絞彩苑種田
~京鹿の子絞の美しさを伝える~

絞彩苑種田~京鹿の子絞りの美しさを伝える~

伝統工芸「京鹿の子絞」の老舗<絞彩苑種田/こうさいえんたねだ>。創業時は京鹿の子絞を使った女性用の髪飾りを、明治以降は主に帯揚げを製造し、現在に至ります。186年にわたり、京鹿の子絞の技術や伝統を継承するための挑戦を続けてきた<絞彩苑種田>の商品をご紹介いたします。

絞り染めとは

絞り染めとは の画像

絞り染めは、日本では千数百年も前から行われており、衣装の紋様表現として用いられてきました。平安初期の歌人、在原業平の詠んだ百人一首収載の「ちはやぶる神代も聞かず竜田川唐紅にみずくくるとは」は水面に浮かぶ真っ赤に紅葉した落葉の美しさを、あの素晴らしい絞り染めのようだと詠ったものです。絞り染めの技法は多岐にわたりますが、<絞彩苑種田>の帯揚げは主に「疋田絞り(ひったしぼり)」、いわゆる鹿の子絞りと大中小と大きさによって呼び名の変わる帽子絞りの技術を用いて染めています。

鹿の子絞り

生地を糸で括って防染し、染め上げる技法で、染め上がりが子鹿の背中の斑点に似ていることから「鹿の子絞り(かのこしぼり)」と呼ばれています。鹿の子の粒は生地をつまんで四つに折り、絹糸で3回から7回巻いて作られます。1尺(約38cm)の生地幅に、43粒・45粒・48粒、細かいものになると60もの粒が括られます。このように、意図する図案や生地によって鹿の子絞りの粒立ちの細かさを変えて製造しています。

鹿の子絞りの画像

人目(一目)絞り

絞った後の形状が人の目の形状に似ていることからその名前が付きました。生地を四つに折りたたみ2回だけ糸で巻き締めた粒を、3.8cmの長さに10~15粒程度くくります。この小さい絞り目を連ね、線描で細かな図柄を表現します。

人目(一目)絞り の画像

帽子絞り

絞りの内部に染料が染み込まないように芯を入れ、防染用ビニールシートなどで覆って帽子のような形に絞り、染色する技法です。絞った外側に新しい色が入り、内側は元の生地の色が残ります。

帽子絞り の画像

輪出し(逆帽絞り)

染色したい柄の部分だけを防染用ビニールシートの外に出して染め柄を作る非常に高度な絞り技法です。包み隠す生地が大きくなり、染料の移染を防ぐのが難しい絞りです。通常の帽子絞りとはまったく反対の部分を染めるので、「逆帽(さかぼう)絞り」と呼んでいます。

輪出し(逆帽絞り) の画像

縫い〆絞り

等間隔に縫い上げたくくり糸を締めあげることで模様を完成させます。縫い上げる幅や生地の厚みによってさまざまな表現の模様になります。同じ時期に同じように製造したものでも、絞りあがる模様は異なりますので、まったく同じ文様にはなりません。

縫い〆絞り の画像

帯揚げ

<絞彩苑種田>の帯揚げは、京都府丹後地方でオリジナルの生地を製織したのち、精錬漂白の過程から京都市内で行い、絵付け・絞り染分・染色・金彩・刺繍の工程を、それぞれの伝統工芸士の卓越した技術を重層的に結実させることにより創出しています。伝統の京鹿の子絞を継承するとともに、世界中に京鹿の子絞のすばらしさを発信し、より多くの方に「絞彩苑種田らしい」と言われる商品を提供するため、努力を重ねています。

髪飾り・雑貨

<絞彩苑種田>は京鹿の子絞で作られた女性用の手絡(てがら・髪飾り)から始まりました。現在もオリジナルの生地を使用したつまみ細工のかんざしなどの髪飾りや雑貨を作り続けています。正絹の生地が持つ美しさや華やかさ、かわいらしさをそなえた髪飾りは、晴れ着を一層華やかに彩ります。

絞彩苑種田
絞彩苑種田 正面玄関の画像

絞彩苑種田 工房店内の画像
江戸未期(天保8年・1837年)に「かのこ仕入所」の看板をかかげて創業。以来、手作りの心を大切に、常に新しいものへと目を向け、最新の技術や手法を取り入れたものづくりを続けています。なかでも、帯揚げといえば朱色の総絞りしかなかった時代に、部分絞りや金彩、刺繍を施した繊細な色合いの帯揚げを発表し、それが現在のスタンダードとなっていることは、それまでの常識にとらわれない挑戦と、時代のニーズに応える努力を続けた結果といえます。さらには京鹿の子絞の可能性を広げるため、オートクチュールのドレス素材にも挑戦、パリコレへの出展も実現させました。創業からの「手仕事の信念」を堅くして、京鹿の子絞の技術の向上と継承を目指しています。