記念に残るだけじゃない。家族写真の本当の価値とは|フォトグラファー北川 滉大

スマートフォンで誰でも気軽にきれいな写真が撮れる時代。それでも、家族の記念になる一枚はプロの手で、とお考えの方も多いかもしれません。伊勢丹新宿店のベビー&キッズでは、ファミリーフォト専門のフォトグラファーによる出張撮影プランをご用意。七五三や誕生日などのお祝い事はもちろん、日常のワンシーンを写真に残してみませんか?
「家族写真は、記念に残るだけでなく、家族の存在を見つめ直すきっかけにもなる」と話すフォトグラファーの北川 滉大さん。撮影のエピソードや、家族写真に込める想いをききました。
ロケーションフォトは、家族のストーリーにつながる場所で
―プロによる出張撮影というのは経験のない方も多いと思います。どのようなプロセスで撮影を進めるのでしょうか?
北川さん:まずは、いつ、どこで、なにを撮りたいかを伺います。お宮参りや七五三といったイベントのときは神社などに出向きますし、日常写真であれば、普段遊んでいる公園や、お子さんが産まれる前にご両親でよく出かけていた場所に行くことも。あとで振り返ったとき、「この公園でよく遊んだよね」とか、「お父さんとお母さんがデートしていたところだよ」とか、家族のストーリーにつながる場所で撮れることが、スタジオ写真とは違った魅力だと思います。
北川さん:どんなシチュエーションで撮りたいか具体的なイメージがない場合には、インスタで気に入った写真を見せていただくことも多いですね。こんな雰囲気の写真が撮りたい、と伝えていただくだけでも大丈夫です。

北川さん:僕がイメージするファミリーカラーは“オレンジ”。温かみのあるオレンジの光のなかで撮影した一枚です。娘さんが笑顔で走ってきて、それを受け止めるご両親も自然と笑顔になる。あ、自分ってこんな顔で娘のことを見ているんだなと気づいていただける写真になったと思います。
いっしょに遊ぶ感覚で、楽しみながら自然な表情を
―小さなお子さんを撮影するむずかしさもあると思います。どのようなことを心がけていますか?
北川さん:人懐っこかったり恥ずかしがり屋さんだったりさまざまですもんね。お子さんの反応を見ながら、目線を合わせてコミュニケーションすることを心がけています。きちんとレンズを見てもらうためにはカメラに興味を持ってもらうことも大切なので、ときにはお子さんにシャッターを押してもらったり。写真を撮られているというより、僕といっしょに遊んでいるみたいな感覚で過ごしてもらいたいんです。そうすることで、自然といい写真が撮れるので。

北川さん:着物かわいいね!という会話からいろいろな話をして、二人とコミュニケーションをとっていきました。ドナルドダックのモノマネをすると大笑いしてくれて。お子さんの目線でシャッターを押してもらい、パパとママを撮影した写真も喜んでいただけました。
この先の、支えになるような写真を撮りたい
―北川さんが家族写真にこだわってフォトグラファーをされている理由は?
北川さん:実は僕、もともと会社員で、カメラは副業にできればと思ってはじめたんです。でも、最初に紹介した写真のファミリーに入園式の撮影を頼まれたとき、1シャッター目を押した瞬間、大げさのようですが人生が変わってしまった。これまで家族に対して持っていたさまざまな感情が、その写真を撮ったことで点が線になるようにつながっていったんです。
僕は4歳のとき両親を交通事故で亡くしていて、親の顔を教えてくれたのは仏壇の写真。とにかく記憶がないんです。テレフォンカードになって残っていた家族写真が、唯一家族の風景を想像できる写真でした。
北川さん:この写真、近所の商業施設で撮ったものみたいで、その場で記念写真を渡してくれるイベントをやっていたらしいんです。よく見ると父親笑ってないし、母親は半目。僕もぜんぜん笑ってない(笑)。果たしていい写真なのか?ときかれると疑問符が付くけど、僕にとっては、家族4人で過ごした時間を想像できる、唯一の存在だったんです。写真を撮って、その場でプリントをもらって、きっと僕らが「見せて、見せて!」って言いながら、みんなでその写真を見たんだろうなって。僕からすると、これが究極の家族写真なんですよね。
入園式でシャッターを押したとき、自分が見たかったものはこういう風景だったんだなと思って、涙が出そうになって。家族写真って親御さんがお子さんの姿を残すために撮るものだと思うんですが、僕が本当に大事にしたいのは、この先たとえご両親がいなくなった世界でも、僕の撮った写真がどれだけお子さんの心に寄り添えるか、ということ。それを伝えることは僕にしかできないし、僕がやる意味があると思って、会社を辞めて本業にすることを決めました。

北川さん:旦那さんは憧れていた家族の形を手に入れながらも、失うことへの不安も抱えている方でした。お子さんとの記念撮影ですが、僕の裏テーマとしては旦那さんが主役。なにがなんでも家族を守るという意思が、この一枚に込められていると思います。
―さいごに、ファミリーフォトに興味を持っている方にメッセージがあればお願いします。
北川さん:正直に言うと、お子さんの本当に“いい顔”は、お父さんやお母さんが撮る写真には敵わないんですよね。でも僕が撮影をすることで、撮る前よりももっと日常を特別なものだと感じてもらえると思います。
お子さんをきちんと撮影するのはもちろんですが、ご両親がどういう眼差しでお子さんを見ているかということも残したい。こんなふうに親は自分を見てくれていたんだということが、きっと日々の支えになると思うんです。僕は世間に評価される写真を撮りたいわけではなくて、その家族に評価される写真を渡したい。いまの家族の姿が特別だと感じられて、今後の心の拠りどころになるような写真を撮ることができたら幸せですね。
記念日の記録を残すだけでなく、家族それぞれの歴史に寄り添うサービスにしていきたいという北川さん。伊勢丹の出張写真サービスでは、ご希望の方には打合せも実施いたします。ご家族のエピソードやご要望など北川さんと直接お話しいただき、当日の撮影をお迎えください。

そんな自分の心の拠り所であり、支えとなった「家族写真」を通して家族一人ひとりに寄り添いたいという想いで2021年から家族写真家として活動。
家族写真=自分が憧れていた瞬間
シャッター1枚1枚に、想いを込めているからこその自然な日常写真とあたたかい写真を得意とする。
"心の拠り所となるような、写真と体験を"