「デニム de ミライ」プロジェクトから、洋服デザイナーへ
~株式会社ヤマサワプレス 松浪希峰さんインタビュー~

「デニム de ミライ」プロジェクトから、洋服デザイナーへ〜株式会社ヤマサワプレス 松浪希峰さんインタビュー〜

ファッションを通じて新しい未来を示唆するプロジェクト「ピース de ミライ」。2022年3月に伊勢丹新宿店をはじめとする百貨店や小売店との協業により、東京・竹ノ塚にある株式会社ヤマサワプレスが所有する<リーバイス® 501®>のユーズドストックデニムをファッションデザイナーたちとともにアップサイクルする企画「デニム de ミライ」からはじまりました。
今回は2022年3月に阪急うめだ本店で開催された「デニム de ミライ」プロジェクトに学生として参加し、現在は株式会社ヤマサワプレスで洋服デザインを手がけている松浪希峰さんにインタビュー。
「デニム de ミライ」プロジェクトをきっかけに自身の夢を叶え、これからも“循環する洋服づくりをしていきたい”という松浪さんに、プロジェクトに参加した時のこと、日々の洋服づくりのこと、そして“ミライ”のことを伺いました。

現在、洋服デザイナーとして活躍する松浪さん。
“ファッション”に目覚めたきっかけは?

松浪さん:何か大きなきっかけがあったというよりは、小さい時から洋服が好きで、母と買物に行き一緒に洋服を選んでいた記憶があります。もともと母がアパレルショップの店長をしていたこともあり、私も物心ついた時からファッションを身近に感じていました。

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服飾の専門学校に通っていたとのこと、
どんなことを学んでいたのでしょうか?

松浪さん:大阪文化服装学院のスーパーデザイナー学科に在籍していたのですが、この学科は主に“デザイン発想”について学びながら、パターンや縫製など幅広く学ぶことができるんです。「デザイナー学科」と「スタイリスト学科」で迷ったのですが、ファッションが好きなことはもちろん、絵を描くことやものづくりをすることが好きだったので洋服づくりができる学科を選びました。

そんな学生時代に「デニム de ミライ」プロジェクトに参加されていますが、
参加された経緯は?

松浪さん:“サステナブル”についての講義で、ファッションは自然環境保全と対極にあるというような話があり、自分もこれから洋服づくりをする上で、ムダなものではなく何かのためになるものをつくりたいと思っていたんです。「デニム de ミライ」という企画を知り、これまでリサイクル生地を使ったり、服をリメイクしたことがなかったので、ぜひ参加したいと思い手を挙げました。

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「デニム de ミライ」プロジェクトにどんな作品を出品したのでしょうか?
大変だったことなども教えてください。

松浪さん:プロジェクトに参加した頃に卒業制作をしていて、朝陽や夕陽のグラデーションをテーマにしていたので、デニムでもそれを表現したビスチェを制作しました。こちら(写真右)は、デニムを空の青に見立て、朝陽や夕陽をイメージしてオレンジに染めています。こちらのビスチェ(写真左)は、昔父から譲り受けたデニムパンツを自分でブリーチしてはいていたことを思い出して、ブリーチでグラデーションをつけました。帽子は残っていた端切れを細く切って縫い合わせてつくっています。

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松浪さん:大変だったのは、反物と違ってデニムパンツを使うので生地が限られていること。パンツの糸をほどいて開き、どの部分を切り取ったら理想のビスチェができるか、“アタリ”と言われるキズや擦れをどこに入れたらかっこよく仕上がるかを模索していました。オレンジ色に染める時は、デニムの青色に重ねてもきれいに発色するように何色も混ぜて色をつくりました。

「デニム de ミライ」をきっかけに株式会社ヤマサワプレスを知り、入社されたとのこと。
その決め手は?

