能登上布の魅力

「こんなによいものを残さないのは罪だと思う」とは、能登上布唯一の織元<山崎麻織物工房>の3代目織元が語っていた言葉です。代々守ってきた伝統の手織・手絣の技や日本の伝統的な夏着物である上布の文化を次世代につなぎ、美しい能登上布を残していきたいと願う<山崎麻織物工房>から、能登上布の魅力をお伝えします。
【能登上布とは】神代から伝わる最高級の麻織物

上布(じょうふ)とは上等な麻織物のことで、能登上布は日本の五大上布のひとつとされています。約2000年前に崇神天皇の皇女が中能登地方で機織りを教えたことが能登上布の起源だと伝えられています。江戸時代に技術向上を続け発展し、明治時代皇室の献上品に選ばれるまでになりました。昭和初期の最盛期、織元の数は百二十軒以上になり麻織物の県生産量が日本一になり、石川県無形文化財の指定も受けます。しかし戦後着物離れが進み、現在山崎麻織物工房が能登上布唯一の織元になりました。
原料の麻は一般的なリネンではなくラミー(苧麻)を使用。手織りの麻の素材感、能登独自の櫛押捺染やロール捺染と呼ばれる手染技術から生まれる緻密で現代的な絣模様、ひんやり涼しい風合い、「蝉の羽」のような透け感や軽さ、丈夫さ・シャリ感・光沢感・張り感が特徴。能登の風土を映した落ち着いた伝統色柄や絣模様は日常に溶け込み、お出かけ着として愉しめる最高級の夏着物です。
【能登上布唯一の織元】山崎麻織物工房
(株)山崎麻織物工房は1891年(明治24年)紺屋(染め屋)として創業。創業約130年、能登上布伝統の技を継承する唯一の織元です。
昭和最盛期、百二十軒以上あった能登上布の織元は、今では(株)山崎麻織物工房一軒となりました。戦後着物需要減少の中、「滅びゆく能登上布」と言われるほど大変厳しい時期もありましたが、三代目織元の「こんなによいものを残さないのは罪だと思う」という言葉を胸に、代々守ってきた職人による手絣等の伝統技術や日本の伝統的な夏着物の上布文化、美意識を次世代に繋ぐため、自社ブランド<能登上布 YAMAZAKI NOTOJOFU>を立ち上げました。伝統と共に、現代の日常に溶け込むアイテムとして、能登上布の魅力を再定義し多岐にわたり展開しています。そして、なおも不透明で厳しく変わりつつある着物を取り巻く状況に加え、夏限定の着物・「能登上布」かつ最後の織元という存続が厳しい環境においても、織元から商品を直接発信することで、伝統の思いを繋いだ本物の能登上布をお客さまに届け、能登上布から着物の新たな未来をつくることを目指しています。

【製作工程】受け継がれてきた伝統の手仕事
現在工房には、能登上布に魅せられ上布を作りたいと情熱を持った職人、織子たちが17名います。熟練の職人たちの熱意と、職人一人ひとりの丁寧で緻密な手仕事に支えられ、上質で繊細な能登上布が完成します。
織元・山崎がつくる能登上布のこだわり
【手織り】
工房では昔から受け継いだ手法で手織りをし、丁寧な職人技から生まれる上質な織りの味わいを感じることができます。機械織りにはない手織りの織り密度の粗さから生まれる透け感は「蝉の羽」とたとえられていて、手織りで織られることで布として軽く、手仕事がうみだす風合いや美しさを愉しめます。

【緻密で凛とした絣柄】
能登独自手染めの櫛押捺染、ロール捺染と呼ばれる職人技術から生まれる染めにじみが少なく緻密で、能登の風土を映したすっきりとした絣模様が能登上布の最大の特徴。凛とした佇まいで、時代を超えて日常に溶け込む装いを愉しめます。現代的な絣柄は幾何学模様の十字絣、たてよこ約3mmの十字の「蚊絣」などの複雑な経緯絣(たてよこがすり)が主で、職人の手仕事でつくられる絣一つひとつの表情も魅力です。

【上布ならではの特別な麻の質感】
能登上布の原料である麻は、一般的なリネン(亜麻)ではなく、日本古来から使われてきたラミー(苧麻)を100%使用。平織の上布ならではの、透け感・光沢感・張り感・軽やかさがある上質で美しい麻の素材感が魅力です。
またラミーの特徴として、涼しくシャリ感、吸湿性があり、独特の着心地のよさから一年を通してお使いいただけます。能登上布は最高級の素材ですが、何十年も使えるほど丈夫で自宅でも洗え、美しい素材とともに気取らないラグジュアリーを愉しめます。
洗えば洗うほど柔らかくなり感触が良くなるので、経年変化を慈しみながら、長くお使いいただけます。

【能登上布の着物と帯】ひんやり涼しい最高級の夏着物と帯
夏の贅沢な日常着とされる能登上布の着物は、蝉の羽のような透け感や光沢感、手織りの素材感、独自の緻密で凛とした絣柄、能登の風土を映した落ち着いた伝統色柄が特徴。ひんやり涼しく爽やかで軽い着心地で、6~8月の期間着用でき、大人のお出かけ着として、また一部の柄は茶事の稽古着として、男性も女性の方も着こなしを愉しめる最高級の夏着物です。
日常の男着物がルーツゆえの、時代を超えて飽きのこない落ち着いた能登上布の柄行きは、伝統的ながら現代的。濃色でも上布ならではの透け感や軽やかさがあるので、夏でもキリッと粋な着こなしができます。また、何十年も愛用していただけるほど丈夫で、自宅で手洗いできるため、気軽に着られます。洗っていくうちに柔らかくなり、平織の上布ならではの身体に沿う美しい着姿を愉しめるのも魅力です。
能登上布の帯は、大人のお出かけ着として愉しめる最高級の夏帯です。ひんやり爽やかな着け心地で、熱がこもりやすい帯周りを快適に保ち、5~9月の期間着用できます。
透け感や光沢感、麻の手織りのプリミティブな素材感、能登独自手染め技術から作られるすっきりとして凛とした絣模様、能登の風土を映した落ち着いた色柄が特徴。お手持ちの薄物・単衣・袷のお出かけ着のお着物ともコーディネートしやすい色柄で、着こなしの幅が広がります。

【小物と装い】能登伝統の麻織物と凛とした日常に出会う
能登上布の小物はよいものを長く使い、ゆるやかな時間の中で日々を丁寧に送り心が豊かになるくらしとの出会いがあります。また、能登上布独特の手織りの麻の素材感や着心地のよさ、透け感・軽やかさ・張り感・光沢感、能登の風土を映した現代的で落ち着いた伝統色柄を、夏の贅沢な日常着とされる能登上布の上質さはそのままに、小物雑貨やファッションで日常でも愉しめます。

凛とした美しさを纏う、日常を彩る~能登上布特集~
□2025年2月26日(水)~3月4日(火)
□日本橋三越本店 本館4階 呉服 男のきもの
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