースルーをこんな生地で表現するんだって思いますし、そういうところは秋元さんの生地への強いこだわりや想いをすごく感じます。
秋元:新しいコレクションを考えるときはいつも生地が最初です。展示会で発表するまでに5カ月ぐらいなんですけど、そのうち2カ月は生地の構想に費やしますね。カットソーに落とし込むつもりで試作した生地が、思った以上にハリ感があるのでボトムスに方向転換してみたり、自分でもイメージしていなかった洋服が生まれたりするのも楽しいです。
﨑谷:〈フィーニー〉の服はハンガーにかかっているのと、実際に着てみるのと、印象が全然違うといつも思っています。パンツの立体感は履くことですごく際立つのでそこが生地のクオリティなんでしょうね。

いつもの普段の日を〈フィーニー〉の服で楽しんでほしい

﨑谷:秋元さんは〈フィーニー〉の展示会で新しいコレクションを私たちに説明してくださるときに、生地や仕立てなど服そのもののこだわりもそうですが、ご自身がどんな想いで作ったのかって気持ちの部分まで伝えてくれるじゃないですか。その想いがファンを惹きつけているはずで、〈フィーニー〉を知らなかった方も着ることで共感できると思っています。
秋元:私は特別な日じゃなくてもいいので、なんでもない普段の日を〈フィーニー〉の服で楽しんでほしいってずっと思いながら服作りをしています。道端で偶然会った友人の普段着が〈フィーニー〉だったときは、すごくうれしいですね。自分の知らないところで、誰かの日常に参加できているのって、服のデザイナーならではの喜びだと思いますね。

自分が家でふわふわのブランケットを愛用しているので、このコートはそんなブランケットをイメージしています。生地が厚そうに見えるかもしれませんが、着心地はとても軽くてあたたかくて自分でも気に入っています(秋元)

トップスはカジュアルが好きなんですけど、秋冬はスラックスをはきたくなるんです。ニットやスウェットにもあわやすくて、上品に見えるスラックスがほしくて作りました。足元はショートブーツやフラットシューズがおすすめです(秋元)
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