松浪さん:ものづくりするならムダなものではなく、何かのためになるものをつくりたいという思いが強くありました。就職活動中にいろいろな会社を調べたのですが、ヤマサワプレスには大量のデニムパンツという資材があり、ものづくりをできる環境が揃っていて、自由にクリエーションができると思い入社を決めました。社内は女性が多く、年齢は幅広く、尊敬できる方々ばかり…縫製スタッフの隣でデザインを考えたり、その場ですぐに指示できたり、ものづくりしやすく、働きやすい環境で色々とワガママも言わせてもらっています(笑)

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松浪さん:肩書は洋服デザイナーですが、洋服の企画やパターン制作、ミシンで縫製をすることもありますし幅広くやっています。専門学校で学んでいたことが生かされていますよ。

普段のお仕事について教えてください。

松浪さん:<One-o-Five>という<リーバイス® 501®>のユーズドデニムを蘇らせたアイテムを展開する自社ブランドのデザインや、他のブランドの洋服の企画を主に担当しています。

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松浪さん:いま私が着ている<One-o-Five>のジャケットは、デニムパンツを4本使うのですが、ユーズドデニムは色の褪せ方も“アタリ”もさまざまなので、どのパンツを選ぶかでまったく違うジャケットが出来上がります。ストックの中からのピッキングが重要で、それがデザインになり、味わいになるんです。

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松浪さん:ユーズドデニムはひとつひとつ個性があるんです。後ろのポケットにずっとタバコの箱を入れていたのかな?こんなに破けてライオンにでも噛まれたのかな?(笑)と、以前どんな人がはいていたのか想像するのも楽しいんですよ。

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洗浄されたユーズドデニムのストックからのピッキング作業。これまで何千本というパンツを触ってきたという松浪さんは、手に取った瞬間にどういうデザインにするかアイディアが湧くそう。

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松浪さん:リメイクは、素材ひとつひとつが違って組み合わせ方次第でデザインが変わるので、指示書だけで仕上げるのは難しいのですが、縫製スタッフと距離が近く、その場ですぐに話せるので理想に近いものができるんです。手間と時間はかかりますが、その分ぬくもりのあるものが仕上がります。

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洋服として蘇らせるために、デニムパンツの糸を丁寧にほどく作業は「何も考えず、無心になってできるので案外好きです」と松浪さん。開いた時のアタリの出方もさまざまで、洋服のどの部分に配置するかを考えるとワクワクするそう。

最後に、松浪さんの今後の目標は?

松浪さん:洋服も人も「循環するものづくり」を目指したいです。自分が生み出すものに責任を持って、使う資材も循環性のあるものを採用していきたいですし、職人さんの数も少なくなってきているので技術を次世代につないでいかなければとも思っています。あとは、“ファッションは楽しい!”と、作り手もお客さまも思えるものづくりをしたいです!

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「仕事をする上で楽しく働ける環境も大切」と話す松浪さんは、山澤社長とも積極的にコミュニケーションをとっているそう。山澤社長に松浪さんのことを伺うと…「これまでたくさんの学生や新卒社員たちと仕事をしていますが、松浪は入社した時からプロ意識が強かったです。学生や新卒となると社会の中でまだできないことも多いですが、彼女はまず自分が“できること”に目を向けて常に可能性を見せ続けてくれます!」と、大きな信頼を寄せていました。

松浪希峰

松浪希峰 / MATSUNAMI KIHOU

大阪府出身。大阪文化服装学院卒業。2022年「デニム de ミライ」プロジェクトに参加し、株式会社ヤマサワプレスに入社。現在は自社ブランド<One-o-Five>の洋服デザインや国内ファッションブランドの企画などを手がける。

企業の枠を超えてファッションの新しい価値を提案する「ピース de ミライ」。環境への取り組みはもちろん、次世代のファッションを担う学生との取り組みも大切にし、プロジェクトの一環としてこの春もユーズドストックデニムを用いた学生たちの作品を展示する「三越伊勢丹ミライアワード」を開催いたします。
文化や伝統を継承しながら新しいミライを創造する、次世代の可能性にあふれた世界をぜひご覧ください。


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